エラスムス・ムンドゥスの持続性と通用性に関する調査報告書が完成

原典:欧州委員会(英語)
報告書:Clustering Erasmus Mundus Joint Programmes and Attractiveness Projects: Lot 1 – Sustainability Lot 3 – Recognitions of Degrees and Joint Degrees – Survey Report(英語)

欧州委員会が行っている、「エラスムス・ムンドゥス(EM)修士プログラムの特徴抽出プロジェクト」における5つのテーマのうち、プログラムの持続性と学位の通用性に関する調査の報告書が発表された。EM修士プログラムは、エラスムス・ムンドゥス計画(NIAD-UE国際連携ウェブサイト)を通して行っている欧州共同修士プログラムである。

この調査および報告は、2009年にテーマ毎に調査・発表サービスの入札が募集され、以下の落札結果を受けて動き出したプロジェクトの一環である。

落札結果
テーマ 落札者 落札額 主な契約内容
①持続性・③学位通用性 Ecorys UK Ltd. €296,710 調査の実施・報告
ワークショップの開催
行動指針の策定
テーマ別ウェブページの制作
②雇用適性 MKW Wirtschaftsforschung GmbH and Céreq €170,448
④アジアにおける地域特性 DAAD and Menon Network €170,700
⑤気候変動分野における特性 ICUnet.AG €155,440

調査概要

○オンラインアンケート(2011年10~12月実施):8,546の機関・関係者へ送付し、1,169の回答(回答率13.7%)
○関係者へのインタビュー(2011年12月実施):インタビューを行った関係者のリストは報告書に掲載

報告書抜粋

テーマ①:プログラムの持続性について
本来、EMプログラムの持続性とは、EM事業が欧州全体の繁栄のために付加価値を提供し続けられるか、ということである。しかし、今回のプログラム関係者への調査では、資金源を確保し続けられるか、に最も関心が集まっていることが浮き彫りとなった。その財政面に関しては、EMが採択しているプログラムが多分野にわたっており、現在のEM補助金の代替資金源として、全プログラムを対象に1つのリソースを確保することは困難である、と報告書は指摘している。しかし、大学間連携の持続・発展面での障害は少なく、プログラム毎にターゲットとなる市場を限定することにより、個々の持続性は維持できる、と報告書はまとめている。

欧州委員会の意図:欧州全体の繁栄のための付加価値が維持できるか
プログラム関係者の関心:プログラム資金源確保が保持できるか

資金源確保の見込
対象範囲 資金持続性 理由
プログラム全体 見込は薄い プログラムが広範すぎるため、一括した資金源確保は困難ではないか
各プログラム 見込まれる 各プログラムのターゲット市場からの資金提供が期待できる
テーマ③:EM学位の通用性について
EMは欧州域外の教育機関との交流であるため、世界レベルではENIC-NARIC(※)のようなネットワークがない地域もあり、学位に対する見解の統一が難しいことが通用性の弊害の1つとなっていることが明らかになった。さらに、社会全体や雇用主への情報伝達の不徹底も浮き彫りになった。そのため、当事者である学生やプログラムレベルで、個別ケース毎に社会や雇用主に対する働きかけをしつつ、コンソーシアムレベルでは優良事例・推奨事項をまとめて公表する努力がEM学位の通用性を高めると提言している。
<ポイント>様々なレベルで、社会や雇用主への努力と働きかけが必要

調査全体を通し、EM計画はその革新さ故に、与えられる学位の国際通用性、プログラムの持続性に困難が付きまとうのはやむを得ないことである、と報告書は指摘している。しかしながら、EMプログラムはその卓越性と質の高さ(excellence and quality)が最大の特長であり、この点で世界中の同様の国際的な共同教育プログラムと充分に渡り合えるだけの競争力を有している、と結論づけられている。

※ENIC-NARIC(European Network of Information Centres – National Academic Recognition Information Centres):海外資格に関する情報提供および評価事業等を行っている、欧州地域各国のナショナル情報センター
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