欧州議会が報告書「高等教育の国際化」を発行

報告書: INTERNATIONALISATION OF HIGHER EDUCATION(英語)

欧州議会より、報告書「高等教育の国際化」(INTERNATIONALISATION OF HIGHER EDUCATION)(全318ページ)が、2015年5月15日に発行された。この報告書は、欧州議会の委託により、イタリアのミランにあるサクロ・クオーレ・カトリック大学のHans de Wit 氏及びFiona Hunter氏らにより作成されたものである。この研究の主要目的は、高等教育における国際化に係る国・機関レベルの戦略を精査することであり、特に欧州地域に焦点が当てられている。なお、作成に際し欧州国際教育協会(EAIE)及びユネスコの諮問機関の一つである国際大学協会(IAU)の統計資料が参考にされている。

本報告書は、「欧州における高等教育の国際化に係る理解」、「欧州における高等教育の国際化に係る実証データーに基づく国際化指標」、「欧州高等教育に係るデジタル・ ラーニング、モビリティ及び国際化の役割」、「欧州域内外の国際化の動向」及び「欧州における国際化に係る提言」という章立てで構成されている。「欧州域内外の国際化の動向」に関しては先進国・途上国を含む欧州の10の国々(フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、スペイン、イギリス)及び7つの欧州圏外の国々(オーストラリア、カナダ、コロンビア、日本、マレーシア、南アフリカ、アメリカ)の事例が取り上げられている。

本報告書によれば、未だ多くの機関において、国際化というと学生及び教職員のモビリティに焦点をあてており、各国レベルとも優秀な研究者・学生を獲得することにより名声や経済的利益を得ることに注目する傾向があるとしている。そして、仮に経済的利益主導による国際化が進展すると、高等教育が「国際教育産業」とでもいうべきものになり、学術的な価値や基準に明らかな懸念が生じるという。

国際化はそれ自体が目的でなく質の向上の手段であり、単に経済的合理性のみに焦点をあてるべきでなく、よりカリキュラムや学習成果に焦点をおくことにより、国際化による利益が少数のエリートだけではなく、皆に等しく享受されるべきであるとしている。

さらに、ボローニャプロセスの成果により、質や基準などの統一性が図られてきているものの、各国間においては様々な本質的な差異があり、国際化の障壁となっているとし、このような障壁をいかに乗り越えていくかということが今後重要になると述べられている。

以上を踏まえ、報告書では主に以下の国際化の発展のための提言を行っている。

  1. 高等教育システム、そのプロセス及び財源の負担者の差異に起因する単位や学位の流動性及び機関連携に係る課題の是正
  2. インセンティブ付与等による、さらなる高等教育の国際化に向けた教員及び職員の役割の強化
  3. 産学連携に係る学生及びスタッフの流動性の促進
  4. ジョイント・ディグリーの発展を妨げる障壁の除去
  5. 将来を見据えた初等教育・中等教育におけるマルチリンガル学習の導入
  6. 研究及び教育の国際化に係るあらゆる障壁の除去
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