第一志望にするなら即合格 – 英大学入試で「条件付き無条件合格」が問題に

 イギリスの大学入試では、一部大学からの合否の通知方法が受験生の進路選択の幅を狭めていると問題になっている。大学入学資格Aレベル(Advanced level qualification)試験で最終的な合否が決まる前の学生に対し、当大学を第一志望にすれば試験結果に関係なく無条件で合格にすると手紙等で通知するもので 「条件付き無条件合格」(’Conditional unconditional’ offer)と呼ばれている。これを踏まえ、英国教育大臣(Education Secretary)は2019年4月5日に条件付き無条件合格を行わないよう大学に呼び掛けた。

イギリスの大学入試制度

 イギリスの一般的な大学受験生は、 大学・カレッジ入学サービス(UCAS:Universites and Colleges Admissions Service) の共通オンライン出願システムを使って、例年1月15日までに大学へ申請(最大5校)を行い、5月初頭までに合否結果が通知される。

 しかし一般的な入学要件の一つであるAレベル試験は例年5~6月に実施され、結果は8月中旬まで発表されない。このため、特に18歳受験生については5月時点には「条件付き合格」の扱いとなり、Aレベル試験の結果を待って最終的な合否が決定することが多い。学生は合格通知を受け取った中から、6月初頭までに最大で2校を志望順位をつけて選択し、試験結果を待つことになる。

無条件合格

 一方、すでに十分な入学資格を有している受験生の受入れ、芸術系など実技を重視する学部の入試、 高等教育へのアクセス拡大の観点で合理的な配慮が必要な学生の受入れ等では「無条件合格」が用いられる。無条件合格となった学生は、試験の結果に関係なく、面接やその他の試験結果によって無条件に合格を認められる。

 学生が6月初頭に志望校を選ぶ際、第一志望に無条件合格となった大学を選択した場合には、進学先が当該大学に確定する。一方、第一志望に条件付き合格となった大学を選択した場合には、第二志望を条件付き合格及び無条件合格となった大学の中から選ぶことができる。

条件付き無条件合格の問題点と政府の対策

 条件付き無条件合格を行う大学は、学生が義務教育修了時(16歳)に受験する中等教育修了一般資格(General Certificate of Secondary Education:GCSE)試験の成績やAレベル試験の見込みの成績等をもとに優秀な学生の囲い込みを行う。「第一志望ならば無条件合格」という条件を課すことは、Aレベル試験前で不安になりやすい学生の進路選択に不当な圧力をかけてしまう。また大学は学生数を充足させることを優先させるあまり、学生の成績の価値をないがしろにしてしまっている。条件付き無条件合格は、当該大学にとどまらず、英国の高等教育全体の評判を下げてしまう問題である。

 こうした背景から英国教育大臣は、UCASの調査によって条件付き無条件合格を行っていることが明らかになった23の大学に対し、条件付き無条件合格を行わないよう求める書簡を送った。また大臣は、学生局(OfS:Office for Students)(本サイト2018/9/11投稿記事)に対し、今後大学の入試制度の改善状況について包括的に確認するよう依頼する予定である。

急増する無条件合格への懸念:成績・就職への影響

 最近では無条件合格そのものの在り方にも疑問の声が出ている。 近年、イギリスではイングランド地方で大学定員が廃止されたことや、18歳人口が減少していることを背景に、条件付き無条件合格を含め、無条件合格の総数が急増している。イングランド、北アイルランド、ウェールズ地方の18歳学生で無条件合格通知を受け取った割合は、2013年は1.1%であったが、2018年には34.4%まで増加している。

  無条件合格となった学生は、その後Aレベル試験に向けた学習の意欲が下がりやすい。Aレベル試験の結果は、就職の際に雇用主が参照することもあるため、UCASは無条件合格の学生であっても、きちんと試験対策をすることは重要だと主張している。なおUCASの調査によると、条件付きか否かに関わらず無条件合格をした学生は、条件付き合格をした学生よりもAレベル試験(A*、A、B、C、D、Eの6段階評価)で想定より2段階低い成績をとる可能性が7%高いことが明らかになっている。

 イギリスの大学担当大臣(Universities Minister)は、大学側に無条件合格の出し方について責任を持つよう求めている。

原典①:英国教育省(英語)
原典②:UCAS(英語)
参考①:UCAS(英語)
参考②:UCAS(英語)
参考③:UCAS(英語)

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