欧州:エラスムス+のインパクト調査報告書が公開

エラスムス+のもたらす影響力の強さが改めて証明された。
欧州委員会(EC)はこの度エラスムス+の学生等に与える影響を調査した報告書を2種類公開した。一つ目は主に学生へのインパクトに焦点を置いた「Erasmus+ Higher Education Impact Study」で、もう一つはエラスムス+に参加した大学における制度や意識への影響に焦点を置いた「Study on the impact of Erasmus+ Higher Education Strategic partnerships and Knowledge Alliances」である。いずれの報告書においても、あらゆる局面においてエラスムス+が学生のみならず高等教育界全体に革新をもたらしていることが示された。この記事では各調査の主な概要について紹介したい。

Erasmus+ Higher Education Impact Study
主な調査対象:エラスムス+の留学プログラムに参加したことのある現役学生、卒業生、教職員
※比較のため、留学経験のない学生・卒業生や、エラスムス+以外の留学プログラムに参加した(している)学生にも調査を行った。
主な調査方法:アンケート調査
※アンケート以外にも文献調査やインタビューなどが実施された。
回答数:約77,000件

主な調査結果:
➀将来したいことの発見
→回答した70%以上のエラスムス+経験者が、将来のキャリアについての展望が明確になり、その目標に沿って自分の学習を方向付けることが出来たと報告。
➁ソーシャルスキルの向上
→回答した90%のエラスムス+経験者が、適応能力、異なる文化的背景を持つ人々と協働する能力、問題解決能力が留学前に比べ向上したと報告。
➂エンプロイアビリティの向上
→回答した80%のエラスムス+経験者が、卒業後3か月以内に職を見つけた。これは留学経験のない卒業生よりも高い割合。
➃教員の教授法の改革
→回答した43%の教員が交流機関へ渡航中に新たな教授法(例:アクティブラーニング)を用いた授業を行った。
※エラスムス+では学生のみならず教職員向けの交流プログラムも存在する。

Study on the impact of Erasmus+ Higher Education Strategic partnerships and Knowledge Alliances
主な調査対象:エラスムス+の各プログラム(Higher Education Strategic Partnerships、Knowledge Alliances)採択機関、各国でのエラスムス+取りまとめ機関(例:所管省庁)
※エラスムス+の教育機関向け補助事業の一種。国際交流を促進することで革新的な教授法の共有や欧州高等教育システムの強化を目的とする。
主な調査方法:アンケート調査
※アンケート以外にも文献調査やインタビューなどが実施された。
回答数:約600件

主な調査結果:
➀参加機関のデジタル化・新たな教授法の促進
→回答した85%以上のプログラムで、エラスムス+への参画がブレンデッド教育や新たな教授法を機関内のカリキュラムに導入する契機になったと報告。
※ブレンデッド教育とは、対面形式での学習とオンライン教育を有機的に組み合わせた教育法である。
➁社会的包括性・民主化の促進
→回答した60%の採択プログラムで、機関内での社会的包括性の向上や差別撤廃の促進が確認された。また56%の機関が、採択プログラムが自国内の民主主義的発想の涵養に貢献したと認識した。
➂アントレプレナーシップ教育の促進
→エラスムス+への参画により、アントレプレナーシップ(起業家精神)教育が促進され、交流プログラムが起業家を輩出することに貢献していることが確認された。


なお、エラスムス+としてのインパクト調査は今回が初めての実施となるが、同様の調査は前身の枠組みであるエラスムスプログラム(本サイト2016/3/15投稿記事)エラスムスムンドゥスプログラム(本サイト2017/2/15投稿記事)でも実施されている。

原典➀:EC(英語)
原典➁:EC(英語)
原典➂:EC(英語)

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