2021年2月、オーストラリアの議会で高等教育関連法の改正法案が可決され、高等教育機関の分類とその要件を規定する基準(Provider Category Standards、以下カテゴリー基準)の改定が認められた。この改定により、オーストラリアの高等教育機関の分類は6種類から4種類に変更となる。改定後の基準は2021年7月1日から適用される予定である。
カテゴリー基準とは
オーストラリアの高等教育機関が満たすべき最低要件である、「高等教育基準枠組み(Higher Education Standards Framework (Threshold Standards))」のPart Bにおいて定められる、高等教育機関の分類及び要件のこと。「高等教育基準枠組み」は、高等教育機関の登録要件として使用されている。
▽改定前:Higher Education Standards Framework (Threshold Standards) 2015
▽改定後:Higher Education Standards Framework (Threshold Standards) 2021
(2021年4月27日付公開)
改定までの経緯
カテゴリー基準については約20年間根本的な変更が行われてこなかった。進化を続けるオーストラリアの高等教育においてカテゴリー基準が目的にかなっていることを保証するため、オーストラリア政府は2019年にカテゴリー基準のレビューを実施した。レビューの結果、高等教育機関の分類方法の簡素化等が提言され、政府はこれらの提言をすべて採用することを決定した。
2021年2月の議会で高等教育関連法の改正法案(Higher Education Legislation Amendment (Provider Category Standards and Other Measures) Bill 2020)が可決され、同基準の改定に至った。高等教育機関の登録審査を行うオーストラリア高等教育質・基準機構(TEQSA)は、新カテゴリーへの移行手続きを進めており、7月1日に完了する予定である。
(参考)改定前のカテゴリー
- Australian University:オーストラリアの大学
- Australian University College:本カテゴリーでの登録後5年以内に「Australian University」のカテゴリーへ登録されることを目指す高等教育機関
- Australian University of Specialisation:1~2の研究分野のみを提供するオーストラリアの大学
- Overseas University:海外の高等教育資格を提供する大学
- Overseas University of Specialisation:1~2の研究分野のみの海外の高等教育資格を提供する大学
- Higher Education Provider:大学以外の高等教育機関
表1:オーストラリアの高等教育機関数 [National Register(2021年5月31日)]
カテゴリー | 自己認証権あり(注) | 自己認証権なし | 計 |
Australian University | 40 | 0 | 40 |
Australian University College | 1 | 0 | 1 |
Australian University of Specialisation | 1 | 0 | 1 |
Oversea University | 1 | 0 | 1 |
Overseas University of Specialisation | 0 | 0 | 0 |
Higher Education Provider | 12 | 131 | 143 |
計 | 55 | 131 | 186 |
(注)自己認証権(SAA:Self-accrediting Authority)
自らが提供する高等教育コースを自らの権限において設置しうる権限および学位等の教育資格を授与する権限のこと。自己認証権はTEQSAによる審査の上、各高等教育機関に付与される。
改定後のカテゴリー
- Australian University:オーストラリアの大学(1~2の研究分野のみを提供する大学も含む)
- Overseas University in Australia:少なくとも1つ以上海外の高等教育資格を提供する大学(1~2の研究分野のみを提供する大学も含む)
- University College :大学以外の高等教育機関のうち、提供するコースの70%以上で自己認証権を保有する等、一定の要件を満たすもの
- Institute of Higher Education :その他の高等教育機関
主な改定内容
改定前の基準では、大学関連機関の分類が5つに細分化されている一方、大学以外の機関を1つのカテゴリー(Higher Education Provider)に集約していることに問題意識があった。改定後の基準では、大学以外の機関が登録できるカテゴリーを2つに増やし、大学のカテゴリーについては国内、海外で区別する形にまとめられた。
- 「Higher Education Provider」は「Institute of Higher Education」となる。
オーストラリアでは「Higher Education Provider」は大学を含めた高等教育機関の総称としても使用される用語なので、混乱を招かぬよう「Institute of Higher Education」に変更された。
- 「University College」の要件が変更となり、新たなカテゴリーとなる。
改定前は大学のカテゴリーに加わることを目指す機関を対象にしていたが、改定後は大学のカテゴリーを目指していなくとも、提供するコースの70%以上で自己認証権を保有していること等、一定の要件を満たせば幅広く大学以外の教育機関が対象となる。
- 「Australian University」と「Australian University of Specialisation」が「Australian University」に集約される。
- 「Overseas University」と「Overseas University of Specialisation」が「Overseas University in Australia」に集約される。
「University College」の要件変更に伴い、改定後のカテゴリー基準への移行は、改定前の「University College」や自己認証権を持つ「Higher Education Provider」については慎重な検討が求められている。
また、改定後のカテゴリー基準では、各カテゴリーの要件として以下について明確にすることとなる。
「Australian University」と「University College」のカテゴリーにおいては、地域社会に積極的に参加し、市民社会におけるリーダーシップと雇用主及び産業界との連携を通じて、卒業生の雇用率を向上させることについての義務。
「Australian University」のカテゴリーにおいては、研究の質に対する期待事項を明示し、各機関の研究活動の質がどのように評価されるか。
原典①:TEQSA(英語)
原典②:Department of Education, Skills and Employment(英語)