韓国:KCUE、尹次期大統領へ大学の発展政策を要請

韓国大学教育協議会(KCUE)は、2022年3月9日の韓国大統領選挙で次期(第20代)大統領に当選した「国民の力」の尹錫悦氏に対し、大学教育分野で実現が望まれる政策をまとめた「大学の発展政策(以下、発展政策)」を要請したことを3月13日に公表した。

KCUEは韓国の4年制大学を会員とする協議体であり、大学機関別評価認証を実施するなど韓国の大学教育質保証の中心的役割を担っている。最近では教育部の行った大学基本能力診断評価に対し慎重な立場を表明する※1など、韓国の大学教育の質向上のため政府との対話を続けている。
※1 本サイト2021/11/1投稿記事参照のこと。

発展政策について

発展政策では、「大学の競争力はこれすなわち国家の競争力であり、未来の社会の競争力である。大学が崩壊すれば未来もない。」というスローガンのもと、主に4つの政策が提言されている。

1. 大学生一人当たりの教育費水準の引き上げ
OECDの統計(2021年版)によれば、韓国の高等教育における在学者一人当たりの教育支出は11,290ドル※2(約140万円)と、初等教育の12,535ドル(約150万円)、中等教育の14,978ドル(約185万円)に比べ低い水準にあり、OECD加盟国平均に満たない水準である。このような状況を踏まえ、高等教育に対する安定的な財政支援の確保を実現するためにも、現在の地方自治体の初等中等教育費に充てられている地方教育財政交付金※3を、高等教育も含めた形の「教育財政交付金」へ転換することや、「高等教育財政支援特別法」の制定が必要である。また現在の地方教育財政交付金の財源の一つである国税の教育税を「高等教育税」に転換し、高等教育の財源を確保することを提案する。
※2 高等教育に対する公的支出、私的支出の合計額(購買力平価による米ドル換算額)。詳細はOECDホームページ参照。
※3 地方教育財政交付金の財源は、内国税の約20.8%と国税の一つである教育税の一部を除いた全額。


2. ニューノーマル/第4次産業革命時代に対応した大学教育の自立性の確保
急速な社会の変化に対応するため、大学はオンライン教育、海外キャンパス等新たな高等教育の在り方を模索しているが、関連法令等による旧来の規制がこの発展を妨げている現状にある。新たな時代の多様な教育モデルの運営に対しては、規制をより柔軟にしていく必要がある。

また政府の行う大学基本能力診断評価※4は、大学やその所在する地域の特性を考慮しない、画一的な評価となっている。政府の行う大学評価は、個別大学の特性に即したオーダーメイド型の評価方式へ転換するとともに、大学の評価負担軽減のため、コンサルティング支援センターの設立等、大学が常時相談できる体制を確立すべきである。
※4 大学基本能力診断評価の詳細については本サイト2022/1/11投稿記事本サイト2021/11/1投稿記事参照のこと。

3. 国際競争力を持った世界水準の研究・人材養成
韓国の大学はQSアジア世界ランキングにおいて13位が最高であり、ソウル国立大学においては18位までランキングを落としているのが現状である。この状況を打破するためには基礎科学への投資拡大、地域拠点研究インフラの構築、世界水準の研究中心型の大学育成等を通じた大学の国際研究競争力強化が必要である。具体的には、国際競争力を備え、各地域を先導する「グローバル韓国大学(GKU)」を地域ごとに育成・支援することを提案する。特に、首都圏・非首都圏大学の格差是正の観点から、地域の特性を活かした分野の育成や産学連携による技術開発を通じた特性強化が望まれる。

4. 地方大学の均衡ある発展・構造改革への支援
出生率の低下、高齢化により地方社会は大学のみならず地域全体が危機を迎えている。地域社会の再生の拠点として大学が機能するよう、大学キャンパスの「中小都市型共存パーク※5」への転換を推進していくべきである。

また地方大学存続のため、遊休資産の活用や構造改革を積極的に支援しつつ、存続が難しい大学に対する廃校に至るまでの段階的な是正措置に関する方策等、地方の限界大学(定員割れの大学)の総合管理方策の策定が必要である。
※5 大学、企業、研究開発(R&D)機関、市民センター等が共存する都市型複合空間。

KCUEは本件について、「次期大統領に要請したこれらの内容は全国の大学総長の総意であり、新政府体制でこれらの政策が実現されるよう引き続き努力していきたい。」とコメントしている。

原典:韓国大学教育協議会(韓国語)

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