中国:多様な学位取得方法―自学考試制度、同等学力者学位申請制度

高等教育の卒業証書や学位の取得方法としては、大学等の高等教育機関で所定の修業年限内に一定の成績を収めることで取得することが一般的であるが、日本、また諸外国では別の形で学位を取得できる制度もある。中国では、「高等教育自学考試」制度や「同等学力者による学位申請」制度を利用して、大学卒業資格や学士・修士・博士の学位を取得することが可能である。

1.「高等教育自学考試」制度:専科(短期大学レベル)又は本科(学士課程レベル)の卒業資格・学位取得制度

制度の概略

学歴、年齢を問わず、独学または講座の受講を経て、課程ごとの試験計画に基づき科目別の試験に合格して単位を積み上げることで高等教育卒業資格(学歴)を得ることができる制度。修業年数の目安は計画上、専科課程の場合は3~4年、本科課程では4~5年とされている。卒業に必要な単位を取得すると本科または専科の卒業資格が得られる。また、一定の条件を満たせば学士の学位の取得も可能である。

経緯

1981年から試験的に実施され、1988年に国務院より発布された「高等教育自学考试暂行条例」にて、「高等教育自学考試」制度とは「自己学習、社会支援※1及び国家試験を組み合わせた高等教育の形態である(第2条)」と定義された。同年、中華人民共和国高等教育法にも規定され正式な制度となった。
主に在職者が本制度を利用しており、2019年は本科・専科合わせて48.98万人が卒業資格を取得した(教育部 2019年全国教育事业发展统计公报)。

※1 社会支援とは教育機関や企業等が実施する自学考試向けの講座等を指す。

卒業資格取得までの手順

①独学または教育機関等が実施する「高等教育自学考試」向けの講座を受講する。
②科目ごとの全国統一試験を受験する。
③卒業に必要な科目の試験に全て合格すると卒業証書が授与される。

試験と専門分野

・全国高等教育自学考試指導委員会(全国考委)が統一試験を組織し、省政府・自治区・直轄市の試験センターが試験の申込を受け付ける。

・専門分野ごとに試験担当大学が決められており、学修者は試験担当大学で試験を受ける。専門分野は、経済系、教育系、芸術系、理工系、農学系、医学系、文学・史学系などがある。試験は毎年4月と10月にそれぞれ2日間実施される(1日2科目の受験が可能)。

・卒業証書は試験担当大学が発行する。

学位の取得について(自学考試の本科課程のみ)

・中国では、卒業と学位取得は別の概念であるため、本科課程の卒業要件に加え、学士の学位取得には指定された外国語試験に合格するなどの要件も満たさなければならない。全ての要件を満たせば、試験担当大学が学士の学位を授与する。

・卒業証書や学位証書には「高等教育自学考試」と明記され、地域の試験委員会と試験担当大学の印が押される。なお、専科課程は卒業証書の授与のみで学位の授与はない。

2.大学院卒業同等学力者による学位申請制度(修士・博士)

制度の概略

学位取得や就業状況などに関する以下の申請条件を満たしている者が、修士・博士の学位授与権を持つ高等教育機関に対して学位申請をすることができる制度。

・修士:学士の学位保持者で3年以上の職務経験のある者が対象。同等学力者による修士学位申請のための全国統一試験(原語:同等学力人员申请硕士学位全国统考)を受験しなければならない。
・博士:修士の学位保持者で5年以上の職務経験のある者が対象。全国統一試験は無い。

経緯

同等学力者による修士学位申請のための全国統一試験は1995年から行われている※2。1998年に国務院学位委員会が制定した「大学院卒業同等学力者の学位申請規定」(原語:国务院学位委员会关于授予具有研究生毕业同等学力人员硕士、博士学位的规定)に、学位授与方法等が規定されている。

※2 毎年5月に試験が行われる。1995年から2012年の17年間に毎年約15万人が受験した(教育部)。2021年は、北京市で2.3万人が受験した(中国教育在线)。なお、2022年は3月に申請を受け付け、試験は5月22日に実施される予定だったが、新型コロナウイルスの蔓延により2022年下半期に延期されている。

申請手順

◆同等学力者による修士学位申請(原語:同等学力人员申请硕士学位)

①資格審査:学位申請者は、学位授与機関(同等学力修士申請を受け入れている学位授与機関リスト※3)に必要書類(教育、研究、専門技術等の業績を示すもの等)を提出、学位授与機関は申請資格審査をする。※4

②同等学力水準の認定
・学位授与機関は学位申請者の教育、研究、専門技術の業績を認定し、申請資格が認められた者は学位授与機関が修士課程のカリキュラムに沿って実施する科目認定水準試験※5を受験する。
・教育部学位・大学院教育発展センター(CDGDC)が実施する同等学力者による修士学位申請のための全国統一試験※6を受験する。

③論文審査:②で示した全ての試験に合格することで同等学力があると認定された者は、1年以内に修士論文を所属の学位授与機関に提出する。提出後半年以内に口頭試問を受けて合格すると、学位授与機関が科目水準試験結果、全国統一試験結果、修士論文審査結果を踏まえて修士の学位を授与する。

※3 同等学力修士の申請を受け入れている学位授与機関は高等教育機関が主だが、研究機関、高等教育機関が経営する企業もリストにある。
※4 医学系の場合は、医学系の本科課程卒業かつ学士号を取得し、所定の医師研修を受けているか臨床医師の資格を有していること等の規定がある。
※5 専門分野に関する試験。学位授与機関の修士課程と同等水準の試験を実施する。学位授与機関によっては専門科目の聴講やその他の試験が課される。
※6 外国語試験(原語:同等学力人员申请硕士学位外国语水平全国统一考试)と専門分野の総合試験(原語:同等学力人员申请硕士学位学科综合水平全国统一考试)があり、両方を受験しなければならない。外国語試験は、英語、ロシア語、フランス語、ドイツ語、日本語から1言語を受験する。

◆同等学力者による博士学位申請(原語:同等学力人员申请博士学位) 

①資格審査:学位申請者は、学位授与機関に必要書類(学術論文や著書等業績、専門家からの推薦状等)を提出、学位授与機関は申請資格審査をする。

②同等学力水準の認定:学位授与機関は学位申請者の教育、研究、専門技術の業績を認定し、申請資格が認められた者は、博士課程のカリキュラムに基づいた各科目の試験を受ける。1年以内にすべての科目に合格しなければならない。

③論文審査:②の試験に合格することで同等学力があると認定された者は、1年以内に博士論文を提出し口頭試問を受ける。口頭試問に合格し博士の学位授与が決定すると、学位授与機関は、学位申請者の氏名と博士論文テーマのリストを公表し、各申請者の所属機関にも通知する。3か月の猶予期間を経て学位が授与される。

なお、この制度は課程を修了するものではないため卒業証書の授与はなく、要件を満たした場合に学位証書が授与されるのみである。

原典①:中国教育考試網 高等教育自学考试制度(中国語)
原典②:国务院学位委员会关于授予具有研究生毕业同等学力人员硕士、博士学位的规定(中国語)
原典③:关于延期举行2022年同等学力人员申请硕士学位外国语水平和学科综合水平全国统一考试的通知(中国語)
原典④关于做好2022年同等学力人员申请硕士学位外国语水平和学科综合水平全国统一考试工作的通知(中国語)
原典⑤:CDGDC 同等学力人员申请硕士学位全国统考(中国語)

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