欧州各国、職業教育訓練分野の新たな中期目標に合意

出典①:Cedefop
出典②:EQAVET

2015年6月22日、欧州各国の職業教育訓練(VET: vocational education and training)担当閣僚がラトビアに集まり、向こう5年間の職業教育訓練分野の新たな中期的戦略目標に合意した。今回設定された目標は、実習中心の学習をすべての職種で奨励することや、職業教育訓練品質の保証制度を改善することなど、5つの項目で設定されている(下記参照)。

欧州地域は職業教育訓練制度を統一し、労働者が国を越えて就労しやすい環境作りを目指しており、こうした一連の動きはコペンハーゲンプロセスと呼ばれている。2002年のコペンハーゲン宣言以来、国・地方・地域レベルでの職業教育訓練改革が進められ、例えば欧州資格枠組み(EQF)の策定もその1つだ。今回の『リガ結論』(Liga conclusions)と題された合意文書では欧州連盟が持つ教育・職業訓練分野の戦略目標(ET 2020)到達のため、職業教育訓練界が行うべき取組みが列挙された格好である。この内容は、前回の閣僚会合(2010年)で合意した『ブルージュコミュニケ』の内容を、欧州の現状に合わせて改訂したものとなっている。例えば、イギリスは既に見習い制度(apprenticeship)改革を進めており、今秋からは防衛、IT、原子力分野などで学士や修士レベルの見習い課程(本サイト2015年4月6日投稿記事)が創設される。今後は、コペンハーゲンプロセスに参加する連携団体(social partnerと呼ばれる)や各業界団体の協力を得ながら、各国が目標達成へ向けて努力し、その進捗状況を共有(本サイト2014年12月1日投稿記事)していくことになる。

2015-2020年の中期的目標

  1. 実習中心の学習をすべての種類の職業訓練で導入する。特に見習い制度に焦点を当て、連携団体、企業、業界団体、訓練機関と連携し、技術革新と起業家精神を育むことに注力する。
  2. EQAVET (EU Quality Assurance in Vocational Education & Training: 欧州の職業教育訓練質保証制度開発のために作られた組織)の提言に沿って職業教育訓練の質保証機能の発展を促し、制度の中にI-VETやC-VETでの学習成果をもとにした情報とフィードバックが繰り返される仕組みを取り入れる。
  3. 誰もが職業教育訓練の受講と資格の取得を目指せる環境づくりを行い、特にガイダンスサービスの充実とノンフォーマル/インフォーマル学習の認定を含んだ、柔軟な制度を設ける
  4. 職業教育訓練カリキュラムで身につけるキーコンピテンスをさらに強化し、I-VETやC-VETを通じた技能修得がより効果的に行えるような機会を設ける
  5. 職業教育訓練の教員、教官、メンターの職能開発を訓練校および実習先の両方で継続的に実施できるよう、計画・実行する

I-VET: initial education and training
教育制度の中で、通常は就職前に行われる一般的または職業的教育訓練のこと

C-VET: continuing education and training
初期段階の教育/訓練を受けた―もしくは一旦就職した―あとの教育または訓練のことであり、①知識や技能の向上と刷新、②キャリアアップのための新たな技能取得や再訓練、③個人または専門職としての自己開発のために行われる

コペンハーゲンプロセス参加国:欧州連合加盟国、欧州連合加盟候補国、欧州経済領域国

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