偽造書類による就職防止のためのツールキット公表

出典①:A Toolkit for Higher Education Providers
出典②:A Toolkit for Employers

就職時の応募書類の不正防止を目指す

高等教育機関向けと企業向けのツールキット

書類偽造のタイプ分けや不正防止対策などを紹介

イギリスで高等教育データチェック(HEDD*(本サイト2012年12月21日掲載))を提供するプロスペクツ社は、偽造された書類を用いた就職活動を防止するため、高等教育機関と企業に向けたツールキット”Advice and Guidance on Degree Fraud”を相次いで発表した。ツールキットでは実際に発生している書類の偽造を4タイプに分け、不正防止のための対策や事例が発覚した際の対応が提示されている。さらに、こうした不正行為に対応する機関やサービスも紹介している。

*HEDD (Higher Education Degree Datacheck):雇用者が、英国の学位授与機関の認可状況と、卒業生の学位取得状況を確認できるオンライン照合サービス。2011年にイングランド高等教育財政カウンシル(HEFCE)の基金で設立され、プロスペクツ社(高等教育キャリアサービスユニット(HECSU)が所有する高等教育修了者のキャリアを支援する団体。正式名称はGraduates Prospects Ltd)が運営する。

書類偽造の4タイプ ※報告書では事例紹介あり
  • 偽大学とディグリーミル (bogus universities and degree mills)

大学のように見せかけ、消費者から金銭を得ることを目的とする組織。その手段として、実態のない教育機関による本物と見間違う学位記や証明書を発行し、入学金や通話手数料などを請求する。最近ではその手口が巧妙化しており、立派なウェブサイトを有する、本人の在学履歴確認サービスを提供するなどといった事例も見られる。

  • 複製ウェブサイト (copycat websites)

実在する大学と同じまたは紛らわしい名称や情報を用いたウェブサイト。騙された出願者は、正規の大学への手続きをしていると思い込み、入学金や通話手数料などを支払ってしまう。学位記や証明書の発行も行い、”卒業生”の確認サービスも提供する点は上記偽大学と同じ。

  • 偽造証明書販売サイト (fake certificate sites)

ノベルティや代替品としての学位記を販売するウェブサイト。サイトには詐欺行為に使用してはいけないとの注意書きが見られるが、そもそも実際の大学の著作権や商標を侵害している。偽造に使われる学位記画像は、実際の卒業生によるtwitter、facebook、instagramなどへの投稿データが用いられる。

  • 個人的偽造 (individuals)

応募者本人による書類の偽造。個人名、分野や科目、資格やそのレベルといったものを書き換える。本物の証明書を基に偽造されるため発見が難しく、発行した機関やHEDDのチェックを受けることが推奨される。

ツールキットではこれらの偽造行為に対して、高等教育機関と企業それぞれに向けての提言がまとめられている。そのうち、書類偽造に対するポリシーの設定や証拠の共有は両者に共通して推奨されている。一方で、高等教育機関には学生と卒業生を交えた取組みも求めている。企業に対しては、担当部署の明確化や既存社員の学歴審査などさらに6つの提言がなされている。

高等教育機関へ向けた提言
  • 書類偽造に対するポリシーの設定:
    • 入学者獲得と選抜時の対応
    • 書類を偽造した現役または元学生への対応
    • 自大学を騙る悪意のあるウェブサイトへの対応
  • 偽造書類やその証拠の共有
  • 学生や卒業生への取組み:
    • ソーシャルメディアへの画像投稿の自粛要請
    • 書類偽造に対する犯罪意識の啓蒙など
企業へ向けた提言
  • 書類偽造に対するポリシーの設定
  • 担当部署の明確化
  • 採用応募者への周知:上記ポリシーの存在や資格審査の実施を伝達することなど
  • 書類審査方法の確立
  • 書類を偽造した既存社員への対応
  • 書類を偽造した採用応募者への対応:不採用にするだけでなく、毅然とした処置を取る
  • 偽造書類やその証拠の共有

日本の大学で出願書類審査を行う担当者を対象とした2014年の当機構の調査では、提出された出願書類の偽造を疑った経験のある回答者は1割にも満たなかった(学士課程9%、大学院課程7%)。その一方で、書類の真偽判別のための取組みをしていると答えた担当者も全体の1/4程度であり、提出書類の真正性確認はあまり行われていない現状が明らかになっている。

書類審査の取り組みとして、例えばアメリカで資格評価サービスを提供するWorld Education Services (WES)では、外国の学歴証明書を審査する際のポイントをまとめた白書を公開(本サイト2014年12月26日掲載)している。白書の中では、書類発行機関の存在や正式な認可の確認など、提出された書類を審査する4つのポイントが紹介されている。

また、ディプロマミル(ディグリーミル)については数多くの報告があり、今回のツールキットの中でも事例が掲載されている。本ブログでは、欧州高等教育アクレディテーション協会による報告(本サイト2011年8月25日掲載)や中東のメディアAl-Fanarが行った調査(本サイト2015年3月30日掲載)を紹介している。さらに、当機構が発行する「諸外国の高等教育分野における質保証システムの概要」アメリカ版(p33)では、ディプロマミルの定義や疑いを持つべき要素をまとめている。

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