消費者を欺くディプロマミルの実態

原典:Al-Fanar(英語)

中東の教育メディアAl-Fanarでは、ディプロマミル(学位を授与する権利がないのに、学位授与をする不正な教育機関)に対するまとまった調査を行い、その結果を2015年2月24日に報じた。以下は、その記事から浮かびあがった、ディプロマミルの実態である。

※筆注:本文中に登場するMust大学、Presley大学、McMillan大学、Hurst大学、およびIAOは、Al-Fanarによるとディプロマミルもしくはアクレディテーションミルと見なされている。出典記事は、こうした組織に学生が捕まらないよう注意を喚起するために作成されたものである。

Must大学
Must大学は、世界180ヶ国以上の学生が在籍するオンライン専門の教育機関である、と自身のウェブサイトで謳っている(筆注:同名の大学は世界各地で見られるが、今回話題となるのは完全オンラインの大学のことである)。しかし、ウェブサイトに記載されたアメリカのサンフランシスコにある事務所が、まず疑わしい。この地域を管轄するBetter Business Bureau(北米諸国の企業による詐欺を監視する団体)にもMust大学に対する苦情は多く、記載された宛先に送った郵便物は受取人不明で返送されてきたそうである。また、苦情を寄せたうちの1人、Scott Wiseの話によると、2010年に入学したコンピュータサイエンス分野の学士課程では、提供された教育は自動化されたオンライン上のテストのみであり、大学が宣伝する2,500名の教授陣による指導は一度もなかった。

大学教員
Must大学の教員として名を連ねるRick ShadrickへコンタクトしたAl-Fanar記者によると、Shadrick氏は学生を定期的に指導していると主張していたそうである。一方、テネシー州の保安官事務所には、同氏が警察官などの権力を持つ人物になりすましているとの通報が寄せられており、この教員が何者なのか謎が残る。(Shadrick氏はすでにテネシーを離れていたため、保安官は捜査に入れなかった)

金銭被害
前出Wise氏は、入学時に大学が提供した奨学金により、授業料が14,400から7,500ドルとなり、負担分も彼の雇用者によって支払われた。アメリカの学士号は通常4年間の学習が必要だが、彼はなんと8ヶ月ですべてのカリキュラムを修了した。ところが、早速送られてきた学位記には彼のフルネームの記載がなかったため、大学側に訂正を求めたところ、証明書の再発行料を求められた。しかも、通常1,300ドルのところを800ドルにすると言ってきたのだ。金銭トラブルはこれだけでなく、同大学は本人の承認もなく500ドルを勝手に口座から引き落とし、Wise氏の返金要求は徒労に終わったこともあった。

別のケースとして、Vickie San Juanという元学生は、Must大学のサプライチェーン管理資格課程を受講した。ここでも大学による奨学金により、授業料負担が通常2,050ドルのところを1,650ドルで済んだ。しかし、彼女にも大学からの度重なる未承認の引き落としがあり、返還されてもまた新たな引き落としがされるという状態だったため、彼女は決済に用いたクレジットカードを解約した。また、課程修了の証明書が送付された後、大学側は内容に不備があったため別途正式な証明書が必要だとJuan氏に連絡を取ってきた。やはり、Must大学は正規の証明書発行代金として1,600ドルを請求してきた。

Al-Fanar記者は、Must大学の志願者を装い、大学のウェブサイト上のオンラインチャットを始めた。すると、Jack Aydenと名乗るスタッフは、チャット開始すぐに入学金と授業料に対する奨学金支給を告げてきた。その内容は、入学金300ドル分と、授業料の50%または75%分が賄われるとのことだった。入学金は499ドルから199ドルになり、授業料は通常15,200ドルのところ、分割払いでは50%負担、一括払いではわずか25%の負担で済むという。ただし、この奨学金は本日限りのオファーということだった。

Jack Ayden
奨学金を提示し、Must 大学への入学を勧めてきたJack Aydenという人物は、他の大学でも確認されている。それが、McMillan大学とPresley大学で、どちらもウェブサイト上のライヴチャットで、Ayden氏とコミュニケーションを取ることができる。

アクレディテーション
McMillan大学は、ウェブサイト上で米国アクレディテーション協議会(CHEA)のアクレディテーションを受けていることを謳っている。しかし、CHEAは全米のアクレディテーション機関が集う会員制組織であり、CHEA自身ではアクレディテーションを行っていない

これ以外のアクレディテーションとしては、Must大学とMcMillan大学はIAO (International Accreditation Organization)からもアクレディテーションを受けている。IAOのアクレディテーションを受けている大学は世界中で52大学ある。しかし、この組織にも疑わしい点が多い。
IAOのアクレディテーションを受けている大学にHurst大学がある。大学ウェブサイト上のオンラインチャットでDr. Andy Mooreと名乗るスタッフは、同大学の学位で英国の修士課程に進むことができると謳う。また、アクレディテーション主任としてDr. Austin Rhodesがいるが、この人物は電話に出ても再度かけ直すように言うだけで、決してAl-Fanar記者の質問に答えることはなかった。さらに、Rhodes氏はMcMillan大学での職も兼務していることが判明している。

評価専門家
IAOのアクレディテーション審査を行う専門家リストが、同機関のウェブサイトに掲載されている。このうち少なくとも2名、Diego Fernando Steinaker氏とRobin Farguhar氏は、Al-Fanarの取材に対してIAOとは一切関係ないと証言している。

ディプロマミルの手口
このように、今回の調査では、ディプロマミルと思われる組織の手口として、下記のような特徴が判明した。

  • ライヴチャット:ウェブサイト上でスタッフとのやり取りが24時間できる
  • 奨学金:入学金や授業料に対する奨学金がすぐに提示され、割安感を演出
  • 不透明な追加料金:元学生の体験では、本人の承認がないままクレジットカードからの引き落としがあり、あえて不備のある証明書を送付し再発行料金を課すなどの手口が共通している
  • デザインの類似:Must大学、McMillan大学、Hurst大学、IAOなどのウェブサイトは、すべて似たようなデザインをしており、ライヴチャットが可能で、各機関の電話の保留音は同じである。また、同一人物が複数の機関のスタッフとなっていることも特徴的だ

diplomamills

(出典記事をもとに評価事業部国際課が作成)
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