2021年6月、ASEAN各国の高等教育質保証機関等による地域ネットワークの「ASEAN質保証ネットワーク(AQAN)」は、「ASEAN質保証枠組(AQAF)外部質保証機関のレビューのためのガイドライン」(ASEAN Quality Assurance Framework (AQAF) Guidelines for Reviews of External Quality Assurance Agencies in ASEAN)の最新版を刊行した。本ガイドラインは、EU・ASEANの地域間協力の強化等を目的に実施されているEU助成プロジェクト「SHARE」の支援を得て策定された。高等教育の質に関するASEAN地域共通の参照点であるAQAFの原則に、ASEAN域内の外部質保証機関の活動がどの程度適合しているかを検証するためのレビューの実施要領等がまとめられている。
■ASEAN質保証枠組(AQAF: ASEAN Quality Assurance Framework)とは
AQAFは、ASEAN地域における教育の質を向上させ、地域内外で学生・労働者・専門家の流動性を高めることを目的として、2013年にAQANによって承認された。承認当初は「AQAFHE」(ASEAN Quality Assurance Framework for Higher Education)という名称であったが、2014年に現在の「AQAF」に改称された。①外部質保証機関、②外部質保証の基準とプロセス、③内部質保証、④国の資格枠組の4領域に大別され、各領域に10の原則が示されている。ASEAN地域の多様な高等教育制度、文化、伝統の調和に向けて、AQAFは質保証機関や高等教育機関の共通の参照点としての役割を果たす。
■AQAFガイドラインとは
ASEAN域内の外部質保証機関における質保証活動がAQAFの原則にどの程度適合しているかを検証するためのレビューの実施要項等をまとめたもの。ガイドラインの構成は以下のとおりとなっている。
第1章 ガイドラインの目的
第2章 背景(AQANの発足、AQAFの開発)
第3章 AQAFの4領域
第4章 レビューの方針・範囲・成果
第5章 レビューに係る担当者の役割
第6章 レビュー全体のスケジュール
第7章 レビューの実施体制
補足資料:AQAFの原則一覧、訪問調査のスケジュール例、自己評価書・評価報告書の
テンプレート、用語解説
AQAFガイドライン刊行の背景
AQANにより2014年にAQAFが開発された後、2016年にAQANとSHAREプロジェクトの専門家が共同で、外部質保証機関のためのレビュースキームとガイドラインを開発した(本サイト2017/6/9掲載記事)。
2017年にはマレーシア、インドネシア、フィリピン及びタイの4つの質保証機関※1がパイロットレビューを受審し、ASEAN及びヨーロッパの専門家がレビュープロセスや自己評価書のテンプレート等についてフィードバックを行った。その結果、主な改善点として、評価担当者及び質保証機関のAQAFへの共通理解を図ることを目的とした研修の必要性や、言語及びコミュニケーション障壁への対応等が挙がった。これを踏まえ、AQANや専門家の間で更なる議論が重ねられた結果、自己評価書及び評価報告書のテンプレート等が改訂され、2021年6月に最新版のAQAFガイドラインが刊行された。
※1 マレーシア資格機構(MQA)、インドネシア国立高等教育アクレディテーション機構(BAN-PT)、フィリピン学校・カレッジ・大学アクレディテーション協会(PAASCU)、タイ全国教育水準・質評価局(ONESQA)
レビューの方針
評価担当者は受審を希望する外部質保証機関が提出した自己評価書の内容に基づき、ASEAN各国の外部質保証機関の活動がAQAFの原則にどの程度適合しているかを検証する。(外部質保証機関のレビューの受審は任意。)
また、当該国においてAQAFの「④国の資格枠組み」が未整備の場合には、レビュー項目から除外される。レビュープロセスにおいては透明性を確保し、書面調査や訪問調査をもとにASEAN及びヨーロッパの評価担当者(計4名)により客観的にレビューが実施される。
レビュープロセス
①受審を希望する外部質保証機関からAQANへの申請
②当該外部質保証機関に対する研修(説明会)の実施
③当該外部質保証機関からAQANへの自己評価書の提出
④評価担当者に対する研修の実施
⑤評価担当者による書面調査及び訪問調査の実施
⑥評価担当者による評価報告書の作成
⑦評価結果案を当該外部質保証機関に通知
⑧(必要に応じて)当該外部質保証機関からAQANに意見申立て
⑨評価結果の確定及び公表
■AQAFガイドラインへの期待
本ガイドラインの刊行により、ASEAN地域における高等教育の質に関する「共通空間」(Quality Common Higher Education Space)を実現するために、ASEAN各国の外部質保証機関を対象としたレビュープロセスを強化し、レビュー実施を推進していくことが期待されている。
原典①:SHARE(英語)
原典②:SHARE(英語)