ASEANロードマップ2025が策定―高等教育の共通空間の構築を目指す

 2022年7月、ベトナムのハノイで開催された第15回SHARE 政策対話において、ASEAN事務局、SHAREプログラム※1、ASEAN高等教育のモビリティに関するワーキンググループのメンバーが一堂に会し、「Roadmap on the ASEAN Higher Education Space 2025 and Its Implementation Plan(ASEAN高等教育空間2025ロードマップ及び実施計画)」を発表した。

※1 正式名称:European Union Support to Higher Education in ASEAN Region(EU-ASEAN間の高等教育分野の連携プログラム)。EU・ASEANの地域間協力の強化とASEAN地域における高等教育制度の調和を目指し、2015年に始動したEUが助成するプロジェクト。実施期間は当初4年間(2015~2019年)であったが、その後2022年までの期間延長の措置がとられている(NIAD-QE国際課まとめ)。SHAREプログラムでは、ボローニャプロセス(NIAD-QE国際課まとめ)や欧州高等教育圏(EHEA)、エラスムスプログラム、欧州単位互換制度(ECTS)(NIAD-QE国際課まとめ)における欧州の経験をASEAN地域において活かすことを目的の一つに掲げている。(過去の関連記事として本サイト2021/5/17投稿記事本サイト2015/4/22投稿記事を参照。)

■ロードマップ策定の趣旨

 本ロードマップ及びその実施計画は、ASEAN高等教育空間の構築に向けてASEAN共同体全体のアプローチを採用し、高等教育の包括性、エンプロイアビリティ※2と競争力の向上、需要に沿ったコンピテンシーと資格の取得に貢献するように策定された。
 これは、同地域における人と人とのつながりの強化、高等教育へのアクセスと認知度の向上を通して、ASEAN共同体ビジョン2025※3と将来のレジリエンス(回復力)の強化に寄与するものである。新型コロナウイルスのパンデミックがもたらした学生モビリティの混乱や世界的な高等教育の状況の変化に対応したアプローチも提案されている。 また、2025年までにASEAN域内の学生のモビリティを高めるというASEANの使命と目標が示されるとともに、持続可能な開発目標(SDGs)※4の目標4「すべての人々に包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」に沿った内容となっている。
 また、2025年までにASEAN域内の学生のモビリティを高めるというASEANの使命と目標が示されるとともに、持続可能な開発目標(SDGs)※4の目標4「すべての人々に包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」に沿った内容となっている。

※2 企業や組織に就職したり転職したりできる能力のこと。

※3  2015年11月の第27回ASEAN首脳会議において、ASEANは「政治・安全保障共同体」、「経済共同体」、「社会・文化共同体」の3つから成るASEAN共同体の構築を宣言するとともに、更なるASEANの統合を深めるべく、「ASEAN共同体ビジョン2025」を採択した。

※4 「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。2015年9月国連サミットにおいて加盟国の全会一致で採択された。

■これまでの主な取組

  • 「高等教育に関するクアラルンプール宣言」(Kuala Lumpur Declaration on Higher Education)
    2015年の第27回ASEAN首脳会議において採択され、この宣言によりASEAN高等教育空間の構築に向けた高級実務者会合(SOM-ED)の取組を開始した。
  • 「ASEAN連結性マスタープラン(MPAC)2025」(Master Plan on ASEAN Connectivity (MPAC) 2025) 2016年の第28回ASEAN首脳会議において、MPAC(2010年策定)の後継文書として採択された、物理的・制度的・人と人とのつながりに重点を置いた行動計画。2025年までにASEAN域内の留学生数を増加させるという明確な戦略目標も含まれている。
  • 「教育に関するASEAN5ヵ年計画(2021-2025)」(ASEAN Work Plan on Education 2021 – 2025) 2021年5月に開催されたASEAN教育大臣会合(ASED)で承認され、戦略やメカニズム、奨学金の提供を通じた、高等教育の調和におけるASEANの能力維持・強化を掲げている。こうした取組を推進するため、ASEAN高等教育のモビリティに関するワーキンググループ2025(ASEAN Working Group on Higher Education Mobility 2025)※5が設置された。ASEAN高等教育空間の実現に向けたロードマップの策定・提案を任務としている。

※5 ASEAN事務局の教育・青年・スポーツ課(EYSD)とASEAN財団が共同議長を務め、ASEAN10カ国の教育省及び高等教育省と、ASEAN大学連合(AUN)(NIAD-QE国際課まとめ)東南アジア教育大臣機構・高等教育開発センター(SEAMEO-RIHED)(NIAD-QE国際課まとめ)ASEAN質保証ネットワーク(AQAN)(NIAD-QE国際課まとめ)、UNESCO等の地域組織の代表者から構成されている。

■ロードマップの概要

〇ビジョン

  • 高等教育の調和と国際化、更にはレジリエンス(回復力)があり持続可能な高等教育空間を構築する。
  • 特に、人と人とのつながりを強化し、ASEAN共同体の構築を支援する。

〇期待される成果

高等教育の調和を含む生涯学習の一環としてASEANの地域力向上に貢献する。

〇6つの主要分野

  1. 高等教育空間構築のための認知度向上・支援の促進
  2. ASEAN域内の質保証の認知・実施の強化
  3. ASEAN資格参照枠組(AQRF:ASEAN Qualifications Reference Framework)(NIAD-QE国際課まとめ)の運用の推進・支援
  4. 高等教育のモビリティ(学生、教員、研究者、インターンシップ)に関する地域協力の推進・強化
  5. ASEANの高等教育資格や専門職の相互承認の推進
    ✓ディプロマ・サプリメント
    ✓単位互換制度の電子化
    ✓「高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約(東京規約)※6」の締結、将来的には「高等教育の資格の承認に関する世界規約」※7の締結を目指す)
  6. 高等教育空間の持続可能性(技術・人材・資金面)を確保するための基盤の設計

※6 ※7  東京規約及び世界規約の概要については高等教育資格承認情報センター(NIC-Japan)サイトを参照。

〇3つの戦略

  1. 6つの主要分野に関連するワーキンググループ、ASEAN加盟国、関連機関、高等教育機関の能力開発
  2. 技術支援
  3. 主要な方向性や政策、ガイドライン、メカニズム等について、ASEAN加盟国間で促進、議論、合意するための政策対話の実施

■今後に向けて

 ロードマップの末尾には付属文書として、今後2年間(2022-2023年)の実施計画が掲載されている。実施計画には、6つの主要分野に対する具体的な活動内容が記載されており、併せて3つの戦略のうちどれにあてはまるか、先導する国やプロジェクト名、活動の根拠となるワークプラン名等が示されている。なお、内容は今後も定期的に見直される予定となっている。

    <活動内容の具体例>
  • 政策対話の実施
  • 資格枠組み(QF)及び質保証に関するセミナー・地域会議の実施
  • ASEAN域内のバーチャルエクスチェンジ及びオンラインを活用した双方向の国際協働学習(COIL:Collaborative Online International Learning)プラットフォームの設計
  • ASEAN加盟国を対象とした奨学金制度の構築
    CLMV諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)における学生モビリティの支援

原点①:SHARE(英語)
原典②:SHARE(英語)
原典③:SHARE(英語)
原典④:ASEAN(英語)

カテゴリー: ASEAN パーマリンク

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