証明書はどうなる?
みなさんは進学や就職の際に、自分の出身校の卒業証明書を提出しませんでしたか?場合によってはわざわざ母校を訪ねて取得したあの証明書(本サイト2019年6月18日掲載記事)は、その後どのように使われているのでしょうか。
卒業証明書は、そこに書いてある内容を担当者が読んで終わりではありません。実は、証明書の内容が本当かどうかの事実確認―verification―が日常的に行われています。この事実確認には2つの意味があり、(1)証明書を発行した学校が正規の教育機関であるかに加え、(2)証明書に記載された人物が実際に卒業したかどうかも確認の対象です。本稿では後者の卒業確認に絞ってお話しします。
事実確認はオンラインへ
では、事実確認はどのように行われるのでしょうか。証明書の発行元である学校への電話や電子メールでの問い合わせは、最も一般的な方法です。さらに、最近では学校や政府が構築した専用データベースを使った、オンライン上での確認を行える国も増えてきています(本サイト2018年10月24日掲載記事)。例えば、ウクライナ政府は2013年以降に同国で教育を受けた学生の学習歴が確認できるデータベースを公開しています。
卒業確認が困難な日本の学校
事実確認の方法が便利になる国がある一方で、日本で発行された証明書の確認は難しいこともあるようです。国際会議で海外の教育関係者と話をすると、日本の学校に卒業確認の依頼メールを送っても拒否されたり、返事がないことがよくあるそうです。卒業確認は「個人情報保護の理由から」できない学校や、電話による確認は「一切受け付けない」と明言する学校も見られます。
もちろん個人情報の保護は重要な観点です。海外の事例では、進学・就職先が卒業の事実確認を行う際には、必ず卒業生本人からの同意を得ます。日本の個人情報保護法に関する政府広報にも、「個人情報を本人以外の第三者に渡すときは、原則として、あらかじめ本人の同意を得なければなりません」とあります。
卒業確認への対応法
以上を踏まえると、日本の教育機関も一定の条件下で卒業確認の問い合わせに対応するべきではないでしょうか。問い合わせをした第三者には卒業生本人からの同意の証拠を求め、認められれば卒業事実に関する情報提供を積極的に行うべきです。
問い合わせへの理想的な対応方法の1つは、確認用のオンラインデータベース構築でしょう。また、電話や電子メールへの回答でも充分卒業生の利益につながります。
紙の証明書以外の対応ができない場合でも、 厳封した卒業証明書を問い合わせ元へ直接郵送するという代替案もあります。 証明書が卒業生の手に渡ると偽造されると考える機関もあるため、第三者への直送も有効な手段です。
(文責:Y.S.)