質保証と学術資格の承認の連携で公正な資格承認を―LIREQAプロジェクト

留学生の入学選抜を行う際、大学はどのようなことに気を付けているでしょうか。
各大学が定める出願資格に照らして入学希望者が必要な学習を修了しているか、入学希望者が保持する学術資格を審査します。あわせて、卒業した機関が正規に認証された機関であるかなど、これまでに受けた学習の質を調べます。

質保証の側面から学生の受入れを考えると、高等教育機関が入学希望者の保持する資格を適切に審査しているか否かは、機関の目的やカリキュラム、学位授与の方針等の高等教育機関の様々な側面で密接に関わる点であり、質保証プロセスの中でしっかり検証していくべきとの意見があります。

上記のような学術資格と質保証が密接に関連する場面においては、高等教育機関と質保証機関、他国の資格の承認促進のために必要な情報を一元的に管理・提供する役割を持つナショナル・インフォメーション・センター(NIC)の三者が相互に連携し、各々の機能の効果を高めることが求められます。

そこで、欧州地域ではエラスムス・プラスプログラム(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)の下、質保証と資格承認の連携に関する提言を検討し、公正な資格承認への貢献(Linking Academic Recognition and Quality Assurance)を目指すLIREQAプロジェクトを立ち上げました。
リトアニアの質保証機関・NICの主催で、 オランダ、フランス、スペイン、ノルウェー、リトアニア、ラトビアの質保証や学位・資格に関わる8機関とENQAが参加している当プロジェクトの最終報告会が2019年5月に開催されました。

報告会では、最終提言「資格の承認と質保証との連携(INTEGRATING ACADEMIC RECOGNITION AND QUALITY ASSURANCE: PRACTICAL RECOMMENDATIONS)」が発表され、高等教育機関に対しては下記のような提言(一部抜粋)が示されました。

  • 高等教育資格の承認に関する欧州地域の条約であるリスボン承認条約(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)や同地域で開発された資格承認のためのマニュアルなどを使って、各高等教育機関は資格承認の手続きの確立、点検、最適化を行うこと。
  • 質保証の一環として資格承認のための手続きに関する定期的なモニタリング・レビューを受けること。
  • 「資格の承認」、「学習期間の承認」、「既習得学習の承認」、「高等教育機関へのアクセスのための資格の承認」の機会を高等教育機関は積極的に提供し、資格承認に関する明確で入手しやすい情報を発信すること。資格承認の際、申請者とのコミュニケーションを確保すること。
  • 高等教育機関と国の指定を受けたNICは資格承認に係る情報と能力について連携すること。
  • 高等教育機関は情報、知識、優良事例の共有のために他の高等教育機関の資格承認部署と協働すること。

プロジェクト参加者により、 質保証の項目に資格審査を盛り込むことが最終提言の中に盛り込まれたものの、現状では、大学内で行った資格審査の手続きを内部質保証のプロセスの中で見直す大学は多くなく、報告会の中でも質保証機関から具体的な案が出されなかったため、この点が今後の課題と言えそうです。
当提言の対象となる機関はリスボン承認条約の加盟国が念頭に置かれていますが、今後、このような学術資格の承認手続きの質保証に関する議論は他の地域にも広がっていくかもしれません。

※LIREQAプロジェクト(Linking Academic Recognition and Quality Assurance)

(文責:M.M)

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