2019年7月12日、米国高等教育アクレディテーション協議会(CHEA)は、連邦教育省が所管する高等教育に関する規定の改定案についてコメントを発表した。この規定には、アクレディテーション制度に関する内容も含まれる。本案の一部について、CHEAが同年5月に示した「Position Paper on Appropriate Accountability for Accreditation and Federal Policy(アクレディテーションと連邦政策に関する適切な説明責任に関する意見書」と一致する見解を示す一方で、アクレディテーションの実態を踏まえ、懸念も指摘している。
同意見書が規定改定案と一致する点は、以下のとおり。
- 教育機関やアクレディテーション機関の改革により一層柔軟性を持たせる
- 情報公開を拡大し、ティーチ・アウトの要件(教育機関が閉鎖しても、学生が学習を継続できるよう救済措置を行う)に応え、学生を保護する
- 連邦教育省やアクレディテーション機関による(教育機関の)アクレディテーションのプロセスを簡素化する
- 条文の本質的な変更を分かりやすくする
- 教育機関とアクレディテーション機関間における紛争は、CHEAが長い間提唱していたように、訴訟に発展する前に仲裁に向かうことを求める
しかしながら、CHEAは米国議会に提出されている立法案に含まれている規定のいくつかについて懸念を表明している。
教育機関や教育プログラムに関する遡及的アクレディテーション(Retroactive accreditation)の設計
規定改定案において示された遡及的アクレディテーションの枠組※では、教育機関や教育プログラムが認可された、あるいはプレ・アクレディテーションを受けた時点において適格認定されていると訴えることができるようになっている。しかし、本来、その時点では、アクレディテーション基準を満たしていることを意味してはいない。このことをどのように一般国民に理解させるのか。一般国民が信頼できるよう、この矛盾を是正し、遡及的アクレディテーションの枠組を設計することが必要である。
アクレディテーション機関による要件を順守するために機関やプログラムに許される時間の増大
規定改定案では、アクレディテーション基準の要件を満たすための協議に4年以上費やすことが許されている。要件を満たすために数年かかる変更もあれば、それほど時間がかからないものもある。早く実施できる変更については、もっと素早く実行できることが明確になるよう規定を修正すべきである。アクレディテーション機関は、これらの変更のために必要な期間を設定できる。学生は、教育機関や教育プログラムが、要件を満たさない4年間は保護されないのだ。
規定における履修単位時間の定義の継続
高等教育界には、ここ数十年、履修単位時間について共通理解がある。一方、連邦政府の定義は、この理解を拡大も改善もしない。CHEAとしては、連邦の規定から履修単位時間の定義を取り除くべきだと考えている。
アクレディテーション機関の認定手続きの簡素化
CHEAは新しいアクレディテーション機関の認定手続きの簡素化については支持する。しかし、規定改定案では、連邦教育省による審査項目が追加されている。それは申請する機関にとって影響の大きいものであり、現在認定されている機関の審査範囲を越えている。例えば、新しい機関がアクレディテーションを実施する教育機関やプログラムの数の決定、アクレディテーションにおける判断についてのモニタリングなどがあげられる。新しい機関の認定手続きには簡素化が求められる一方で連邦教育省がこの分野に関与することは、当該機関の運営や、アクレディテーション結果の判断に関する独立性を阻害することになる。
CHEAはまた、この規定改定案が最終的には、学生を保護し、改革を前進させ、現行のアクレディテーションの強みを継続することを保証するものとなるよう、連邦教育省や他の関係機関への協力をCHEA自身いとわないとしている。
原典:CHEA(英語)