UNESCO中南米・カリブ海地域高等教育国際研究所(UNESCO IESALC)は2026年5月12日、「高等教育の国際的トレンドについての報告書―国際モビリティの中での高等教育の包摂性、公平性、質―(Higher education global trends report―Towards inclusive, equitable and quality higher education in an internationally mobile landscape)」を公表した。
本報告書の背景としては、世界の高等教育に目を向けると、この20年で学生数は2倍となり、2024年時点で約2億6900万人の学生が学んでいるが、高等教育へのアクセス、修了率、財政援助、モビリティにおいて大きな不平等がいまだに存在しているとし、本報告書の目的としては、世界の高等教育への気づきと理解の向上、政策立案や高等教育改革のプロセスの支援、ステークホルダー間での対話の促進、国内外の高等教育制度への調和的なアプローチを可能にすることとしている。なお、本報告書はUNESCOの Higher Education Policy Observatory(以下、Observatory)※1内の146か国のデータに基づき、高等教育セクターを形作る10のテーマについて分析を行ったものであり、UNESCOにおけるObservatoryを用いた国際的な高等教育のトレンドに関する初の報告書となる。
※1:40を超えるポリシー指標と広範に及ぶ高等教育統計からなる、UNESCOが公表する高等教育に関する比較可能な国際データリソース。ポリシーに関する情報は、対象国政府、UNESCOのデータ、国際労働機関(ILO)などの公的機関から得ている。また、Observatoryの内容はUNESCOの国内委員会や対象国の高等教育所管省庁への確認プロセスを経ている場合もある。
本報告書で扱っている10のテーマは以下のとおりである。
1.学習への参加と達成
2.公平性と包摂性
3.ガバナンスと法的枠組み
4.外部質保証
5.高等教育の財政
6.デジタルトランスフォーメーションと人工知能(AI)
7.高等教育における教員
8.学生モビリティのトレンド(受入れ・送り出し)
9.外国資格の承認
10.難民・国内避難民の資格承認
本稿ではこのうち、「4.外部質保証」「9.外国資格の承認」の概略について取り上げる。
■外部質保証
- 統計の対象である146か国(以下、対象国)の88%は、国の法律において、単一または複数の質保証機関の設置を定めている。国内の高等教育機関の種類や規模が大きい、または私立高等教育機関への入学率が高い国では、複数の質保証機関が設置される傾向にある。対して、高等教育機関への進学者が少ない、または公的(国立もしくは公立)な高等教育機関が大多数の国では、単一の質保証機関が設置される傾向にある。
- 対象国の73%が、質保証機関の自律性を法律で保障しているが、実際は、多くの質保証機関は限定された自律性のもとで活動している。自律性の要素には様々あり、質保証機関の運営、財政、意思決定における独立性など多岐にわたり、その実践も多様である。
- 質保証機関が効果的に機能するためには、適切な財政的・人的資源とともに、説明責任の機能(質保証の位置づけの明確化、手続きの透明性、ステークホルダーによる監視等)をともなった自律性が重要であり、これらによって一貫性のない評価、偏った評価を退ける必要がある。
- 各国の質保証モデルは多様であるが、質保証機関は、自国の課題を慎重に考慮しながら、国内外のプログラムと資格の比較可能性を確保するため、国際/地域の枠組みを意識する傾向にある。
- 地域によって質保証に関するトレンドが異なることが観察される。例えば、中南米・カリブ海諸国では質保証における国際化と地域ネットワークの発展、アジア太平洋では地域内の調和化・科学技術・資格枠組み、アラブ諸国では質保証における能力開発やステークホルダーの参画がみられる。
- サハラ以南アフリカでは、他の地域よりも質保証の取組みが緩やかである。アフリカの多くの国の質保証制度においては、資源やインフラの課題は依然として残っているものの、地域内の協力関係には進展の流れがあり、特に能力開発や評価基準の標準化における革新的な取組は期待できるものである。
■外国資格の承認
- 学生・卒業生・教員・国際的な高スキル人材・高等教育機関の連携につながる、モビリティを容易にするため、対象国の75%は、外国資格の承認についての方針を定めている※2。
- ある国で地域レベル(またはより下位レベル)の高等教育圏(regional higher education cooperation area)への参加と、資格承認の方針の策定には相関がみられる。
- 高等教育の資格承認に関する規約に批准している国の3分の2は欧州に属している。この数字は、欧州評議会とUNESCOによるリスボン承認規約の採択が他の規約より少なくとも14年先行していること、同規約を欧州外の国も複数批准していることを反映している。
- 南アジア、西アジアでは、67%の国が資格承認の方針を有しているが、UNESCOの承認規約を批准している国は今のところなく、このことは資格承認への働きかけ、能力開発や国際協力の必要性を示唆している。
- 地域規約は、特定の地域に合わせて作られており、当該地域内の学術分野のモビリティや高等教育の国際協力を促進することを共通の目的としている。この取組みを世界レベルで促進するという意味で、世界規約は地域規約を補完している※3。
- 地域規約の運用部門として設立された各国の国内情報センターのネットワークは、現在、規約の4つの地域で存在しており、各国の資格承認機関間の情報交換や相互の信頼性の確保、能力開発などのメカニズムとして機能している。
- 資格承認のプロセスの実施は各国で異なっている。資格承認当局は質保証機関とともに、オンライン、ハイブリッド、マイクロクレデンシャルによるプログラムや、デジタルツールの使用、国境を越えた教育、難民・国内避難民の資格承認等の山積する課題に直面している。
※2:例えば、日本で定められた資格承認の方針として、「高等教育の資格の承認に関するガイドライン」がObservatoryで挙げられている。
※3:世界規約、地域規約についての説明は,NIC-Japanウェブサイトを参照のこと。
原典①:UNESCO(英語)
原典②:UNESCO(英語)
原典③:UNESCO(英語)※報告書本文へのリンク
原典④:UNESCO IESALC(英語)
◎関連記事まとめ
(1)「ユネスコ総会、世界規約を採択―高等教育資格の承認を推進」
(QA UPDATES 2020/1/23投稿記事)
(2)「中南米:ラテンアメリカ・カリブ海地域の資格承認条約が改訂される」
(QA UPDATES 2019/9/13投稿記事)
(3)「「東京規約」が発効-国内外の資格を公平に扱うための日本の新しい「国際約束」」
(QA UPDATES 2018/3/15投稿記事)







