高等教育に関する資格の承認のための世界規約を採択
資格承認を拒否する際は、国や教育機関に説明責任
今後は、20か国の締結により規約発効となる
ユネスコ加盟国は2019年11月25日の総会で、高等教育に関する資格の承認のための世界規約(Global Convention on Recognition of Qualifications concerning Higher Education)を採択した。ユネスコによると、この規約は学習歴や学位を承認する際の世界共通の原則を定めており、世界中の高等教育で学ぶ2億人以上の学生の流動性を高めることが期待されている。
地域規約から世界規約へ
ユネスコは1970年代から、世界の各地域で高等教育の学習と資格の承認に関する地域規約を策定し、多くの国が締結してきた。90年代後半からは各規約の改訂が始まり、これまでに欧州地域(1997年)、アジア・太平洋地域(2011年)、アフリカ地域(2014年)、中南米・カリブ海地域(2019年)では改訂が完了している。また、アラブ地域の規約も改訂に向けて協議が行われている。
日本は2017年にアジア・太平洋地域の東京規約を締結しており(本サイト2017年12月26日掲載記事)、同規約は翌2018年に発効した(本サイト2018年3月15日掲載記事)。欧州地域のリスボン承認規約は1999年に発効しているほか、アフリカ地域のアディス規約は今回のユネスコ総会で新たに4か国が締結したことで、2019年12月15日より発効することとなった。中南米・カリブ海地域のブエノスアイレス規約は4か国の締結をもって発効となる一方、世界規約の発効には20か国の締結が必要となっている。
高等教育への平等なアクセス
地域規約は学生や研究者の地域内での流動性が対象であるのに対し、世界規約は250万人を超えると言われる地域を越えて学ぶ学生らにも範囲が及ぶ。規約では、ある国で高等教育に進学可能な学生は、制度間に実質的相違がある場合を除き、他の締約国の高等教育にも進学可能とする原則が示されている。
また、これまでは外国で教育を受けた本人が、別の国でその学習の承認を受けるために説明や証明を行ってきた。しかし、世界規約では資格を承認する権利を持つ国や各機関に、承認しない場合にはその理由を説明することが求められている。もし、自身の学習や資格が承認されなかった場合は、申請者には異議申し立てを行う権利が規約によって与えられている。さらに、外国での学習を自国の同様の学習と比較する際には、わずかな差異を探すのではなく、共通点に着目することも前提となっている。
地域規約と世界規約は併存
上記の内容は、日本が締結した東京規約も含め、すでに改訂済みの地域規約でも同様の趣旨が盛り込まれており、世界規約と地域規約は今後も並行して存在することになる。なお、大学改革支援・学位授与機構は、東京規約に基づく日本の国内情報センターである高等教育資格承認情報センターとして、アジア・太平洋地域内の学生移動の活発化を支援している。
原典:ユネスコ (英語)