学位取得につながるeラーニングを提供するための3つの提言

進学や単位認定で承認されるようなeラーニングの提供を目指し、プログラム提供者向けの提言「Academic recognition of e-learning」が、オランダで外国資格の承認を行うNufficにより2019年9月に公表された。
本書の対象となるeラーニングは、一部または全部がオンラインで提供されている、学位課程をのぞく、学位課程とは独立して存在する、あらゆる形態のオンライン教育である。高等教育機関による個人のオンライン授業やオンライン教育提供者による正規の教育制度に含まれない教育などが該当する。
本書は、eラーニングでの学習の承認に関して、プログラム提供者が留意すべき提言がまとめられており、同提言が実行されることにより、学習者はeラーニングでの学習成果を進学や単位互換の際に活用できるとされている。

なお、この提言はe-Valuateプロジェクトの一環である。同プロジェクトでは、eラーニングでの学習を承認する側が確認する観点についてまとめた大学職員向けのガイド「Practitioner’s guide for recognition of e-learning」も刊行されており(本サイト2019/1/20投稿記事)、本書はその関連で発表されたものである。

eラーニングでの学習が承認されにくい理由

本書によれば、大学などの高等教育機関は、新しい形態であるeラーニングでの学習を寛容に承認したいと考えているが、受け取った証明書を承認しないことがあるという。この理由として、一般的にeラーニングは、学習の承認に必要な情報が欠けていることが多い。その結果、証明書で欠落している情報の収集に時間がかかり、情報不足のまま手続きを進めることもあるため、懸念が拭えなかった学習は承認されない事態が起きてしまう。

本書は、eラーニングが学習者の進学支援を理念に掲げるのであれば、プログラム提供者はそれによる学習が承認されるよう、対策を行うべきであると主張する。そこで、eラーニングを標準化し、教育内容とその質に関する情報の透明化を図るための提言が下記のとおり示された。

承認されるeラーニングとなるために気を付ける3つの提言

コースに関する情報の公開

コースの内容と学習成果に関する情報に自由にアクセスできるようにすること。また、コースに変更・廃止が生じた場合も、(変更前・廃止前の学習者のために)提供者はコースに関する当時の情報を消去しないこと。迅速な情報提供に資する方法を検討すること。

欧州地域で共通の制度や枠組みの活用

学位課程外にあるeラーニングでの学習の学術承認を促進するために、各国の資格枠組(NQF)や欧州単位互換制度(ECTS)、ディプロマ・サプリメントなど、欧州地域共通の制度や枠組みであるボローニャツールを活用し、コースの学習成果に関する追加的な情報を提供すること。

ただし、正規の教育制度の外でeラーニングを提供する場合、ボローニャツールが適用できない場合がある。そのような場合には、可能であれば間接的にボローニャツールを参照することを勧めている。優良事例としてはKIRONクレジットポイントがある。ドイツのNGOであるKIRONは難民向けのeラーニングを提供しているが、そこでの学習において獲得したKIRONクレジットポイントはECTSに基づいて設定(1KIRONクレジットポイントは1ECTS)されており、大学編入後はそれらのポイントは高等教育の単位に換算されている。

eラーニングの質保証

正規の教育制度内にある資格の承認にあたり、質保証は重要な要素であり、学習プログラムは国が定める質の基準を遵守することが求められる。そのため、高等教育機関はその内部質保証において、学位課程外にあるeラーニングについても質保証の仕組みを設けること。また、国の質保証機関が行う外部質保証の対象に学位課程外にあるeラーニングを含めることができるようにすること。
正規の教育制度の外にあるeラーニングの中には、提供者が質に関する独自の基準を有するものもあるが、その基準が国の基準に準拠しているとは限らない。そうであっても、プログラム提供者がプログラムの質に関する基準と監督方法に関する情報を公開することは有用であるかもしれない。

eラーニングの質保証に関しては、米国高等教育アクレディテーション協議会(CHEA)も短期教育プログラムの質保証の中で、あらゆる形態の教育にあてはまる質の要素を発表している(本サイト2019/10/15投稿記事)。また欧州高等教育質保証協会(ENQA)もeラーニングの質向上のために学内で実施可能な取組みをまとめている(本サイト2018/11/13投稿記事)。さらに、香港学術及職業資歴評審局(HKCAAVQ)では授業の50%以上をオンラインで提供する課程に対し、通常の基準にオンライン教育用の追加資料を求める形で評価を行っている(本サイト2018年7月11日掲載記事)

※ e-Valuateプロジェクト
欧州高等教育圏におけるオンライン教育の承認のための効果的な政策への貢献を目的とした、デンマーク、リトアニア、ノルウェー、アイルランドのENIC-NARICが主導して行うプロジェクト。

原典①:Nuffic(英語)
原典②:Nuffic(英語)

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