欧州高等教育質保証協会(ENQA)は2018年6月にeラーニングの提供において質保証の観点から考慮すべき事項をまとめた報告書「CONSIDERATIONS FOR QUALITY ASSURANCE OF E-LEARNING PROVISION」を発表した。当報告書は高等教育機関および質保証機関がeラーニング※1について考慮すべき要素やeラーニングの視点からみた指標をまとめており、内部質保証の設計に役立てることができる。eラーニングの提供機関側で自らチェックできる項目は下記のとおりである。また、報告書本文には指標も掲載されている。
当報告書ではMOOCとOERを除く全てのeラーニングを対象とし、ブレンド教育も対象としている。例えば、オンラインで学位を取得できる通信教育課程やウェブアプリケーションを使って学生の習熟度を確認する科目が含まれる。MOOCとOERは、一般的にアクレディテーションやプログラムに対する評価を受けていることが少ないゆえ、当報告書では対象外となった。
なお、eラーニングは技術の進歩とともに移り変わっていくことから、eラーニングの定義は今後も変わることが想定される。
eラーニングの内部質保証として高等教育機関が取り組むべき10のポイント
- 高等教育機関は質保証に関する方針を定めること
高等教育機関は質保証に関する方針を定め、公表し、運営戦略に組み込むこと。
- プログラムの設計と認定のための手続を有すること
オンライン教育で得られる資格を明示するとともに、資格枠組※2に照らして、提供するプログラムのレベルを明らかにする。機関やプログラムのミッションや目標との関係でeラーニングの提供の必要性を示してもよい。
- 学生中心の学習、教授、評価を行うこと
オンライン教育では学生同士の対面のやり取りが不足しがちなので、提供側はそれを克服するための取組を行う必要がある。また、プログラムや教授方法のアップデートをするとともに、その支援を教員に対して行うべきである。
- 入学、進学、資格の承認、証書に関する規則をあらかじめ定め、公表すること
提供するプログラムが、職業団体や雇用主が認める他の学習と同じレベルであることを保証するために、オンラインプログラムが提供する資格に留意すること。
- 教員の能力を確保し、公正で透明性のある採用を行い、人材開発を行うこと
教授や学習における達成事項、優良事例を教員間で共有させることによって、教員の人材開発をさらに改善することができる。
- 学習と教授に適切な財政支援を通じて、学習リソースと学生支援を提供すること
コンピューターベースのシステムの取得と維持により、効率的なプログラム提供を保証すること。学生や研究者に対して、他機関が提供する活動への参加機会を提供すること。
- プログラム等の効率的な運営に必要な情報を収集し、分析すること
例えば、オンライン教育は通学教育に比べ中退率が高い傾向にあるが、学生のプロフィールや特別なニーズについて調査し、中退率や修了率について分析をする。
- プログラムの情報を含む、機関の活動についての明確かつ正確で最新の情報を公開すること
プログラムの資格の承認や教授・学習方法に関すること等についてステークホルダーに周知すること。学習から得られる価値のみならず、学習に必要な技術面についても透明性を確保することは重要である。
- 提供するプログラムについて定期的にレビューを行うこと
- 定期的に欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)に沿った外部評価を行うこと
eラーニングの評価に関する動き
eラーニングに関しては、欧州遠隔教育協会も質保証に関するマニュアルを公表している(本サイト2016/7/15投稿記事)。
香港ではオンライン教育に関する評価活動を開始した(本サイト2018/7/11投稿記事)。一方、米国高等教育アクレディテーション協議会(CHEA)はeラーニングに関わらず、新たな教育提供に関する質保証を提供している(本サイト2016/2/25投稿記事)。
原典: ENQA(英語)