原典:欧州遠隔教育大学協会(英語)
2016年4月、欧州遠隔教育大学協会(EADTU: European Association of Distance Teaching Universities)は、eラーニングに係る質評価のマニュアルである「E-xcellenceマニュアル」の第3版を刊行した。EADTUは1987年に設立された、欧州の高等教育における遠隔教育の普及促進のためのネットワークで200以上の大学が参加している。
本マニュアルは、EADTUが主体となりEUの助成を受けて実施した、高等教育におけるeラーニングの質保証の方法やリソースの開発を目的とした3つのプロジェクト:E-xcellence(2005-2006)、E-xcellence plus(2008-2009)及びE-xcellece Next(2011-2012)を基に作成されたものである。
また、本マニュアルは、eラーニングプログラムや関連する支援システムを評価する際における、ベンチマークや判断基準などを提供することを目的に作成されており、eラーニングのコース開発者や教員、その他関係者による活用が期待されている。また、巻末には、充実した用語集が付されている。
本マニュアルの構成は、戦略的マネジメント、カリキュラムの設計、コースの設計、コースの提供、職員に対する支援、学生に対する支援の6つの章から構成されている(詳細は下記の目次を参照)。
今回の第3版では、ブレンド型学習※1やソーシャルネットワークサービス(SNS)、オープン教育リソース(OER)について言及した第2版の内容に加え、昨今のMOOCsの急速な普及やeラーニングコースにおけるより体系的な学習デザインなど現在のトレンドを反映させている。さらに、まだそれほど普及していない学習分析(Learning analytics)、学習の個人化(Personalisation)、反転教授アプローチ(Flipped approaches to teaching)、仮想・遠隔ラボ(Virtual and Remote Laboratories)、デジタル・バッジ及びeポートフォリオなどのトピックも盛り込まれている。
マニュアルは、EADTUのウェブサイトから、PDF形式でダウンロード可能となっている。
マニュアルの目次
1.戦略的マネジメント | 1.1方針と計画 | |
1.2学術的な戦略におけるeラーニングの役割 | ||
1.3リソースに関する方針 | ||
1.4バーチャルモビリティ※2に関する方針 | ||
1.5組織を越えた取組み | ||
1.6 eラーニングにおける研究、奨学金、イノベーション | ||
1.7学習分析 | ||
2.カリキュラムの設計 | 2.1柔軟性 | 2.1.1時間と空間 |
2.1.2場所 | ||
2.1.3ブレンド型学習 | ||
2.1.4モジュール方式 | ||
2.1.5単位互換 | ||
2.2学術的コミュニティの発展 | 2.2.1学生対学生、学生対教員のコミュニケーション | |
2.2.2非大学関係の専門家と専門職とのつながり | ||
2.2.3研究への参加 | ||
2.3知識と技能 | 2.3.1転換可能な技能 | |
2.3.2専門と職業 | ||
2.4アセスメントの手続き | 2.4.1形成的評価 | |
2.4.2総括的評価 | ||
3.コースの設計 | 3.1教育的戦略 | 3.1.1教育的アプローチ |
3.1.2ブレンド型学習モデル | ||
3.1.3 eラーニングにおけるチューターとメンターの役割 | ||
3.1.4独立学習用の教材 | ||
3.2コース設計のプロセス | 3.2.1カリキュラムとの関係性 | |
3.2.2コンセプトと仕様 | ||
3.2.3学習と学習内容の設計 | ||
3.3教材の設計 | 3.3.1技術面の設計 | |
3.3.2ユーザーインターフェース | ||
3.3.3 eラーニングの要素と活動 | ||
3.3.4公開された教育リソース | ||
3.3.5大規模公開オンライン講座(MOOCs) | ||
3.3.6プロセス管理 | ||
3.4アセスメント | 3.4.1継続的なアセスメント | |
3.4.2試験プロセス | ||
3.5コースの評価※3と認可 | ||
4.コースの提供 | 4.1技術的な基盤 | 4.1.1システムのデザインとアーキテクチャ |
4.1.2技術的な基盤の管理 | ||
4.2仮想学習環境 | 4.2.1学習プラットフォームと学習管理システム | |
4.2.2 eラーニング教材の提供 | ||
4.2.3情報に関する要件 | ||
4.2.4 eラーニングシステムのモニタリングと更新 | ||
4.2.5オンラインアセスメント | ||
4.2.6代替となる規格 | ||
5.職員に対する支援 | 5.1技術的な面 | 5.1.1技術的な支援 |
5.1.2技術的な研修 | ||
5.2教育的な面 | 5.2.1教育的な支援 | |
5.2.2教育におけるイノベーション | ||
5.3リソース | 5.3.1情報とメディア支援 | |
5.3.2管理面での支援 | ||
5.4キャリア開発、インセンティブ、(職種に対する)認識 | ||
6.学生に対する支援 | 6.1学生支援組織 | 6.1.1機関における学生支援計画 |
6.1.2異なる学習者グループのニーズに対する支援 | ||
6.2支援職員 | 6.2.1人事計画 | |
6.2.2支援のための役割の定義 | ||
6.2.3管理面での支援 | ||
6.3技術的な支援 | 6.3.1オンラインサービスの利用 | |
6.3.2専門家による技術的支援の管理 | ||
6.3.3オンラインの技術的支援の利用 | ||
6.4教育学的な支援 | 6.4.1学習スキルの開発に関するアドバイスとガイダンス | |
6.4.2 eラーニングスキルの開発のための支援 | ||
6.5支援のためのリソース | 6.5.1コースの選択に関するアドバイスとガイダンス | |
6.5.2図書館のリソース | ||
6.5.3学習者のコミュニティ | ||
6.5.4学生支援の提供のための学習センターの役割 |
※1:ブレンド型学習(blended learning)従来型の教育・学習とeラーニングを組み合わせる手法。典型的には対面式のやりとりとオンライン学習の組合せが用いられる。
※2:バーチャルモビリティ(virtual mobility)物理的に移動する代わりに情報・コミュニケーション技術を利用することにより、学生が他機関提供のプログラムを受講できるようにすること。
※3:評価(evaluation)、ここで示されている評価は、教員や機関が活用するために、教授法や学習要素、学習活動の効果について査定することを指している。一方、アセスメントは個々の学生の学習の進捗を測る活動を指している。