英国:OfSによる「教育の卓越性の評価(TEF)」の動向 ―次回TEF実施に向けた制度の見直し案が公表―

英国イングランドの高等教育機関の規制機関であるOffice for Students(OfS)は、2026年6月11日、同機関による質の規制に関する方針の見直し案(Consultation outcomes: Future approach to quality regulation)を公表した。OfSが実施する「教育の卓越性の評価(Teaching Excellence Framework: TEF)」の見直し案を中心とした内容となっており※1、2、2027年に開始が予定されている次期のTEFからOfSに機関登録されているすべての高等教育機関が評価の受審対象となること、「金」、「銀」、「銅」、「要改善」で表される段階評価について、総合判定(overall rating)は廃止し、「学生の経験」及び「学生の成果」からなる2つの観点別の段階判定のみとすること、これまで「金」、「銀」、「銅」いずれの称号も最低基準を上回る場合に付与されていたところ、今後は「金」と「銀」のみを最低基準を上回る場合の判定とし、「銅」については最低基準を「満たす」場合のものとして用いる一方で、授業料や学生数の上限設定の制限等の措置につなげる可能性をもたせるなど、従来のTEFの制度から評価の対象や結果等の方針に変更が生じる方向性が示された。

※1:今回発表された見直し案は、単なるTEF改定案ではなく、OfSが行う質の規制システム全体の組み替え案だが、本稿ではTEFに関する変更点を中心にまとめる。
※2:前回(2023年)のTEFについては、後段を参照。

はじめに -英国イングランドの大学評価制度とTEF-

 英国はイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの各地域で独自の大学評価制度を有している。イングランドでは、高等教育機関の規制(regulation)を担う公共機関であるOfSが、2017年高等教育・研究法(Higher Education and Research Act 2017)に基づく「高等教育機関登録制度」を運用しており、大学を含む高等教育機関が政府からの公的資金を受ける、また学生ローンを学生が受給するためには、これに登録されることが必要となる。OfSは、新規登録時にはOfSが定める登録要件に基づく詳細な審査を実施する一方で、登録された機関に対しては、学生数の増減や卒業率等の指標を確認する簡素なモニタリングを実施し、登録要件に抵触するリスクが高まったと判断される場合には詳細な調査を実施する(リスクベースアプローチ)。

 上記に加えて、OfSは、各高等教育機関における教育・学習・学生の成果の卓越性を評価し、教育活動の改善を促すことを目的として、イングランドの高等教育機関を対象に、「金(Gold)」、「銀(Silver)」、「銅(Bronze)」、「要改善(Requires Improvement)」で段階評価する「教育の卓越性の評価(TEF)」を実施している(2016年に教育省によって導入。学士課程のみを対象に機関単位で実施)。TEFの受審は任意だが、2019年8月よりOfSの機関登録制度の登録要件のひとつ(B6)となったことから、一定の条件(イングランドの大学、カレッジ/500人以上の学部生が在籍している等)を満たす機関は受審が必須となった。
 受審した機関は、「金」、「銀」、「銅」の色で格付けされ、称号が与えられる(「銅」に満たなかった場合は「要改善」)。なお、格付けは、観点別評価(aspect ratings。「学生の経験に関する判定(student experience rating)」と「学生の成果に関する判定(student outcomes rating)」の2つ)と、観点別評価に基づく総合判定(overall provider rating)により行われる(ともに4段階)。
 TEFの格付けは、高等教育機関の評判に影響を与え、学生の進路選択にあたり情報を提供するものであることから、優れた教育へのインセンティブを与えるとされている。また、色を問わず、TEFの称号を獲得した教育機関は、基準額を超えて上限額まで授業料を引き上げることができる。

 なお、イングランドを含めた英国の各地域では1990年代より、質保証機関である英国高等教育質保証機構(The Quality Assurance Agency for Higher Education: QAA。非政府機関)が教育の質の向上(quality enhancement)を目的とする大学評価を実施してきた。2018年の高等教育機関登録制度開始後は、QAAはOfSから機関登録審査の一部を受託する形でイングランドの大学評価制度に関与していたが、2023年に受託関係を終了した(この経緯については、後段で紹介している過去の本サイト投稿記事を参照)。

 現在QAAは、会員大学(約280校)等に対し、欧州の質保証基準(ESG)※に基づく受審任意の機関別評価、質保証に関する各種のコンサルティングサービスやセミナー、大学等が関与するテーマ(大学国際化、アカデミック・インテグリティ、教育におけるAI利用等)に関する大学向けツールの開発や情報提供等、各種の質保証業務を国の制度とは別に展開している。

※ ESG (Standards and Guidelines for Quality Assurance in the European Higher Education Area)とは、欧州高等教育圏内における内部質保証(ESG第1部)、外部質保証(ESG第2部)及び質保証機関(ESG第3部)に関する基準とその運用のためのガイドライン。高等教育機関及び質保証機関双方にとって共通の参照点となる。国・地域間の違いを認めた上で共通の質保証基準を設けるもので、各質保証機関の多様性を尊重し、策定されている(NIAD-QE「高等教育に関する質保証関係用語集」オンライン版からの抜粋)。(参考:ESGの日本語訳版(NIAD-UE、2016年1月)。また、ESGの原典(英語)は、ENQAウェブサイトからアクセスできる)

≪補足≫
OfSは英国の準政府機関(Executive non-departmental public body)のひとつ。主に政府予算で運営され、組織の変更や廃止等重要決定については所管省(OfSについては英国教育省)が関与するが、日常業務の遂行に当たっては政府の指揮・監督を受けないとされている。主な機能は、①イングランドの高等教育機関の規制、②教育の卓越性の評価(TEF)、③高等教育へのアクセスの平等化、④高等教育機関の登録、⑤学生の保護、⑥学生への情報提供
(以上、OfSウェブサイト及び田中正弘「イギリスの高等教育政策決定過程と首相官邸」(『高等教育政策決定過程の変容と高等教育政策』、広島大学高等教育研究開発センター 高等教育研究叢書159号(2021年3月),pp.109-121)より)。

*以上、OfSウェブサイト、QAAウェブサイト、『英国の高等教育・質保証システムの概要(第3版)』(NIAD-QE,2020年3月)、機構国際課まとめQA UPDATES掲載記事、林 隆之「英国における高等教育機関の質保証とTEF」(中央教育審議会大学分科会教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ(第4回)資料2-1(2025年7月3日開催))等を参考にまとめた。

≪参考≫
近年のイングランドの質保証制度を巡る動きに関する過去の本サイト投稿記事
・英国QAAがイングランドにおける新たな大学評価を開始―ESGに基づく選択的質レビュー(2024年7月12日投稿)
・質の高い教育提供のための持続的な政府財政支援を―質保証機関QAAが提言(2024年5月17日投稿)
・イングランドの質保証制度を巡る動き―学生局による機関登録制度に関するQAAの新たなサービス(2023年12月8日投稿)

■前回(2023年)のTEFの評価方法

●「学生の経験」、「学生の成果」の2つの観点を評価した上で、全体を総合評価。
1.「学生の経験(Student Experience)」:
学業経験と成績評価(Academic experience and assessment)、学習環境、学業支援、学生参画(Resources, support and student engagement)
2.「学生の成果(Student Outcomes)」:
良好な成果(Positive outcomes)、教育的向上(Educational gains)

※TEF2023の評価基準の詳細については、Regulatory advice 22 Guidance on the Teaching Excellence Framework (TEF)2023. OfS. 7 October 2022. のAnnex Aを参照。
●評価は、次の3つの情報に基づいて実施。
1.高等教育機関が提出する文書
2.学生が提出する資料
3.OfSが公表しているTEF指標(全国学生調査(NSS)、継続率(高等教育資格・学位の取得に向けて在籍継続した学生の割合)、修了率(高等教育資格・学位を取得した学生の割合)、進路進展指標(修了後の管理職・専門職への就職、進学、その他良好な進路が確認された資格・学位取得者の割合))。

※TEF2023の指標の詳細については、Regulatory advice 22 Guidance on the Teaching Excellence Framework (TEF)2023.のPart 5を参照。
●評価は、専門家パネル(学生の委員を含む)が上記をもとに総合的に行う。
●評価結果は、次の4段階で表される。2つの観点をそれぞれ評価し段階判定を付与した上で、その結果をもとに総合判定の格付けが行われる。
・金:学生の経験や成果が卓越している(outstanding)
・銀:学生の経験と成果の質が非常に高く(very high quality)、卓越している特徴も一部みられる
・銅:学生の経験と成果の質が高く(high quality)、非常に質の高い特徴も一部みられる
・要改善:評価を行ったが称号は与えられなかった。称号が与えられるためには改善が必要

※TEF2023の段階判定の付け方については、Regulatory advice 22 Guidance on the Teaching Excellence Framework (TEF)2023.のAnnex Bを参照。

■見直し案で提案された前回TEFからの主な変更点

・OfSに登録されているすべての高等教育機関が受審対象。
(これまでは機関登録済みの教育機関で、一定数を超える学生が在籍する機関が対象)
・「金」、「銀」、「銅」、「要改善」で示される段階評価について、全体の総合判定は廃止し、「学生の経験」と「学生の成果」の観点別判定のみとする。
・4つの段階判定のうち「銅」については、これまでのように最低基準(baseline)を上回る(卓越性)場合ではなく、最低要件を「満たす」ものとして付与。
(「金」、「銀」はこれまで同様、基準を上回る場合に用いる)
・「銅」に格付けされた機関については、授業料や学生数の上限設定や短いスパンでの再評価、学位授与権申請資格の制約等、OfSよる制裁的措置につながる可能性がある。

■OfSによる質の規制に関する方針の見直しの背景

現行のイングランドの高等教育機関の質保証は、OfSが管理する高等教育機関登録制度における登録審査及び登録後のモニタリング(リスクの可能性がある機関に対するアセスメント含む)を通じた最低基準の確保と、同じくOfSが行うTEFによる段階評価という二層構造によって整理されている。

OfSが定める高等教育規制枠組み(Regulatory framework for higher education in England)で定められた機関登録要件(Conditions of registration)は、イングランドの高等教育機関としての法的拘束力を持つ最低基準として機能しており、特に教育の質・水準に関わる要件B群※3のひとつであり、学生のアウトカムに関する要件であるB3(Student outcomes)のうち、継続率(continuation)、修了率(completion)、進路(progression)等の指標は登録審査において特に重要とされている。他方、TEFは、これら指標を含む各種のデータ(全国学生調査(NSS)等)を用いつつ、「学生の経験」及び「学生の成果」の2つの観点について、最低基準を上回る教育の卓越性を「金」、「銀」、「銅」、「要改善」の格付けで示す枠組みとして運用されてきた。

一方、OfSの業務については、高等教育を巡る情勢の変化を背景に様々な議論がなされてきた。例えば、2024年7月に公表されたOfSに対する独立のレビュー※4において、OfSは最低基準を満たさなかった高等教育機関を取り締まる規制機関から、高等教育機関による改善と質の向上を促すことを可能とする規制機関に移行すること、そのために機関登録におけるアセスメントとTEFをより統合する仕組みとし、高等教育機関に一層の質の改善・向上を促すような評価の仕組みとすべきことが提言された。また、現行のTEFは機関登録されている高等教育機関のうち、学生数等一定の条件に当てはまる機関に事実上の受審義務を課していることから、今後は全登録機関を対象とすることも提言された。

こうした提言を受けて、OfSは、次回TEFの実施に向けて2025年9月から同年12月にかけて、OfSによる今後の質の規制に関する方針について、英国高等教育のステークホルダー(高等教育機関の学生、教職員、研究者、雇用者、Universities UK、Russell Group等大学団体等)に対してコンサルテーションを行った。今回公表された見直し案はその結果を踏まえたものであり、OfSは今後より詳細な案を策定した上で、2026年秋をめどに、案の実効性を含めた検証のために2回目のコンサルテーションを行う予定としている。

※3:OfSが管理する高等教育機関登録要件(Conditions of Registration)は大きくA〜Gに区分されており、その中で教育の質・水準に直接関わるのが Condition B群であり、学生に提供される教育が適切な質を有し、学位等の水準が確保されていることを求める中核的要件群として、登録審査において特に重要な基準とされる。また、登録後のモニタリングではリスクの可能性がある大学等に対するアセスメントが行われる。機関登録要件の詳細は、Regulatory framework for higher education in England. OfS. November 2022. のAnnex Aを参照。
※4:Fit for the Future: Higher Education Regulation towards 2035, Independent Review of the Office for Students. Department for Education, 26 July 2024. なお、この報告書以前にもOfSの課題を扱った報告が公表されており、2023年9月に公表された英国議会上院による報告書は、一次情報(証言)に基づいてOfSの課題を具体的に明らかにしている(Must do better: the Office for Students and the looming crisis facing higher education. Industry and Regulators Committee, House of Lords, 13 September 2023.)。

■新TEF案の概要(一部、前回TEFで取り入れられている事項を含む)

1.より統合性の高い評価システムへ

・OfSが行う高等教育機関の質のアセスメント全体の統合性を高めることで、高等教育機関に質の向上を促し、高等教育機関ごとの質の違いが明確に分かるような評価システムとする。

・機関登録要件のB3(学生の成果に関する要件)の内容を簡素化し、次回のTEFにおいて簡素化したB3を基準のひとつとして用いる。

・TEFを「欧州の質保証基準とガイドライン(ESG)」との整合性のある仕組み※5に変えていくことを引き続き検討する。併せて、ESGに基づく質保証を行う外部質保証機関が登録されるEQAR(欧州質保証機関登録簿)へのOfSの申請を、適切な時期に行うことについても検討を進める。

※5:ESGに基づく外部質保証の要素は様々あるが、代表的なものとして、外部質保証における学生の参画(評価委員として学生が参加する等)や、外部質保証の独立性や透明性(ピアレビューの原則、評価結果の公表等)がある。

2.評価対象

・OfSの高等教育機関登録簿に登録されているすべての教育機関が周期的にTEFを受審する。

・次回TEFの1巡目では学部課程を対象とし、2巡目から大学院課程も加わる。また、「見習い(apprenticeship)」制度※6も対象となる。

※6:英国の「見習い(apprenticeship)」制度:大学・カレッジと企業の協力の下、16歳以上の学生を対象とする学業と就労を組み合わせた制度。学生は就労経験を積みながら通学やオンラインで学習し、特定の職業に必要なスキルや知識を習得する。学位取得を目指す課程もある。

3.評価の実施主体

・評価の専門パネルには学術専門家と学生評価者が参画し、OfSがサポートに入る。「学生の成果」の評価においては、可能な限り学生からの直接のインプットを取り入れるとともに、専門パネルにおける学生評価者の割合を増やす。

・段階判定の最終決定におけるOfSの関与の度合いについて、さらに検討する。2回目のコンサルテーションにおいて、誰が評価を行うのか、そして誰が評価結果の決定を行うのか、また、ここでのOfSの役割について大学等の意見を聞く。

4.評価の観点

・前回TEFと同様、「学生の経験」と「学生の成果」の2つの観点から評価する。評価においては、OfSの機関登録要件のひとつである要件Bを用いる。
◇「学生の体験」:
ー教育の内容と提供の質、成績評価、学習支援、学習資源・環境、教育への学生の参加が学生にどの程度優れた教育体験を提供しているかに着目する。
ー機関登録要件BのサブカテゴリーのうちB1(学業経験)、B2(リソース、支援、学生参画)、ならびにB4(成績評価、学位授与)の「効果的な成績評価」を基準として用いる。
ー高等教育機関が作成する説明資料、拡充された全国学生調査(NSS)の指標、学生が作成し学生から直接提出された資料に基づいて評価する。

◇「学生の成果」:
ー学生の成果の評価に、①ベースライン評価と②パフォーマンス評価の2つの要素を設定する。
①ベースライン評価:学生の学習成果に関する最低基準であるB3を高等教育機関が満たしているかどうかを評価する。学生が在学中及び卒業後にどの程度成果を上げることができたか、継続率(continuation)、修了率(completion)、修了後の学修の継続に関する取組や雇用成果(employment outcomes)に着目する。教育機関が学生のパフォーマンス向上のために講じた取組の成果を実証できるかどうかも評価の対象となる。
②パフォーマンス評価:ベンチマークされた学生の成果(進級状況、高等教育で学んだことを活用できているかという学生自身の評価、給与データ等)に基づくパフォーマンス評価。コンテクストを考慮しつつ、ここでも学生のパフォーマンス向上のために講じた取組やもたらした効果のエビデンスが考慮される。

・NSS等関連するデータが十分でない場合は、当該観点の評価は行わない(すべて機関の場合に両方の観点の判定が付くとは限らない)。

5.評価結果の表し方(rating)

・高等教育機関からの意見を踏まえ(後述)、総合判定(overall rating)は廃止し、観点別の判定(「学生の経験」、「学生の成果」)のみとする。
◇「金」及び「銀」:当該観点について、最低基準を上回る高いレベルの質であることを示す(前回TEFから変更無し)
◇「銅」:当該観点について、最低基準を満たしていることを示すものに変更(これまでは「銅」も最低基準を「上回る」場合に付与されていた)
◇「要改善」:最低基準を満たしていない懸念があり、改善が必要であることを示す(前回から変更なし)

・段階判定の結果が当該高等教育機関にネガティブな影響を与える可能性がある場合は、結果検討の過程でOfSと教育機関とのコミュニケーションを図るステップを入れることを検討する。

・高等教育機関からOfSへの評価結果への意見申立ては、判定が「銅」または「要改善」の場合に限られる。

6.評価結果の影響

・「金」、「銀」の判定を受けた高等教育機関については、国からの財政支援(特定のfunding streams。具体は不明)への申請資格への接続が検討される。

・「銅」の判定を受けた機関は、OfSによる追加の規制調査の対象となりうるほか、授業料や学生数の上限設定制限や、より頻繁な再評価、学位授与権申請資格の制約(詳細調査中)等につながる可能性がある。「銅」及び「要改善」の評定を受けた機関に対し、自動的にペナルティーが科されるのか、各機関の状況に応じて科されるのかは今後検討される。

・TEFの判定結果を機関登録後のモニタリングに活用する。低い判定を質の要件へのコンプライアンスに対する懸念のシグナルととらえ、OfSによる適時の集中的な確認(scrutiny)が行われる(※少なくとも新TEFの1巡目では、「要改善」が懸念のシグナルとして扱われる予定)。

7.評価実施スケジュール等

・次回TEFでは、3年以内にすべての評価対象機関の評価を行う。ただし、新設または小規模の教育機関はNSSや学生の成果に関するデータが不十分であることがあり、その場合は2巡目の初年度まで期間を延長し教育機関が十分なデータを蓄積できてから行う。また、前回のTEF(TEF2023 )でいずれかの観点の判定が「銅」または「要改善」と評価された機関から先に評価する。

・教育の質の低下リスクを高める要因を整理した「リスクモニタリングツール」を今後策定し、受審サイクルの間にOfSによる介入が必要かどうかを判断する指針とする。

■コンサルテーションにおける高等教育機関からの主な意見及びOfSの見解

・次回TEFにおいても「学生の経験」と「学生の成果」の2つの観点を評価することについては高等教育機関からおおむね賛同が得られた。

・OfSが設ける評価指標に加えて、高等教育機関の多様性や公平性に配慮した評価とするために、機関ごとのコンテクストや機関独自のエビデンスを一層重視した評価の実施を求める声が寄せられた。

・OfSは当初、前回同様、観点別判定と総合判定の両方を行うことを提案したが、観点別評価における低いほうの判定に基づいて総合評価の結果を決めるというOfSの手法に高等教育機関から疑問が呈され、大多数の機関が総合評価の継続に否定的だった。

・「銅」が付与される要件を「基準を上回る」から「基準を満たしている」に変更することについても懸念が示された。「金」、「銀」、「銅」は差があるもののメダル(称号)であって、これまでいずれも最低基準を上回ることを示すポジティブな印として学生や社会に認知されてきたところ、「銅」だけ付与要件を変更することで混乱が生じるのではないか、また、基準を満たしていることの印でありながら、授業料や学生数の制限等の措置につながる可能性を「銅」に持たせるという関係性への疑問が呈された。

・高等教育機関からの上記の意見についてOfSは、「銅」の付与要件を変える方向性は維持したいとしている。次回から全登録機関がTEFの対象となり、周期的なTEFを通じて質の最低基準を満たすか否かを確認する必要があることから、「銅」にその役割を担わせると説明。また、そうした位置づけの「銅」が存在することで、機関がより高いレベル(「金」、「銀」)を狙って教育の質の向上に取り組むインセンティブになりうるとも説明している。

・全登録機関をTEFの受審対象とするOfSの案については、一部の小規模教育機関等から、TEFへの受審に伴う経済的・事務的負担が割に合わない可能性があり、受審は任意または簡素なものにすべきとの意見があった。これに対しOfSは、小規模校等についてはデータが不十分となる可能性等は配慮するが、すべての学生が質の高い教育から恩恵を受ける機会を持つべきであり、イングランドの質保証制度における評価の負担は教育機関の運営コストの一部として、すべての機関が等しく受け入れるべきであるとの見解を示している。

■質保証機関の反応

1回目のコンサルテーションを踏まえたTEFの見直し案について、英国の高等教育関係者からの様々な反応がみられる※7。ここでは、質保証機関QAAのEve Alcock広報・渉外部長のコメントを紹介する。

・OfSが、いくつもの高等教育機関の懸念に耳を傾けたことを歓迎する。総合判定は廃止すること、教育の質のエビデンスを示すのは高等教育機関や学生自身とすること、小規模の機関に配慮し評価において柔軟性をもたせること、これらはすべて多様性に富む英国の高等教育セクターが今後TEFを受審するにあたり必要である。教育機関の文脈に応じた評価の実施に向けたポジティブな一歩であり、これらが新たなTEFに盛り込まれることを希望する。

・TEFの評価結果の決定におけるOfSの関与に関する疑問についてさらに検討するということ、また、適切な時期にOfSが欧州高等教育質保証登録簿(EQAR)に加盟するというコミットメントを心強く思う。質保証におけるピアレビューの原則の重要性と、質保証のシステムが国際的に認知・理解されることは、イングランドの高等教育セクターの発展に不可欠である。TEFの格付けを財政的なペナルティーと結びつけることについては、それが学生数の制限によるものであれ、格付けを将来の学費引き上げの制限に結びつけるものであれ、それによって意図しない結果が生じることを懸念する。

・OfS及び政府が今後のコンサルテーションにおいて高等教育機関セクターの懸念にしっかり耳を傾け、新たなTEFにおいて、正当な根拠がある場合には質の低い教育から学生を保護することが確保されるとともに、制裁的措置によって大学等が教育の質を自ら改善する能力を失うことにならないことを希望する。

※7:今回のコンサルテーションの対象となった次回TEFの案については、大学からの批判的見方もなされている。例えば、高等教育を巡る話題について英国の大学の教職員等の議論が投稿されるウェブサイト(Wonkhe)に2025年12月に掲載された論考によると、「高等教育機関が質の最低基準(機関登録の要件B3)を満たし、かつ、「銅」に格付けされた場合、大学による質の改善に必要なリソースが授業料や学生数の制限を通じて奪われ、結果、質の最低基準を満たしているにも関わらず教育機関の衰退につながる」、「新たなTEFによって教育に必要なコストが侵食されるとしたら、TEFはそれが測ろうとしている卓越性の試みに失敗する」と述べている。

原典①:OfS(英語)
原典②:OfS(英語)
原典③:OfS(英語)
原典④:OfS(英語)
原典⑤:UK Government(英語)
原典⑥:QAA(英語)

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