ムーク(MOOC)とは※PDF版
目次
- ムークとは
- 「ムーク」の意味
- 大学のオンラインコースとの比較
- ムーク登場の背景
- オープン教育
- 大学以外の組織によるOCW
- ムークの運営と授業提供
- ムークのメリット
ムーク(MOOC)とは
1.ムークとは
1-1. 「ムーク」の意味
ムーク=MOOC (Massive Open Online Course):「大規模公開オンライン講座」と呼ばれることが多い。定まった定義があるわけではないが、数あるムークのウェブサイト(プラットフォームと呼ばれる)で共通して見られる要素としては以下のものがある。
1-2. 大学のオンラインコースとの比較
大学によっては、オンラインによる授業を提供しているところもある。これらのオンラインコースとムークを比較すると下図のようになる。
ムークは個々の大学のウェブサイトではなく、プラットフォームと呼ばれるサイトで科目が提供される。受講者はどこかの教育機関に在籍をする必要はない。基本的にムークの科目を修了したからといって単位は取得できない。例外として、特定の大学では、いくつかの特定のムーク科目の単位認定、あるいは学修経験としての単位認定が行われる場合もある。ムークの修了率は低く(5~10%程度とも言われている)、受講者は講義修得を目指しているとは限らない。例えば、既存の大学がムーク科目の一部のコンテンツを、開講している正規科目の補助教材として用いているところもある。
2.ムーク登場の背景
2-1. オープン教育
インターネットを介した教育の提供は以前から行われてきた。OERと呼ばれるオンライン上に公開されているコンテンツが、誰でも質の高い教育を受けるために重要であるとして、以前から注目されていた。2012年にはUNESCOが「パリOER宣言」を採択し、各国政府にOERの有益な使用を呼びかけた。
OERをさらに発展させたものとして、高等教育の教育コンテンツの無償公開活動であるOCWが挙げられる。OCWの特徴として、大学が主体となり講義をオンライン上に提供していることが挙げられる。
(定義出典:European Commission, 2013)
2-2. 大学以外の組織によるOCW
大学以外の組織によるOCWでは、その提供内容に多様性が生じ、より多くのユーザーを引きつけた。こうした大学以外の組織によるOCWの存在が、ムークの登場へとつながっていったとみられる。
2-3. ムークの運営と授業提供
ムークは企業による運営、または教育機関によるコンソーシアムによる運営の2パターンであることが多い。主なプラットフォームについては下図を参照。
ムーク授業の提供方法としては、提供者(教授個人や大学など)とプラットフォームが提携しコンテンツを開発していくケースが主流である。しかし、COURSEsiteやmooc.orgのように、より簡単にムーク科目を開講できる仕様も開発されている。
Coursera | 米国 | https://www.coursera.org/ (※東京大学が講義を提供) |
COURSEsite | 米国 | https://www.coursesites.com/ |
edX | 米国 | https://www.edx.org/ (※京都大学が講義提供予定) |
Futurelearn | 英国 | https://www.futurelearn.com/ |
Iversity | ドイツ | https://iversity.org/ |
Khan Academy | 米国 | https://www.khanacademy.org/ |
NovoEd | 米国 | https://novoed.com/ |
NPTEL | インド | http://nptel.iitm.ac.in/ |
OpenupEd | 欧州 | http://www.openuped.eu/ |
Open2Study | 豪州 | https://www.open2study.com/ |
P2PU | 米国 | https://p2pu.org/en/#moocs |
Schoo | 日本 | http://schoo.jp/ |
Udacity | 米国 | https://www.udacity.com/ |
Udemy | 米国 | https://www.udemy.com/ |
Veduca | ブラジル | http://www.veduca.com.br/ |
(CIQG and Daniel, 2013などを元に作成)
2013年10月に、日本の高等教育を国際的に孤立化させないとの観点から、日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)が発足している。
3.ムークのメリット
(重田, 2013などを元に作成)
教育を提供する側と教育を受ける側、それぞれの主なメリットは上図のとおりである。
これ以外にも、提供側は学習者に関する大量のデータ取得、学ぶ側は世界トップレベルの講義へのアクセスなども魅力に挙げられる。
参照記事
- CIQG and Daniel 2013, Commentary on MOOCs, The Newsletter of the CHEA International Quality Group, September, Vol. 3, pp. 1-2
- European Commission 2013, European higher education in the world: Communication from the Commission to the European Parliament, the Council, the European Economic and Social Committee and the Committee of the Regions, COM(2013) 499 final, p.7, 2013年7月16日アクセス
- 重田 2013,MOOCsのインパクトと高等教育の未来, 2013年9月2日アクセス
参考情報
- 船守 2013, 世界で広がる無料のオンライン講義とは, リクルート カレッジマネジメント, 181 / Jul – Aug, pp. 36-41
- 古賀 2013, MOOCとOCWの違い, eラーニングかもしれないBlog, 2013年6月2日, 2013年9月2日アクセス
- 大学評価・学位授与機構 (2013) 大学評価フォーラム「『学び』からみる高等教育の未来」報告書, Demillo, R. A., 「アベラールからアップルへ-米国の大学の運命-」 14-29
- United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization (2013) What is the Paris OER Declaration?, 2013年10月21日アクセス