ノルウェー:教育課程の設置認可制度を大改革!

課程の新設時は教育機関自らが外部評価を実施

質保証機関(NOKUT)がこの結果をもとに適格認定を付与

NOKUTは既存の課程の質保証をより重視する方針

ノルウェーで中等後/高等教育の質保証を行うNOKUT*は、2018年10月5日に新しい適格認定(アクレディテーション)制度の案を公表し、パブリックコメントの募集をはじめた。現在同国で新たに中等後/高等教育課程を設置する際は、NOKUTによる第三者評価を通じた適格認定が必要である。認定は無期限のため、適格認定の審査は課程の新設時のみに行われる制度である。

公表された新制度案では、課程を設置する教育機関が自ら外部評価を行い、NOKUTはその結果をもとに認定付与を判定する。2019年には一部の課程に対して新方式を試験的に導入する予定となっている。
*NOKUT: Nasjonalt organ for kvalitet i utdanninga/ the Norwegian Agency for Quality Assurance in Education

現行の質保証制度

改革前の現行制度でノルウェーの中等後/高等教育機関が新たに課程を設置する場合は、自己適格認定機関*を除き、NOKUTによる適格認定が必須となっている。2017年は74の職業教育課程と44の学術教育課程がNOKUTの適格認定審査を受けた。NOKUTは課程に設定された学習成果が実現可能かどうかを判断して、適格認定の付与を決定する。認定は無期限で、認定により政府からの財政支援が受けられるようになる。
*自己適格認定機関(self-accredited institution):新たに課程を設置する際の第三者による審査が免除されている教育機関。ノルウェーの場合は、設置できる課程の分野や授与資格のレベル(学士/修士/博士など)が細かく設定されており、これに該当しない課程の設置ではNOKUTの適格認定が求められる。オーストラリア(p44)、香港(p6)、マレーシア(p10)などの他の国・地域でも見られる制度(リンクはいずれもNIAD-QE国際課作成資料)

日本では大学等の機関や学部の設置認可とフォローアップは国(文部科学省)が行っている。一方で、質保証機関が新設される機関や課程の審査を行う例として、オーストラリア(p40)、香港(p4)、オランダ(p20)(いずれもNIAD-QE国際課作成資料)などが挙げられる。

新制度でのNOKUTの役割

今回の制度変更が確定すれば、NOKUTは新設される課程の外部評価結果を確認する専門家委員会を組織し、その結果を受けて適格認定を付与することになる。一方で、教育”機関”の設置審査や、適格認定を得てから一定の期間(例えば、最初の卒業生を出した後など)が経過した課程のフォローアップ審査(audit)、後述するリスクベース評価はNOKUTが従来通り継続する。

リスクベース評価

NOKUTによると、制度変更の趣旨として、既に適格認定を与えた課程の質保証の重視を挙げている。現在、ノルウェーにある既存の中等後/高等教育課程は、NOKUTによるリスクベース評価を受けている。リスクに注目する評価では、一般的に、質が悪化するリスクが低い群には簡易な評価や長期間の認定を行う一方、高リスク群には重点的な審査が行われる。

NOKUTのリスクベース評価では、政府が収集したデータをもとに、教育の質が悪化する潜在的リスクを毎年計算し、問題のある課程を抽出している。2017年は200課程に一定以上のリスクが算出され重点的な調査が行われ、そのうち24課程に対しては文書による問合せも実施された。

同様の手法は他の国でも採用されており、オーストラリアのTEQSA(本サイト2014年3月31日掲載記事)アメリカのWASC(本サイト2017年11月15日掲載記事)でもこうしたリスクに応じた重点的な評価が行われている。

参考:ノルウェーの中等後/高等教育

ノルウェーの中等教育以降の教育は、職業教育(中等後教育)と学術教育(高等教育)に分けられる(表1参照)。前者は半年から2年間で実習を含む課程、後者は学士・修士・博士の学位課程からなる。どちらの教育セクターも適格認定を担当するのはNOKUTである。

表1:ノルウェーの職業教育と学術教育セクター間比較(2017年)
  職業教育 学術教育
修業年限 半年~2年 3年(学士)→2年(修士)→3年(博士)
学生数比率 全体の5% 全体の95%
学生の男女比 男性6割 女性6割
機関数 80 49
公立機関の割合 50% 85%
適格認定率 60% 75%
自己認証権のある機関数 3 32
NOKUT適格認定の

申請件数(プログラム別)

74 44

2018年3月の当機構国際課によるNOKUTへの訪問調査より

原典①:NOKUT(ノルウェー語)
原典②:NOKUT(ノルウェー語)
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