ジョージア州立大学機構が準学士相当のネクサス学位を授与へ
特定の職業分野での学生のコンピテンシーを開発
アメリカで注目を集める学士未満の高等教育
アメリカのジョージア州立大学機構は、新しい学位「ネクサス学位(Nexus Degree)」を創設した。機構が運営する州立コロンバス大学では、2018年秋からネクサス学位課程が始まっている。この課程は中等教育修了者を対象とした60単位相当のもので、州内で人的需要の高い産業向けの人材育成を目指したカリキュラムが組まれている。
類似の高等教育としてはすでに準学士(Associate Degree)がアメリカ全土で授与されている。学士課程への編入が可能な準学士の場合、必要な60単位のうち42単位はアカデミックな学位取得のためのコアカリキュラム、18単位は学士課程前期として必要な内容とされている。
一方、ネクサス学位も取得に60単位が必要で、うち42単位分は一般教育が行われる。残りの18単位のうち、特定の職業分野でのコンピテンシーと能力に重点を置いた経験を積むことで6単位、課程後半に出される課題(coursework)の結果で12単位が与えられる。このように、産業界と密接に関連した課程内容であることが、ネクサス学位の大きな特徴である。
州立コロンバス大学は映画製作専攻のネクサス学位課程を2018年秋から開始し、翌2019年からはフィンテックでのサイバーセキュリティ専攻にも対象を広げている。一方、同機構理事会は州立アルバニ―大学に対しても、機械学習とデータ分析の2分野におけるブロックチェーンに関するネクサス学位課程の開設を承認している。
注目を集める「学士未満」の高等教育
アメリカでは社会人として必要なコンピテンシーを身に着けるための教育が拡大しつつある。ウェスタンガバナーズ大学をはじめ、社会人学生を対象にしたコンピテンシーにもとづく教育(CBE)(本サイト2014年10月31日掲載記事)を行う大学も増えている。CBEは基本的にオンラインで提供されており、1日の隙間時間を使い、自分のペースでの学習が可能となっている。また、従業員に対して学習支援を行う企業もあり、スターバックス、アンセム、FCAなど各社は従業員が無償で学位を取得できる制度を設けている(本サイト2019年9月12日掲載記事)。
高等教育の中でも、学士の学位に満たない短期の高等教育は特に注目に値する。2019年7月にアメリカのDVP-PRAXISが発表した調査報告では、高校卒業後2年以内に得られる資格が就職や収入に好影響を与えていることが明らかになった(本サイト2019年9月26日掲載記事)。また、同年11月にストラダ・エデュケーション・ネットワークが発表した別の調査報告でも、職業・技術教育を修了した者の方が学士課程修了者よりも教育コストに見合う教育であったと高い満足度を示していた(本サイト2019年12月4日掲載記事)。
さらに、全米科学審議会は科学と工学の知識が必要な職業がますます重要になることを見据え、技術労働者(STW)と呼ばれる人材の養成を訴える提言を2019年9月に発表している(本サイト2019年11月28日掲載記事)。STWは学士に満たない高等教育を受けた者と定義されており、ネクサス学位と同じ教育レベルにある。
産業界とのより強固な結びつき
日本では2019年4月より専門職大学と専門職短期大学の制度が始まった。これらの機関では、従来の学位課程より産業界との結びつきが強く、修了するためには学外での実習による単位修得が必要となるなどの条件がある。2019年度時点では国際ファッション専門職大学、高知リハビリテーション専門職大学、ヤマザキ動物看護専門職短期大学が開校している。
原典①:University System of Georgia (英語)
原典②:University System of Georgia (英語)
原典③:Albany State University (英語)
原典④:Columbus State University (英語)