【トヨタもスターバックスも】企業による従業員の教育支援、3か国の事例

日本では企業が従業員の奨学金返済を支援

外国では企業が大学と連携して従業員の学習を支援

従業員は経済面で、企業は人材育成面でメリット


日本企業の奨学金返済支援

2019年7月16日のNHKニュースによると、大手企業が若い社員の奨学金返済を支援する動きが広がっている。この記事では、奨学金の債務をかかえた社員への返済資金の支給などを行う3つの企業が紹介されている。

  • あおぞら銀行:2019年4月より「奨学金返済支援手当」を導入した。これは社員の奨学金制度による借入金の5%を、毎年一括して、入行後3年間支給するもの。
  • 大和証券グループ:2018年7月に「奨学金返済サポート制度」の導入を発表した。これは、奨学金の返済義務がある社員に対して返済資金を無利子で貸し付け、返済時の金利負担を軽減するもの。同社が貸し付けた資金は入社6年目から返済開始とし、若手社員の負担を和らげる対応もしている。
  • トヨタグループ9社:トヨタ自動車らは「トヨタ女性技術者育成基金」を通じた奨学給付プログラムを行っている。これは工学系専攻の女子学生に対し、月5万円(年60万円)を最長6年間、実質無利息で貸し付けるもの。さらに、学生が参加企業に入社した場合には返済額と同額が毎月給付されるなどの元金返済免除の制度も備えている。

アメリカでは企業が大学と連携

上で紹介した事例は主に債務者への金銭的サポートだが、外国では従業員の学びを、大学と連携して支援する企業がある。例えば、アメリカのスターバックスでは2015年から従業員がアリゾナ州立大学のオンライン学士課程で学ぶ場合に、授業料が実質無料となる制度を導入している。この制度では授業料の42%が給付されるほか、残額も学期の終わりに還付される。

医療保険大手のアンセムはオンライン教育で有名なウェスタンガバナーズ大学(WGU)と提携し、同大学の学士課程修士課程で学ぶ従業員に対して授業料を助成している。対象となるのは同社で週20時間以上かつ6か月以上勤務している者で、アンセムからは年間5000ドル、WGUからは20名に限り年間2600ドル(学士課程の場合)が支給される。

さらに、自動車メーカーのFCA USでは2015年から小売店従業員とその家族を対象に、ストレイヤー大学の学位課程科目を無料で受講できる制度を始めている。FIATやJeepなどを販売する小売店で30日間以上勤務している従業員およびその配偶者と子は、同大学のオンライン課程や全米にある学習センターへの通学を通じ、準学士、学士、修士の学位を金銭的負担なく得ることができる。

イギリスでは政府も参画

イギリスでは産学官連携の取り組みとして、学費が無料で給与も支払われる学位課程、見習い学位の制度がある(本サイト2015年4月6日掲載記事)。従来の見習い(apprenticeship)制度の拡充版として2015年から始まった同制度では、企業が年間の人件費に応じて納める税金(Apprenticeship Levy)と政府からの拠出金をもとに、大学での学習と職場での就労を合わせたカリキュラムが提供される(本サイト2017年4月5日掲載記事)。この事業に参加するのは、KPMGやロレアルのような企業のほか、地方自治体や警察など幅広い。修了者には学士または修士の学位が提携する大学から授与される。

双方にメリットある雇用者による支援

一方、日本でも採用後の就学支援に取り組む事例はある。山形県酒田市は2015年から、経済的な事情等で大学等への進学を選択しなかった市職員を対象に、東北公益文科大学と協同した修学制度を行っている。この制度を通じて同大学に入学した場合は、入学金の全額および授業料と施設整備費の半額が免除となる。在学中も市職員の身分を有し、研修派遣の扱いとなる。

このように雇用者と大学が連携し、従業員の学習機会を支援する取組みは各国で見られる。学習者は教育を場合によっては無償で受けられる。資金を負担する企業側は対象の教育課程を限定することで、自社が必要とするスキルを従業員に身に着けさせることができる。授業料の高騰や奨学金の返済が世界的に問題となっている中、企業による従業員の教育支援は注目される取組みである。

原典:NHK NEWS WEB (日本語)
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