豪州:TEQSAがリスクアセスメント報告書を公開

豪州の質保証機関TEQSAが、2018年度に豪州の高等教育機関に対して実施したリスクアセスメントの結果をまとめた報告書「Key risk findings on Australia’s higher education sector」を公表した。TEQSAの行うリスクアセスメントとは、主に学生や財政面に関するリスクの検出に主眼を置いた毎年実施する評価であるが、その結果を報告書として一般に公表することは今回が初めてである。大部分の機関からは重大なリスクが検出されることはなかった一方で、全体として財政面でのリスクが増加傾向にあることや、営利目的の高等教育機関での教職員の配置に関するリスクが高めであるなど、課題も見られた。
この記事ではTEQSAの行うリスクアセスメントと報告書に示されたアセスメント結果の概要について紹介したい。

TEQSAの行うリスクアセスメント
評価対象:豪州の機関登録簿に登録された高等教育機関
評価に用いるデータソース:教育省が管理する高等教育情報や、オーストラリア卒業生調査などの既存のデータ。既存のデータで不足がある場合はTEQSAが直接対象機関に提供を要求する。
リスクアセスメントの構成要素:「学生へのリスク」、「財政面のリスク」2つの要素の下に、4つの領域が設定され、さらにその下に11の指標が設定されている。
評価の判定方法:
リスク指標や、高等教育機関の背景・特徴、歴史など総合的に判断し、専門家により2要素別に3段階(低リスク、中リスク、高リスク)で評価される。
評価結果の活用:
リスクアセスメントを通して検出されたリスクは、各機関が7年以内毎に受審する規制レビュー(原則、豪州内で高等教育を提供するためにはこれをクリアしなくてはならない)の際の判断材料とされるほか、重大なリスクが検出された場合には更なるアセスメントが課される場合もある。
※リスクアセスメントや規制レビューの詳細については当機構発行「諸外国の高等教育分野における質保証システムの概要 オーストラリア」の41-52ページを参照のこと。

アセスメント結果の主な概要

  • 168機関に対しアセスメントを実施。うち「学生に対するリスク」で14機関、「財政面のリスク」で18機関月、証拠不十分により評価が下せなかった。
  • 高等教育機関は、「大学」、「非営利の高等教育機関」、「営利目的の高等教育機関」の3種類に分類され集計された。
  • 学生に対するリスク(N=154)については、86%の機関が中リスクまたは低リスクであった。前年比でも、低リスクの割合が0.8%上昇し、高リスクが13.7%下落した。
  • 学生に対するリスクを機関の種類別でみると、大学、非営利の高等教育機関がともに42.5%の機関が低リスクであったのに対し、営利目的の高等教育機関は14.9%に留まった。
  • 財政面のリスク(N=150)については、中リスクと高リスクを合わせた割合が2015年以降年々増加している。機関の種類別では、高リスクとされた営利目的の高等教育機関はセクター全体の12%と、大学(3%)、非営利の高等教育機関(5%)よりも高い割合であった。
  • 教員学生比率と非常勤教員の各指標において、営利目的の高等教育機関で高リスクとされた機関は22.3%、33.9%と、ともに高い割合であった。
※本報告書では具体的な教育機関名やアセスメントの結果実際に講じられた措置の内容などは掲載されていない。これはリスクアセスメントの特徴を考慮し、アセスメントの結果をセクター単位(公立、私立)よりも細かい単位で公表してはならないという原則をふまえてのものである。詳細はRisk Assessment Frameworkの12,13ページを参照のこと。

原典: TEQSA(英語)

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