コスパが良く就職に役立つのは職業教育と大学院教育―米で34万人規模の調査

アメリカ在住34万人対象の高等教育歴に関する調査

高等教育の費用対効果とエンプロイアビリティへの満足度に違い

教育の価値への評価が高かったのは職業・技術教育と大学院教育

ストラダ・エデュケーション・ネットワークは、アメリカに住む34万人に電話アンケートを行い、高等教育の費用対効果とエンプロイアビリティへの効果を調査した。2019年11月に公表された報告書Changing the Value Equation for Higher Educationによると、回答者自身の経験からアメリカの職業・技術教育と大学院教育が最も高い費用対効果とエンプロイアビリティの向上をもたらすことが明らかになった。一方で、幅広いスキルを準備するリベラルアーツ分野の学部教育は評価を得ておらず、大学が助言、指導、実習機会の提供などを通じて教育の価値を高める必要があるとまとめた。

教育段階別の結果

調査は、アメリカ全50州とコロンビア特別区に住む18歳から65歳の34万人以上に対して、固定電話と携帯電話でのインタビューによって行われた。その結果、自身の受けた高等教育がコストに見合うだけのものであったかという問いに対し「強く賛同する(strongly agree)」と答えた回答者の割合は、職業・技術教育で57%、準学士課程で48%、学士課程で40%、大学院教育で50%となった。また、受けた教育によって有望な就職希望者になったかという問いに「強く賛同」した回答者の割合は、職業・技術教育で56%、準学士課程で43%、学士課程で48%、大学院課程で66%であった。この結果から、学位を伴わない職業・技術教育と大学院教育を受けた学生は他の教育段階を修了した学生に比べ、費用対効果とエンプロイアビリティにおいて高い満足度を得ていることが示唆された。

分野別と未修了者での結果

さらに、専攻分野別の分析では、ヘルスケア、工学、教育といった職業と直結する分野では同様の指標(費用対効果とエンプロイアビリティ)で高い満足度が認められた。一方でリベラルアーツなどを専攻した学生は、費用と就職準備という点ではあまり満足していなかった。報告書では、大学が助言、指導、実習といった方法で学生の就職支援をすることにより、これらの教育の価値がより高まると提唱している。

一方、高等教育に進学したが修了せず、就職時に用いる資格のない回答者は、教育にあまり価値を見出していなかった。自身が受けた教育がコストに見合う価値があることに強く賛同した人の割合は24%、エンプロイアビリティを向上させたことに強く賛同した人は23%であった。この結果からも、消費者は教育と就労との関連性に大きな価値を見出していることが示唆された。

学士未満のアメリカ高等教育に関する他の調査

アメリカの高等教育のうち、学士の学位に満たないレベルの職業・技術教育については2019年7月にも別の調査結果が発表されており、2年未満の高等教育で得られる資格が就職率と収入を向上させることが明らかになっている(2019年9月26日本サイト掲載記事)。シンクタンクのDVP-PRAXISが8州の49カレッジのデータを分析した結果、高等教育中退または未履修の者と比較し、短期の高等教育資格は就職率を5~15%向上させ、取得に6か月以上を要する資格では収入が14~22%増加していた。

また、全米科学審議会が2019年9月に発表した提言では、学士未満の教育を受け科学と工学のスキルが必要な仕事をする技術労働者の育成拡充を求めている。2022年までに全米で340万人分の技術労働者不足が起こるとも言われる中、2年制と4年制の大学や職業教育を行う教育機関などが互いに関わり合うことで、労働力不足の問題に対処するべきとしている。

原典:Strada Education Network (英語)
カテゴリー: アメリカ合衆国 タグ: パーマリンク

コメントを残す