米国の高等教育アクレディテーション協議会(Council for Higher Education Accreditation: CHEA)と大学理事会協会(Association of Governing Boards of Universities and Colleges: AGB)は2022年3月25日に、米国の高等教育機関の理事会(Governing Board)に対し、アクレディテーションへの積極的参画を促す共同声明「AGB-CHEA Joint Advisory Statement on Accreditation & Governing Boards 2022」を発表した。2009年に同様の共同声明を発表しているが、昨今の大学等を取り巻く状況を踏まえて13年ぶりに改訂されたものである。大学等の意思決定機関である理事会のアクレディテーションへの積極的参画は、大学等を外部脅威から守り、大学等がその使命を果たす上で重要な役割を果たす。声明では、理事会に対するアクレディテーションへの理解の深化や参画を促す方策と、大学等の執行責任者である学長(Chief Executive Officer)に対する理事会の参画を促す環境整備などに関する方策が掲載されている。
共同声明の背景
理事会は大学等を管理し、教育の質を向上する上で重要な役割を担っている。一方で、第三者機関によるアクレディテーションは、教育の質向上に大きく影響しているにもかかわらず、理事会の各構成員のアクレディテーションに対する理解とコミットメントは不足しているといわれている。この改善のため、CHEAとAGBは2009年に共同声明を発表したが、その後月日がたち、入学者数の減少や財政的な不安定さ、さらにはパンデミックによる授業形態の変更など、大学等は新たな危機にさらされている。また最近では、理事会の意思決定の独立性に対する外部からの影響により※1、大学等の教育活動の自律性が脅威にさらされていることが大きな課題となっている。
※1 例えば、2021年3月にはフロリダ州で、大学等は受審するアクレディテーション機関をサイクルごとに変更しなくてはならないという法案が可決された。詳細については、HIGHER ED DIVEの2022年3月10日公開記事を参照のこと。
アクレディテーション機関が定める基準には、理事会の外部からの独立性の確保に関する基準がある。理事会のアクレディテーションへの理解と積極的参画は、理事会の独立性、ひいては大学等自身の独立性の確保につながるため非常に重要である。以上の背景から、改訂版の共同声明の発表に至った。
共同声明の概要
声明は理事会向けと学長向けに分かれる。理事会にはアクレディテーションのプロセス(自己評価書の作成、訪問調査対応、評価報告書に基づく改善等)への積極的な参画を促すとともに、大学と社会の結節点として、大学のアクレディテーションへの体制や方針に対する監視的役割を促している。また学長には、理事会が上記の機能を果たせるような環境整備を促している※2。※2 米国の大学では、理事会が意思決定機関としての最高責任を負い、その構成員は学外者かつ大学の教職員でない者がなることが多い。また学長は理事会によって任命され、執行機能を担う。(参照:文部科学省審議会資料「諸外国の大学のガバナンス例」、日本私立大学協会「アルカディア学報」)
理事会向け声明
学長向け声明
原典①:CHEA(英語)
原典②:AGB(英語)
原典③:Higher ED DIVE(英語)