アメリカ:2年以内の高等教育で就職率と収入が向上-シンクタンク調査

高卒後2年以内で得られる資格の就職・収入への影響を調査

アメリカの高等教育資格保有率は50%を下回る

短期で得られる高等教育資格は世界的にも注目される

アメリカのシンクタンクDVP-PRAXISが2019年7月にまとめた報告書によると、2011~2018年に行われた政府による教育助成事業を分析した結果、同国で高校卒業後2年以内で得られる資格を持つことが就職や収入に好影響を与えることが明らかになった。資格取得の効果は教育課程の長さを問わず見られ、特に取得に6か月以上を要する資格の場合は収入増の効果が高かった。また、ヘルスケアと製造業の分野を別々に分析したところ、どちらの業界でも資格取得による効果が見られた。

分析の対象はTAACCCT*1と呼ばれる労働省の事業で、労働力需要の高い地場産業への就職を目的とした成人教育を行うコミュニティカレッジとテクニカルカレッジに財政支援が行われた。事業に採択された課程は産業界のニーズに応えることが強く求められており、各カレッジは業界で通用する2年以内で取得可能な資格を目指せるカリキュラムを構築した。

DVP-PRAXISは、採択された8つの州の49カレッジが提出したデータを用いて、TAACCCT採択課程の修了者を高等教育中退または未履修の者と比較し、就職と収入の状況を分析した。対象者は25~64歳とした。

短期資格取得による就職と収入への影響

分析の結果は下記の通りで、短期(2年以内で得られる)資格の取得が就職と収入に好影響を与えることが明らかになった。

  • 短期資格の取得者は、資格を持たない者より就職できる可能性が高い:どのような資格であっても、その取得によって就職率は5~15%上昇した。
  • 取得までの期間がより短い資格でも就職には好影響がある:取得に要する期間が6か月未満の資格でも就職率は4~7%上昇した。
  • 短期資格は収入増にもつながる。取得に時間のかかる資格では特に顕著:取得に6か月以上を要する資格の保持者は、資格のないものに比べて収入が14~22%増加した。先行研究でも同様の結果が出ていた。
  • 短期資格はヘルスケアと製造業の両業界に好影響を与えている:ヘルスケアと製造業の両業界で、短期資格の取得によって就職率は上昇した。ヘルスケア分野では収入の相対的な増加も見られた。

短期資格取得の動きの拡大

今回の報告書によると、アメリカでは25~64歳人口の過半数が高等教育の資格を有しておらず、成人が雇用や収入改善のために教育を通じて修了証、各種免許、または認定証を取得する動きが広がっている。さらに教育省でも2016年に、大学とブートキャンプと呼ばれるプログラミング教育などとの連携に対して支援を行っている(本サイト2016年12月7日掲載記事)。ニュージーランドでは2018年より職業に直結するスキルを学ぶ短期課程が正規の教育制度に組み込まれている(本サイト2018年9月12日掲載記事)。ここで得られた資格はマイクロクレデンシャルと呼ばれ、エンジニア、教員、看護の分野で活用が望まれている。

一方、短期間で得られる資格はデジタル(オープン)バッジ(本サイト2017年2月22日掲載記事)のような資格として電子化される傾向にある。オーストラリアのDeakin大学ではデジタルバッジを積み重ねて学位が取得できるサービスを2015年から始めている(本サイト2015年9月3日掲載記事)。しかし、2016年にアメリカで行われた調査では、企業の人事担当者の6割以上がデジタル資格のことをほとんど知らなかった(本サイト2016年6月10日掲載記事)

それでも高等教育レベルの短期資格は電子化とともに普及していくと見られている。ユネスコが2018年に発表した報告書の中では、短期の教育で得られるデジタル資格が採用・人事面に与える影響を調査する必要性が指摘されている(本サイト2018年12月4日掲載記事)

*1TAACCCT: Trade Adjustment Assistance Community College and Career Training

原典①:DVP-PRAXIS (英語)
原典②:Non-Degree Credentials Provide Value for Adults in the Labor Market (英語)
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