蘭:多様な学習歴の認証のための新たな手法―オープンバッジとマイクロクレデンシャルに係る白書を公開

原典: SURFnet(英語)

2016年12月、オランダの教育・研究分野を対象にICTサービスを提供する組織SURFnetはオンライン教育において用いられているオープンバッジ(以下、バッジ)とマイクロクレデンシャル(Micro-credentials)について白書「WHITEPAPER ON OPEN BADGES AND MICRO-CREDENTIALS」を公開した。本白書はオランダの高等教育機関におけるバッジの活用を検討するために、SURFnetがオランダ教育・文化・科学省(以下、オランダ教育省)、教育執行庁(Education Executive Agency)、高等教育機関、EP-Nuffic等の機関との間で意見交換を行い、それを基にバッジに関する基本的な知識や利点、活用される場面、諸課題についてまとめている。

バッジの利点と活用場面

科目単位での認証が行われることを前提にバッジを利用することで、柔軟なカリキュラムを展開することができる。具体的な活用場面として、科目単位で取得したバッジを認証することで正規プログラムでの学習に組み込むことや、オランダ国外で提供されるプログラムへの参加、生涯学習における活用などが想定されている。

資格連携協定(Micro-credential partnerships

教育の形態が多様化する中、MOOCsを含む教育の学習歴について、複数の高等教育機関の間で相互認証の合意を締結する例もみられる。デルフト工科大学が実施する「Credits for MOOCs」はこの例であるとされている(本サイト2017/1/19投稿記事)。学習者が複数機関で学習を行う場合、学位プログラムに一貫性を持たせつつ、それぞれの機関における学習歴の証明を各機関で分担して行うことが重要となるが、バッジはこれらの作業を円滑にするとしている。

オランダの高等教育でバッジが用いられる場合の3つのシナリオ

  1. それぞれの教育機関で発行されるバッジ

国から認可を受けた教育機関が提供する教育について、外部への提示を前提としてバッジを発行する。このタイプのバッジは、学習者が何を学んできたかを証明しやすくし、他の教育機関へのアクセスを容易にする。雇用主側にとっては学習者が身に付けた能力や知識について、バッジを通して詳細に知ることができる。既にバッジを保持する学習者は、学習期間の短縮や単位互換に繋げることが可能となる。バッジにより達成されるべき学習成果の内容や明確なレベルを示すことができる。また、履歴書に取得したバッジを記載することにより、雇用主にも情報が伝わることにもなる。ただし、バッジが本物であるかを確認する必要がある。

  1. 追加的訓練としての課外活動を認証するバッジ

MOOCsなど国から認可を受けていない教育機関等が提供する教育について、外部への提示を前提としてバッジを発行する。このタイプのバッジは、学習者がどのような課外活動を行ってきたかを証明することができる。そのため、雇用主は、就職希望者が有する技能が取得した学位と直接結びついていなくても、このバッジによって雇用主が望む特定の技能を有する者を見つけやすくなる。ただし、履歴書が職業と関連性のある一部のバッジのみで溢れる可能性がある。

  1. ゲーム的要素としてのバッジ

学習者の学習意欲を高めるツールとして、外部への提示を前提とせずにバッジを発行する。このタイプのバッジは、学習者にプログラムの修了を目指す動機付けとなる。また、学習成果を他の学習者と比較することができる。

オープンバッジの導入に伴う課題等(一部抜粋)

  • バッジは学習者の特定の能力や技能を証明する役割を有することからその信頼性が重要である。そのため、バッジの更新は周知した上で行う必要がある。また、あえて署名等がないバッジを発行し、発行機関自らがチェックを行うことによって信頼性を確保する方法もある。バッジの認証を行う場合、バッジとバッジ保有者の関係をしっかりと確認する必要がある。
  • オンラインストレージでの管理には、情報セキュリティ面やストレージを提供する企業の継続性が問題となる。また、ストレージシステムを適切かつ永続的に管理・改善していく必要がある。最終的な解決としては公的機関がストレージを提供することが望ましい。
  • バッジには個人情報が含まれているため、その管理方法が問題となる。この点について、バッジの保持者が自らのストレージで管理することで、バッジに関する情報を共有したり、提示する相手を保有者が決めたりすることができる。

現在、バッジは世界的に広く普及しており、オーストラリアではバッジを集めることによって学位取得が可能な大学もある(本サイト2015/9/3投稿記事)。米国では新たな高等教育提供者の増加により、バッジの提供が行われ、英国においてもバッジによる学習歴の認定が紹介されている。

オープンバッジ(バッジ)とは、保持者が取得した特定の能力やスキルを示すことを目的として、オンライン上で表示されるピクトグラムやロゴのことである。またマイクロクレデンシャル(Micro-credentials)とは、学習をより詳細な単位に分け、個別に認証したものである。

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