アウトプット重視の最近のアメリカ

出典①:連邦教育省
出典②:連邦教育省
出典③:SHARE-ASEAN
出典④:ユネスコバンコク事務所
出典⑤:UK NARIC

学習の成果(アウトプット)を評価するアメリカの質保証

分野別評価や監査法人による評価など

多様化する高等教育を理解するための資格枠組み

高等教育の質保証に対する改革の声が上がる中、学習の成果を重視する傾向が一層強まっている。教育のアウトプットを評価に直接結びつける動き、監査法人による教育の評価、資格枠組みの構築などアメリカと世界の動きをまとめた。

評価機関の取り組み

アメリカ連邦教育省は、同省が認定する評価機関が学習成果をどのように評価しているかを調査し、その結果を公表している。産業界とのつながりが強い専門分野別評価では、26機関が分野内で統一した学習成果指標を基準としている。例えば、美容や化粧品に関連するコスメトロジー分野では、評価機関National Accrediting Commission of Career Arts and Scienceによって「免許取得率70%、就職率60%、修了率50%」という具体的指標が基準とされている。一方、個々の教育機関が独自に設定する学習成果指標を用いて評価する機関も27機関存在する。この27機関の内訳は、地域別7機関、政府直轄2機関、専門分野別評価機関18機関である。

評価としての監査

新たな動きとして、監査法人による質保証を導入する教育機関もある。テキサス大学オースティン校が主導するソフトウェアエンジニア育成プログラムでは、Entangled Solutions社が構築する質保証制度のもと、Moody, Famiglietti, & Andronico (MFA)という監査法人が監査(audit)を行う。Entangled社は質保証コンサルタントとして、同プログラムの学習成果や修了者の社会での成功を測る指標を提案する。さらに、実際の教育パフォーマンスを測るため、就学前/修了後調査などの設計も行う。MFAは、こうした質保証制度をもとに出された成果データの正確性や一貫性を評価する。その結果は監査報告書として公表されると同時に、各ステークホルダーにも一斉に送付される。

欧州の第三者評価の中にも監査(audit)と定義づけられるものはあるが、上記のアメリカの事例とは異なり機関単位の評価で教育の質に重点を置いている。詳しくはこちら(本サイト2014年11月10日掲載記事)を参照。

米国連邦教育省の取り組み

前出のアメリカの監査法人は、決められたデータ項目の評価から、対象プログラムの継続是非を助言することも行う。このテキサス大学の取り組みは、すでに連邦教育省によって先駆的事例の1つとして選定されている。教育省はEQUIP (Educational Quality through Innovative partnerships)と呼ばれる事業を通じ、革新的な教育手法に対して試験的に財政支援を行っている。EQUIPには8つのコンソーシアムが選ばれており、中でもプログラミング技術の取得を目指したブートキャンプと呼ばれる短期教育を活用したプログラムが4つも含まれる。また、同事業のもう1つの特徴は、教育機関が自らQAE (Quality Assurance Entity)と呼ばれる質保証の仕組みを設定することにある。前述のEntangled SolutionsとMFAもQAEとしてコンソーシアムに参加している。

資格枠組みの構築

最近の米国高等教育は、ブートキャンプに見られるような、学位課程よりも就学期間が短く、産業界に必要とされる知識・スキルを磨く教育プログラムに注目が集まっている。こうした職業教育訓練の修了証、職業団体が発行する認定証、さらに大学が授与する学位の相互関係の間の整理が急務となっている(同国の高等教育資格については「諸外国の高等教育分野における質保証システムの概要 アメリカ合衆国」10-13ページ参照)。2015年6月には、ルミナ財団の支援によって全国で統一した資格枠組みを構築する取り組み(本サイト2015年6月25日掲載記事)が始まっている。

このような資格枠組みの整備は世界各地で見られる。アメリカの資格枠組みは、欧州資格枠組み(EQF: European Qualifications Framework)をモデルとしているが、欧州ではすでに29ヶ国が国家資格枠組みを採用(本サイト2015年7月6日掲載記事)している。ASEAN地域でも、EQFをモデルとした地域資格参照枠組み(ASEAN Regional Qualifications Reference Framework: AQRF*)を開発している。また、アジア・太平洋地域を管轄するユネスコバンコク事務所は、資格枠組み構築のための地域ガイドライン作りを主導しているところである。中国も、2016年からイギリスのODAによる資金提供を受け、自国の資格枠組み構築プロジェクトを立ち上げている。

*AQRF: ASEAN地域内のサービスの流動性を高め、高度人材の移動障壁をなくすため、2015年に加盟各国が承認した資格枠組み。ASEAN10ヶ国はAQRFに対応する自国の資格枠組みの策定が求められている。

アウトプット重視の評価

このように、アメリカをはじめ世界各地で、多様なレベルの資格を統一的に理解しようと、国あるいは地域レベルでの資格枠組みの構築が進んでいる。それと同時に、学位以外の高等教育資格に対しても質の担保を求める声が高まっており、これに対応する形で学習の成果を重視した評価が取り組まれている。資格取得率や卒業率の評価だけでなく、教育機関独自の目標に対する外部の審査など、アウトプットをもとにした評価への取り組みはこれからも注目される。

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