原典:ENQA(英語)
報告書:AQ Austria(英語)
欧州高等教育質保証協会(ENQA)の非公式ネットワークで、高等教育の質のオーディットを行う12の国・地域にある質保証機関で構成する質オーディットネットワーク(QAN: The Quality Audit Network)は、各国の外部質保証制度の現状と課題を比較する調査を行い、その結果を公表した。調査の結果概要は以下の通り。
なお、欧州高等教育の質保証におけるオーディット(audit)の定義は、「(教育の)提供と成果の質、一貫性または基準を保証するための制度を確認するプロセス」(Analytic Quality Glossary)、あるいは「科目、課程、機関または特定のテーマでの活動・サービスの質を継続的に監視し改善するために、教育機関自身が設定したメカニズムの長短所の評価」(ENQA Occasional Paper 14)とされている。オーディットというコトバを評価活動に用いる国は少数(フィンランド、スイス、オーストリアのみ)だが、それ以外のQAN加盟機関も自らの評価をオーディットと呼ぶことに同意している(例えばイギリスでは、財務監査としてのオーディットのイメージを払しょくするためオーディットという語を用いなくなった)。
QAN加盟機関共通で見られたオーディットの特徴
- 機関単位の質保証
- 教育の質の向上に重点を置く
- サンプル収集によるエビデンスを求める
今回比較調査が行われた国・地域
国家法で求められているオーディット
- オーディットのほとんどは教育機関の内部質保証制度に着目
- 外部アクレディテーション(適格認定)の一環となっている国も多い
- 大学の自治が拡大している傾向もみられる(学位課程を新設する権利など)
- 公的資金配分のためにオーディットを用いる国もある
オーディットの審査範囲
- 国家および欧州高等教育圏の法的枠組み(法規とESG)の遵守
- 審査の観点には違いがみられる
- 研究を評価する国としない国は分かれる
- 質文化(quality culture)への意識は質保証機関と教育機関ともに高い
- ステークホルダー(学生、産業界、広い意味での社会など)の参画を考慮する国は多い
手順
- おおまかな手順は共通している
- 準備
- – 準備段階として審査の手順はどこの国でも公表されている
- – 準備段階で個別の内部質保証制度への助言や事前審査をするところもある
- 自己評価
- – 自己評価書の体裁や用いられる用語は多様
- – 自己評価書の正式な提出前に、内容を見てフィードバックをする質保証機関もある
- ピアレビューと訪問調査
- – 評価委員は1機関につきおおむね3-6名で高等教育関係者を必ず含む
- – 産業界からの委員を含めるところもある
- – 外国から委員を呼ぶのが最近の傾向―当該国の知識や言語で課題あり
- – 1機関につき訪問調査は2回行うのが一般的
- – 1回目の訪問は主査(あるいは委員全員)が質保証機能の全体を調査-1日間
- – 2回目で委員全員が細かく調査する-2日間以上
- 最終報告書
- – 報告書のまとめは質保証機関職員がやる場合と、委員がやる場合に分かれる
- フォローアップ
- – 結果確定時に対象機関を再度訪問(報告セミナーまたはフォローアップ訪問)するのが一般的
オーディットの効果
- オーディットの効果測定手法としては、次サイクルでの再調査、調査後のアンケート、国レベルのメタ評価などがある
- 教育機関の変化がオーディットの結果なのかを知るのは難しい
今後の課題
- 質の向上重視と説明責任との両立
- 機関の評価だけでなくプログラムなどの評価要素の導入
- 審査の平等性の担保
- オーディットの国際化(外国からの委員参画、質保証機関の国際交流、国境を越えた審査活動)