ASEAN資格参照枠組(ASEAN Qualifications Reference Framework: AQRF)委員会は、2019年5月に開催した第6回会合にて、マレーシアとフィリピン の報告書(AQRF Referencing Report)を承認した。報告書は、ASEAN加盟各国の資格枠組(NQF)と地域枠組であるAQRFの対応関係を示すものである。AQRFは、8つのレベルで構成されるが、各国のNQFの構成は必ずしも8つのレベルとは限らないため、NQFの各レベルに置かれる資格の位置付けを、AQRFに参照させることで各国の資格のレベルに対する国際的な理解を向上させるものである。今回の承認によりこれら2か国は、AQRFの参照基準を満たしたASEAN加盟国として先陣を切ったことになる。
AQRF(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)は、ASEAN地域内における質保証の原則と基準によって支えられる地域レベルの資格参照枠組であり、以下の6つの目的をもつ。8レベルで構成され、各レベルで求められる知識、技能、責任等を提示することで、学生と労働者の移動に伴って必要となる教育・職業分野の資格の比較・承認を可能にさせる仕組みを持つ。
AQRFの重要な目標の一つは、同地域内で授与された資格への信頼性の構築であり、同委員会が今回2か国の報告書を承認したことで、AQRFは目標に向かって大きく前進したと言える。
AQRFの6つの目的
- 資格の承認を支援
- 生涯学習を推進する資格枠組の開発
- 公教育以外の学習を承認するアプローチの開発
- 労働者と学生のモビリティの推進
- 資格制度への理解の向上
- 質の高い資格制度の推進
実施体制
AQRF委員会は、ASEANの経済相会合(AEM)・教育大臣会合(ASED)・労働大臣会合(ALMM)の支持のもと、2017年2月に発足した。ASEAN加盟国から提出された報告書の調査を主な任務としている。
(参考)マレーシア資格枠組(MQF)とAQRFの各レベルの対応関係
下図はマレーシアの報告書「ASEAN Qualifications Referencing Framework (AQRF) Referencing Report, Malaysia」からの抜粋である。本報告書では、学習成果の一部の記述をより明確化すべきといった指摘はありながらも、マレーシア資格枠組(MQF)とAQRFは比較可能性(comparability)を有し、資格枠組の各レベルも適合性が認められる(good fit)と結論付けられている。