マレーシア政府がブロックチェーンで学位の管理・確認ができるシステムの創設を目指す

2018年11月、マレーシア教育省は同国の6大学と協力して、大学が発行した学位をブロックチェーン技術※1を用いて管理するシステムの開発プロジェクトに取り組むことを発表した。
当プロジェクトは2018年1月にマレーシアの大学長で構成されるICT委員会(Majlis Dekan-dekan ICT)において発案されたもので、当プロジェクトには6つの公立大学※2が参加している。

教育省によれば、インターネットなどを介した流通により増加する学位の偽造の対抗策として、ブロックチェーンは一度作成された情報が変更履歴も含めてすべて記録されるという性質を持つことから、これを学位情報の管理に使用することによって学位の偽造を見破ることを期待しているとのことである。
教育省は、質の低い学生がマレーシアの学位を不正に使用することにより、国内の大学の評判と誠実性が失われるという懸念を示すとともに、偽造学位を用いた学生が不正に入学してしまえば誠実に学業に取り組む学生にとっても不利益であるとコメントしている。

新しいシステムでは、偽造学位による不正を防ぐと同時に、卒業事実の確認に関する問合せを減らすことができるとしている。さらに、マレーシアの大学は学位に関する多くの問合せに電話とメールで対応しているが、ブロックチェーン技術の導入によって学位の偽造が困難になれば、大学への問合せの件数が減り、負担軽減も期待される。

6大学が参加した当プロジェクトを主導したInternational Islamic University of Malaysiaは、ブロックチェーンを用いた学位管理システムであるe-Scrollを他大学に先行して導入した。また同大学の2018年11月の学位授与式において、そのシステムのQRコードを掲載した学位が発行された。
ブロックチェーン学位はLuxtag社の協力のもと作成される。大学が発行する証明書にはQRコードが掲載されており、学位情報はQRコードをスキャンすることによって確認できる。
Luxtag社によれば、e-Scrollを導入しているのはInternational Islamic University of Malaysiaのみであり、2019年12月現在、同大学の5000以上の学位が電子的に保護、管理されている。

ブロックチェーン技術を用いた資格の管理に関して、マルタでは政府が国民の生涯学習の履歴を電子化して管理している(本サイト2017/11/28投稿記事)。また、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)ではブロックチェーン技術を用いた学位を発行している(本サイト2017/11/17投稿記事)
さらに、一国の政府による資格の電子的な管理の取組みとしては、オランダ政府がDiplomaregisterというデータベースを構築しており、中等教育以降の国民の学習履歴が保管されている(本サイト2017年6月7日投稿記事)ほか、中国(本サイト2020/1/16投稿記事)、アルゼンチン、ウクライナ、ドミニカ、ブラジル(本サイト2018/10/24投稿記事)においても政府が有する資格の電子データベースがある。

※1
ブロックチェーン(blockchain):中央集権的な機構がなく、外部に開かれている情報ネットワークで、各データの変更履歴は1本の鎖のように繋げられているため、元の状態に戻せず、改ざんができないとされている。

※2
Universiti Utara Malaysia (UUM), International Islamic University of Malaysia (UIAM), Universiti Teknologi Malaysia (UTM), Universiti Malaysia Sabah (UMS), Universiti Malaysia Terengganu (UMT) and Universiti Teknologi Mara (UiTM)の6大学。

原典:マレーシア教育省(マレーシア語)

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