生涯学習の履歴を電子化
マルタ政府による取り組み
データ管理にはブロックチェーン技術を採用
マルタの教育雇用省は、2017年9月27日に、ブロックチェーン※技術を用いた資格を導入する全国的なパイロット事業を行うことでLearning Machine Technologies社と合意した。この事業では、マルタ国民は生涯学習の履歴を1ヶ所で管理でき、好きな時に自らの資格を世界中の人々と無料で共有できる。ブロックチェーンを用いたデジタル資格のため、学習を提供する教育機関には、資格の偽造リスクが抑えられ、資格情報の裏付け作業をする手間が省けるメリットがある。
Learning Machine Technologies社は、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボとともにBlockcertと呼ばれるブロックチェーンを用いた資格を開発している。すでにMITではBlockcertによる学位授与を行っており(本サイト2017年11月17日掲載記事)、学生は専用のアプリケーションで自身の学位を保管、共有している。今回のマルタ政府の取組みも同様のシステムを用いることになる。
一国の政府による資格の電子的管理の取組みとしては、オランダ政府がDiplomaregisterというデータベースを構築しており、中等教育以降の国民の学習履歴が保管されている(本サイト2017年6月7日掲載記事)。様々な場所での学習を一元的にデジタルデータとして管理する動きには、今後も注目が必要である。
※ブロックチェーン(blockchain):中央集権的な機構がなく、外部に開かれている情報ネットワーク。各データの変更履歴は1本の鎖のように繋げられているため、元の状態に戻せず、改ざんができないとされている。ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨で採用されている技術として有名。例えば、ある取引がビットコインを介して行われた場合、取引内容は“その”ビットコイン上に記録され、記録内容の正当性は多数の第三者による確認をもって裏付けられる。この技術を応用し、通貨だけでなく不動産登記をはじめとした種々の情報に対する利用が世界中で模索されている。