2019年11月、英国高等教育質保証機構(QAA)は、英国外の高等教育機関を対象とする国際質レビュー(International Quality Review:IQR)を本格始動させた※1。国際質レビューは「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)(NIAD-QE国際課まとめ)」に照らして実施されるため、受審機関の国際的な信頼性や評判の向上のほか、英国の高等教育機関との協定締結の円滑化等が期待されている。
表1 IQRの概要
国際質レビュー(IQR) | |
有効期間 | (最長)5年間 |
方法 | ピアレビュー |
評価基準 | 「欧州高等教育圏における質保証の基準と ガイドライン(ESG)」の第1部「内部質保証に 関する基準とガイドライン」に示されている 10の基準 |
レビューの判定 (3段階) | 「国際質レビューのすべての基準を満たしている」 「条件付きで国際質レビューのすべての基準を 満たしている」 「国際質レビューの基準を満たしていない」 |
国際質レビューのプロセス
国際質レビューの実施プロセスは5つのステップ(①申請、②事前訪問審査、③レビュー、④アクレディテーション、⑤中間サイクルレビュー)で構成されている。
①申請
受審機関は申請に必要な情報をQAAに提出する。QAAは申請書類を確認し、当該機関に国際質レビューの受審資格があるか否かを判定する (例えば、当該機関が所在する国で高等教育機関として認可を受けているか等を確認) 。
②事前訪問審査
2名のQAAの専門委員が当該機関を訪問して情報収集を行うほか、当該機関からの質問に対応する。事前審査を通じて次のステップに進むかどうかを、受審機関及びQAAの双方が検討することができる。
③レビュー
受審機関は自己評価書とエビデンスを準備し、QAAに送付する。QAAレビューチームはまず書面調査を行った後、2~4日間の訪問調査を行う。QAAは調査で見つかった重要事項について、調査実施後に当該機関に共有する。
レビュー委員会は当該機関を次のプロセスに進めるかどうかについて、QAAアクレディテーション委員会に提言をする。レビュー委員会の判定は3段階(表1)で行われ、「国際質レビューのすべての基準を満たしている」と判定された機関のみが④アクレディテーションに進むことができる※2。
④アクレディテーション
レビュー委員会からの推薦をもとに、QAAアクレディテーション委員会が当該機関を認定するか否かの判定を行う。認定された場合、QAAが質を保証していることを対外的に示す国際質レビューアクレディテーションバッジを当該機関のウェブサイトや広報資料に使用できるようになる。また、アクレディテーションの認定期間は5年間である。 国際質レビューの評価報告書はQAAのウェブサイトに公表される。
⑤中間サイクルレビュー
レビューが終了してから2~3年後に書面調査が行われる。受審機関は③での指摘事項に関する報告書類をQAAに提出し、QAAレビューマネジャーが評価する。中間サイクルレビューで承認された場合、アクレディテーションの有効期間は当初のとおり最長の5年間と認められる。なお、受審機関が中間サイクルレビューを受けなかった場合は、④の認定から3年後に自動的に認定が失効し、バッジも使用できなくなる。
手数料
基本費用(申請料)は1,000ポンドで、事前訪問調査やレビュー等の費用は、受審機関の規模などによって決定する。
※1 国際質レビューは2016年より実施されており(本サイト2016/4/26掲載記事)、2019年までに4校(インド、クウェート、マカオ)が受審している。今回評価プロセスが一部見直されたうえで、新規プロジェクトとして発足している。
※2 レビュー(③)または中間サイクルレビュー(⑤)で「条件付き」または「基準を満たしていない」と判定された機関は、レビューでの指摘事項に基づいたアクションプランを作成し、QAAに提出することが求められる。受審機関は③または⑤の判定から12カ月以内にアクションプランを実現していることをQAAに示す必要がある。QAAが承認すれば、次のステップに進めことができるが、承認されなければその時点で国際質レビューは終了(⑤の場合は認定の失効)となる。