【WeChatにも対応】世界中で広まる学習歴のオンライン検証-9つの事例

中国の卒業証書などの政府機関による内容の認証が電子化

証明書のオンライン検証を行う国は増加

学習歴の電子管理によって学生の国際移動が高まる

卒業証明書や成績証明書の内容の真正性を、オンラインで確認できるサービスが世界的に普及している。

中国で教育を受けた学生の学習歴の認証は、現在2つの政府組織が行っている。2018年7月から、CHESICC(全国高等学校学生信息咨询与就业指导中心)CDGDC(教育部学位与研究生教育发展中心)の両者はこれまでの紙ベースの認証を廃止し、完全な電子化に切り替えた。また、認証業務の無償化も同時に行われた。

中国での学習歴のうち、CHESICCは教育機関の卒業証書と成績証明書や高考*の結果などの認証を、CDGDCは学位証書の認証を行う。CHESICCのウェブサイトには英語のページがあり、内容の真正性を調べたい文書の認証コードを入力することで確認できる。また、メッセンジャーアプリのWeChat(微信)を用いたQRコードによる検証も可能である。CDGDCのウェブサイトでは中英共通のページから確認できる。どちらも真正性を証明する書類はオンライン上で発行される。
*高考:全国普通高等教育機関統一入学試験

オンライン検証の対象となるのは、2002年以降に修了し政府のデータベースに登録されている学習歴。これに該当しない場合は、従来通りの紙の認証文書が無償で発行される。

世界各国で見られる証明書のオンライン検証

卒業証書や成績証明書のような学習歴を証明する文書の真正性をオンラインで確認(検証)できる仕組みは、世界のさまざまな国で導入されている。中国のように政府組織が行うだけでなく、大学などの教育機関単位や、試験を実施する第三者機関でも行われている。以下にその一例を紹介する。

政府組織による認証

アルゼンチン:教育省による学位取得者の認証。2010年以降に外国学位を承認されたか、2012年以降に学位を授与された者が対象。

ウクライナ:教育科学省による2013年以降の学習歴の認証。学術教育と職業教育の両者に対応。

ドミニカ共和国:教育省による1992年以降の中等教育修了試験の成績の認証。

ブラジル:サンパウロ州政府による2001年以降の中等教育修了証の認証。

教育機関による認証

オーストラリア:クイーンズランド大学による学位取得者の認証。

タイ:アサンプション大学による学位取得者の認証。

試験実施機関による認証

アフリカ:ガーナ、ナイジェリアなどの英語圏西アフリカ諸国で中等教育修了試験を提供するWAEC (West African Examinations Council)による成績の認証。同機関が発行するスクラッチカード記載のコードが必要。

証明書自体の電子化

こうした証明書のオンライン検証の他に、証明書自体を電子化する事例も多い。2017年6月に掲載したこちらの記事(当サイト2017年6月7日掲載記事)でもオランダ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの事例を取り上げた。また、カナダでもブリティッシュコロンビア州政府は中等教育の修了証と成績証明書を電子発行している。

電子化を推進する国際ネットワーク

学習歴の電子的な管理によって学生の国を越えた移動を助けるため、フローニンゲン宣言ネットワーク(GDN)という組織も立ち上がっている。オランダの教育文化科学省行政機構(DUO: Dienst Uitvoering Onderwijs)に事務局が置かれ、25ヵ国82機関が参加しているが、日本の組織からの参加は確認されていない。

国際的な学生移動が広まりつつある中、証明書の電子化とオンラインネットワークを用いた検証も普及している。一方で日本の大学で証明書の内容をオンラインで認証している例は現時点ではほとんどない。現在はすべての処理を紙だけで進めている教育機関も、今後対応を迫られる日が近いかもしれない。

原典①:CHESICC(中国語)
原典②:CDGDC(中国語)
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