フランスの高等教育大臣フレデリック・ヴィダル氏が、2018-2019学年度より、フランス国内の公立高等教育機関の新入生及び進学者を対象に、財政支援を充実させることを発表した。①学費(年間登録料)の引き下げ、②学生負担の社会保障費の撤廃、③学生生活・キャンパス生活の充実のための学生負担金制度の導入、④学生流動促進のための財政支援、⑤奨学金制度の変更、の5項目が提示された。
①学費(年間登録料)の引き下げ 2018-2019学年度より、国内の全ての公立高等教育機関の学費(年間登録料※1)を引き下げることになった。これは2012年以来初めての試みとなる。
2017-2018学年度 → 2018-2019学年度 学士課程 €184 → €170 修士課程 €256 → €243 博士課程 €391 → €380
※1 フランス国内の公立高等教育機関には授業料を徴収する仕組みがなく、政府は学生の教育に関する所要経費の大部分(学生1人当たり€10,000~14,000)を負担する。学生は授業料ではなく、法律によって定められた年間登録料を支払わなければならない。(NIAD-QE「諸外国の高等教育分野における質保証システムの概要 フランス(第2版)」p.21より)
②学生負担の社会保障費の撤廃 ・新入生の場合 2018-2019学年度の新入生は現行の社会保障システム(保険)に加入する。 ・2017年以前に入学した学生の場合 2019年8月31日までは現行の学生相互保険(€217を負担)に引き続き加入し、2019年9月に新たな健康保険へ加入する。
上記いずれのケースも、保険は毎年自動的に更新され、€217の学生負担は自動的に撤廃される。学生相互保険制度は2019年8月31日に廃止されることが決まっており、結果的に、学生や保護者による家計負担は総額で€1億削減されることになる(2018年9月時点)。
③学生生活・キャンパスの生活充実のための学生負担金制度の導入 ・高等教育機関に在籍する学生は、CVEC(Contribution Vie Etudiante et de Campus)制度を維持するため、毎年€90の支払いが義務付けられる。これらは高等教育機関や地方の学習センターに配分され、学生生活やキャンパスライフを充実させるために使用される。 ・CVECは、学生生活・キャンパスの生活充実のための学生負担金制度であり、“大学環境の改善”、“健康増進、医療サービスやソーシャルサービスへの アクセスの簡素化”、“文化的活動・国際交流の活発化”、“スポーツ増進へのサポート”など多方面で学生を支援する。 ・本制度の導入により、学生が大学に求めるものを言える環境、大学が学生の声を聴き実行できる環境を作り、大学が常に学生のニーズに対応できるようにすることが期待されている。
④学生流動促進のための財政支援 ・学士号取得のため、①学術委員会に加入した学生(Parcoursupを通じて入学許可が得られなかった者)、②学長(Rector)の推薦を通じてモビリティを認められた学生、は進学に際して多くの財政支援を受けることができる。 ・このモビリティの支援費は、€200~€1,000、対象学生数は10,000名。 ・政府は、2018年に支援費の総額を€700万まで引き上げる、としている。
⑤奨学金制度の変更 ・毎年7月末までに申請書類が受理された場合、新学期の開始する9月前の8月中に受取ることができる。 ・2018年10月より、日付指定された奨学金の支払日が毎月の5日となる。 ・補完的保護※2の地位の学生に対する奨学金支給期間の延長。 ※2 難民認定申請者のうち、認定はされないが、補完的保護の地位が認められた者。
原典:フランス高等教育・研究・イノベーション省(MESRI) (フランス語)