英語による学位プログラムの質の測定
質の高い機関には金、銀、銅の評価
非英語圏の大学の国際化評価に新たなアプローチ
英語で教授する(EMI*)学位プログラムの質を測るため、イギリスのUK NARICとOxford EMIは共同で第三者評価スキームであるEMI Quality Markを2018年8月に立ち上げた。この制度は非英語圏の国でEMI教育を行う大学を対象に、大学全体または学部・研究科単位の評価を行う。書類審査と訪問調査の結果、一定の質が認められた機関には金、銀または銅の評価が与えられる。
*EMI: English medium instruction
本制度に携わるUK NARICはイギリス政府の指定を受け、外国とイギリスの学術資格の同等性審査をしており、関連研究として各国の英語教育の質の調査も行っている。一方Oxford EMIは、長年EMIを専門に研究しているオックスフォード大学講師のJulie Dearden氏が立ち上げた組織で、欧州・南米地域などでEMIに携わる教員への指導経験が豊富である。
評価の仕組み・対象・費用
Quality Markでは、英語を用いた学位プログラムを対象に、優れた取組みの評価と継続的な発展のための助言を行う。評価はUK NARICとOxford EMIの担当者が行い、下記の4つの領域について大学の達成度が測定される。大学が提出した申請書類と参考資料による書面審査の後、授業見学や教員・学生それぞれへの面談を含む3日間の訪問調査が行われる。最終的な結果は報告書にまとめられ、評価領域への達成度に応じて「金(75%以上)」「銀(60%以上)」「銅(50%以上)」「発展中(50%未満)」のいずれかの評価が与えられる。一連の審査には10-12週間を要する見込みとなっている。
表:EMI Quality Markの評価領域と内容
評価領域 | 内容 | 評価全体に占める割合(%) |
コンテクストと運営 | 言語ポリシー、透明性とコミュニケーション、設備・資源・支援スタッフ、課程の認可・観察・見直し | 15 |
学生の受入れと支援 | アドミッションポリシーと実践、学生支援 | 15 |
教育と学習 | 教育の質、教員:支援と育成、提供される質の観察 | 35 |
測定と学生の成果 | 質の測定:デザイン・実践・評価、学術と言語の成果、学生満足度 | 35 |
(Scheme Handbookをもとに作成)
Quality Markによる評価はすでにEMI課程を導入している大学を対象にしている。費用は公表されていないが、受審を考える関係者はUK NARICのサイトから自大学のEMI課程の数などを入力することで、詳細な情報を得ることができる。
日本でも拡大するEMI課程
非英語圏の国では大学の国際化の一環としてEMI課程の導入が多くみられる。文部科学省の調査によると、2015年時点でEMIによる学位課程を提供する日本の大学は、学部レベルで40大学73学部、大学院レベルで126大学247研究科だった。日本学生支援機構の統計によると、現在では858の学位課程で英語による教育が行われている。
大学の国際化への評価
一方で、大学の国際化全般に対しては多くの国でその評価を試みており、当機構のウェブサイトではこうした各国の事例をまとめている(NIAD-QE国際連携ウェブサイト)。例えば、韓国では教育部が、大学などの留学生の受入れ体制や実態を評価し、適切な管理をしている教育機関を認証している(本サイト2017年3月31日掲載記事)。また、アメリカでは米国教育協会(ACE)が大学の国際化を支援しており(本サイト2017年6月26日掲載記事)、その中で国際化評価も行っている。
また、当機構も日本の大学を対象に「教育の国際化の状況」に対する評価を実施している(選択評価C)。ここでは、各大学の目標に沿った教育の国際化への活動についてその成果が審査される。例えば、国際化に対応した組織体制作りや学生の派遣・受入実績などが評価の際には考慮される。これまでに6大学が国際化評価を受審し、その結果は公表されている(NIAD-QEウェブサイト)。
このように、大学の国際化を評価する動きは進展しているものの、EMI課程に絞った評価は未だ珍しい。EMI Quality Markを皮切りに、非英語圏でのEMI課程の質に注目が集まることが期待される。