ノルウェーで外国の資格を審査する公的機関NOKUTは、2018年の夏から試験的に行っていた個別の資格審査の簡素化が成功しているとし、対象を北欧諸国からリトアニアとポーランドにも拡大することを2019年11月に発表した。
リトアニアとポーランドで授与された資格はNOKUTが行う外国資格審査の15%を占めており、審査が簡素化されれば申請者や彼らの進学・就職先のみならず、NOKUTにとっても利点があるとみられる。
パイロットプロジェクトとして始めた承認ステートメントが成功、東欧にも拡大
NOKUTは、北欧諸国(ノルウェー、デンマーク、フィンランド、アイスランド、スウェーデン)の高等教育資格に対応するノルウェーの資格を説明した文書(承認ステートメント)を発行している。この文書はNOKUTのウェブサイトでダウンロードして就職活動や高等教育機関への出願で使えるようになっており、ノルウェーの法令により文書には法的拘束力がある。承認ステートメントは国別に発行され、ノルウェーの高等教育資格と当該国との対照表など一般情報が掲載されている。
承認ステートメントの発行はパイロットプロジェクトとして行われており(本サイト2018/7/23投稿記事)、NOKUTはこのプロジェクトによって、北欧諸国からの個別の資格審査の申請は35%ほど減少し、これまでのところ成功していると評価している。
今回の承認ステートメントの リトアニアとポーランド への拡大は、学士と博士の学位のみが対象で、修士の学位には承認ステートメントは発行されない。その理由として、両国には複数種類の修士があるが、それらは簡単にノルウェーの修士と比較できないとしている。
ただし、学位の同等性は承認ステートメントで示すことができても、学位の真正性や本人確認の作業は引き続き必要となる。
欧州地域における自動承認―様々な形態で自動承認が進む
欧州高等教育圏(EHEA)では2020年までに高等教育資格の自動承認の実現を掲げているが、資格の自動承認は地域レベルで進展している。
例えば、ベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ)は2015年から(本サイト2015/1/9投稿記事)、バルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)は2018年から、政府間の合意にもとづく資格の自動承認が相互に実行されている。
北欧諸国では2016年に北欧諸国の教育大臣が改訂レイキャヴィーク宣言(本サイト2016/12/16投稿記事)に署名し、その宣言において北欧諸国の高等教育資格の自動承認の実現を目標としている。また、政府間での合意に向けて北欧委員会で更なる協議を行っている。
NOKUTが発行する承認ステートメントは相互の合意に基づくものではなく、ノルウェー独自の取組みである。スウェーデンではノルウェー同様に外国の資格についてスウェーデンとの資格の対応関係を示し、その対応関係について説明した文書をダウンロードできるeサービスを2019年5月から開設している。eサービスの対象国は北欧諸国に加え、スウェーデンへの移民が多い国を含む37か国の500近くの資格を掲載している。またアイスランドはアイスランドにおける学士課程の入学資格を満たす外国の教育資格を示している。ただし、これら2か国の取組みは政府間の合意に拠らず、法的拘束力のない情報提供としてのものである。
※1自動承認
あるレベルの資格を保有する志願者が個別に学習成果を審査されることなく、当該国もしくは地域における次のレベルの学習プログラムに入学することのできる権利を認められること。
原典:NOKUT(英語)