欧州高等教育質保証協会が質保証機関の国際化に関する報告書を公表

原典:欧州高等教育質保証協会(英語)

欧州高等教育質保証協会(ENQA)は、2015年11月16日に、質保証機関の国際化に関する報告書「Quality Procedures in the European higher education area and beyond – Internationalisation of quality assurance agencies : 4th ENQA Survey」(全48ページ)を公表した。

この報告書は、欧州高等教育圏(EHEA)内の質保証機関による海外機関への第三者評価や、国内の質保証活動における国際化への取組みのアプローチや目的について、ENQAが会員機関を対象に実施したアンケート調査(正会員35機関、準会員12機関が回答)をとりまとめたものである。ENQAは過去にも同様の高等教育の質保証に係るアンケート調査を実施しており、今回で4度目となる。

当報告書の構成及び主な内容は以下のとおりである。

【構成】
1. イントロダクション
2. 質保証活動の国際化について
3. 質保証活動の国際化に係る人的資源・財源について
4. 海外機関への第三者評価の方法論及び質保証機関の大学ランキングへの関与について
5. 海外機関への第三者評価における利益及び弊害等について

(1)質保証活動の国際化について
質保証システムの輸出について、政府も質保証機関もその価値を多いに認めているが、実際、国際質保証ネットワークへの参画、海外の質保証機関との提携や、評価者に外国人を含めるといった取組みに留まっている。

それは欧州の質保証市場が十分に成熟しておらず、質保証活動の国際化に対するニーズも未知数であり、ステークホルダーの期待もあいまいであり、未だに政府や質保証機関も国内での質保証活動へのプライオリティが高いためである。

(2)質保証活動の国際化に係る人的資源・財源について
多くの機関においては、国際業務に従事するスタッフがある程度いるが、海外での質保証活動に十分な財源を充てている機関は少ない。加えて、政府も国境を越えた質保証活動への積極的な投資には後ろ向きである。機関間での人事交流についても一般的には行われていない。

(3)海外機関への第三者評価の方法論及び質保証機関のランキングへの関与について

(イ)評価の方法論について

多くの質保証機関は、海外機関への第三者評価を実施する場合、欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)に準拠した国内の評価手法を適用する傾向にある。

国内での質保証活動と比べた場合、国外においては評価者に外国人を含めるということ、質保証活動において法的要件の達成よりもその向上に焦点を充てられるという点で異なっている。また、海外機関への第三者評価においては、受審する高等教育機関に付加価値を与え、迅速で柔軟な評価が心がけられている。

(ロ)質保証機関の大学ランキングへの関与

多くの質保証機関は、大学ランキングへどのように関与するかについて、明確な方針を持っていないが、国内・国際的な大学ランキングに各々の評価活動の結果が利用されることをあまり望んでいない。

(4)海外機関への第三者評価における利益及び弊害等について
質保証活動における利益及び弊害等について、主に以下のようなものを挙げている。

(イ)海外機関への第三者評価を実施する利益について

  • 国内外の連携機関及びステークホルダーに対する当該機関のプレゼンスの向上
  • 国内における質保証メカニズムの向上
  • 追加収入の獲得
  • 当該機関の評価活動手法の普及

(ロ)海外機関への第三者評価を実施する弊害について

  • 高等教育機関が容易に適格認定を受けやすい質保証機関を選択するようになる
  • 海外手法の導入による国内の質保証活動へのマイナス影響
  • 不慣れな国外の高等教育制度下で、第三者評価を実施することによる評価の品質に対するリスク
  • 財政的なリスク
  • 海外機関への第三者評価実施に係る追加費用の発生による国内の質保証活動への圧迫

(ハ)海外機関への第三者評価を実施する障害について

  • 質保証機関の予算が海外機関への第三者評価に対し、十分かつ使いやすいものになっていない
  • 国際的な質保証活動のためにトレーニングされた専門家やスタッフの数が限定されている
  • 国際的なレベルで機関間競争が開始されると、質保証機関間における専門家の共有が困難になる
  • 海外では、質保証活動に対する権限が制限される場合がある

 

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