欧州38か国の国家資格枠組みの進展状況が明らかに

原典:CEDEFOP(英語)

欧州地域における職業教育訓練の発展を支援する機関である欧州職業訓練開発センター(CEDEFOP)は、欧州38か国における42の国家資格枠組み(NQF)について、2015年版の報告書「National Qualifications Framework Developments in Europe」概要「Overview of National Qualifications Framework Developments in Europe」を発表した。

NQFとは、学位・資格について、学習量、学習成果、能力等を指標として学習の達成水準を段階的に分類する国単位の仕組みであり、学習者の教育の水準を示し、学位・資格の透明性を確保することを狙いとしている。国単位で策定された資格枠組みを欧州域内の国同士で比較可能にする枠組みとして欧州資格枠組み(EQF)も構築されている。

  • 報告書のポイント

報告書では、欧州38か国におけるNQFの構築・発展状況(2013年の状況との比較)が数値的にまとめられている。主なものを以下に挙げる。

①NQFの構築と稼働状況
まず、NQFが公式に採用されている国が24か国から29か国に増加した。NQFの運用段階に達している国は16か国から18か国に増加し、そのうち、ベルギー(フランダース)、デンマーク、アイルランド、フランス、マルタ、オランダ、英国の7か国では、NQFが実働している。また、32か国(8レベルの区分の枠組みを構築中の国も含む)がNQFでも主要な8レベルに区分された資格枠組みを提案もしくは採用しており、EQFと同じ8レベルの区分を採用している国が最も多くなっている。
②NQFとEQFの関係性
27か国の報告書は国家資格枠組みと欧州資格枠組み(EQF)の対応関係を示した参考文書を提示している。さらに、24のNQFが自国のNQFを欧州高等教育圏資格枠組み(QF-EHEA)と照らし合わせて自己検証を行っている、そのうちの15か国のNQFではEQFを参照した枠組みが構築されている。

※1 EQFにより、学生の就職・編入・進学先が自国とは異なるNQFを持つ国であっても、EQFを利用して他国のNQFを参照し、適切なレベルへ編入・進学・就職をすることができる。EQFは、各資格・学位を8段階(レベル1~レベル8)に分類し、当該資格取得時に達成している知識(knowledge)、技能(skills)、能力(competence)に関する学習成果を示すものである。
  • 参考:各国が採用するNQFのレベル数(区分の数)(報告書と概要に掲載されている情報をもとにNIAD-UE国際課にて作成)
国・地域
レベル数
イタリア NQFはない。イタリアの資格はEQFをそのまま参照している
フランス 5レベル
アイスランド、ノルウェー 7レベル
アルバニア、オーストリア、ベルギー(フランス語圏、ドイツ語圏)、ボスニア・ヘルツェコビナ、デンマーク、エストニア、フィンランド、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、マルタ、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スイス
[8レベルの区分の枠組みを構築中の国]
ベルギー(オランダ語圏)、キプロス、ポーランド、セルビア、スペイン、スウェーデン、トルコ
8レベル
クロアチア、マケドニア、モンテネグロ 8レベル。加えて8レベルのいずれかの区分にサブレベルを設定。レベル4~8の中にサブレベルがある
チェコ 8レベル構造の職業教育訓練(VET)のための資格枠組みの一部に学術資格が組み込まれている。
(英国)ウェールズ、イングランド、北アイルランド、オランダ、ブルガリア エントリーレベルまたは、準備教育レベルを含め、9レベル
スロベニア 10レベル[構築中]
アイルランド 10レベルに加え、4つの資格の種類がある
(英国)スコットランド エントリーレベル含め12レベル
  • 8レベルの区分を採用するNQFの例:オーストリア(クリックすると拡大します)

example

  • 右端にEQF、左端にNQFのレベル数が書かれており、資格がNQF及びEQFのどのレベルに対応するかがわかるようになっている。オーストリアの資格枠組みでは8レベルともEQFと完全に対応している。

図の出典:http://www.cedefop.europa.eu/files/8606_en.pdf

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