原典:Erasmusu Student Network(英語)
国際的な学生団体であるエラスムス学生ネットワークは、このたび欧州圏内の国外留学生等を対象とした、学生による学生への調査「ESN survey」の報告書を公開した。本調査は、2005年より毎年実施されており、10周年となる2015年は、「Local Integration, Economic Impact and Accompanying Measures in International Mobility」をテーマに、留学に関する事前準備や、現地先での順応、経済面などについてアンケート調査が行われた。本報告書には、調査結果のほか、政府や高等教育機関の提言もまとめられている。
ESNsurvey 2015の概要
(1) 回答者数: 22,000人以上
(2) 属 性:
- 留学先国(n=12,565)・・・スペイン(約15%)が最も多く、ドイツ(11%)、イタリア(9%)と続く。
- 留学者の出身国(n=12,563)・・・イタリア(約21%)が最も多く、ドイツ(14%)、ポーランド(8%)と続く。
- 学位課程(n=12,583)・・・学士課程(約62%)が最も多く、次いで修士(32%)。
- 留学期間(n=12,581)・・・3~6か月(約66%)が最も多く、6~12か月(29%)、12か月以上(3%)と続く。
- 回答者の多くがエラスムスプログラム参加者である(85%)。
(3) 方 法: メーリングリストを利用してアンケートフォームを配布の上、回答を集計。
主な結果(Key Findings)[抜粋]
留学前の準備について
- 回答者の45%の学生は派遣元機関から準備の支援を受けなかった。
※高等教育のためのエラスムス憲章(ECHE:Erasmus Charter for Higher Education)において、派遣元機関は、学生が留学に向けて十分準備ができるような状況を確保すべきと定めている。 - 準備支援を受けた学生のうち65%は、それが有益であったと回答。
- 語学面の準備をして留学した学生は32%にとどまり、そのうちの3分の1は自費で行った。
留学後のサポートについて
- 留学後にカウンセリングや相談・助言の機会を得たのは回答者の17%(内訳:今後留学する生徒に助言(56%)、留学先の友人との連絡(54%)、就職関連(21%))のみであったが、そのうち58%の学生が役に立ったと回答。一方、全くカウンセリングや相談・助言の機会を得なかった学生の半数以上が、就職に関する助言を受ける機会がなく残念であったように考えている。
留学先への順応について
- 回答者の35%が外国人学生と住む一方、38%の学生が現地の学生と外国人学生の混住であった。
- 現地の学生と外国人学生が混住する形態は、留学生が現地のコミュニティに溶け込む上で非常に有益であった。
- 回答者の半数以上の学生は語学授業を受講したが、このうち授業を無料で受講できた学生は77%であった。また回答者の7%は語学の授業費が高すぎることを理由に受講しなかった。
留学生の経済面への影響について
- 回答者の21%の学生が学習の継続や就職を理由に留学先国に戻っている。
財政について
- 留学生の留学の財源は、EUからの奨学金が41%と最も多く、個人負担(40%)、国の奨学金(7%)、派遣元大学の負担(5%)の順となっている。
提言(recommendations)[抜粋]
- 各国政府とEUの関係機関に対して:高等教育のためのエラスムス憲章に記載されている優良事例、特に留学準備については、履行のための強力な規制が必要である。
- 高等教育機関に対して:学生が留学に向けて円滑に準備ができるよう、より多くの取組みを行われることが求められる。特に語学面での準備や情報、異文化間学習については、より一層取り組むことが必要である。
- 留学生のみの居住形態はあらゆる場合でも避けられるべきである。