難民向けの欧州共通資格パスポート構想が提案される

出典:NOKUT

ノルウェーで高等教育の質保証と外国資格評価の双方を行うNOKUT*は、欧州で増加する難民が有する資格を証明する欧州共通の仕組みの導入を提案した。「難民のための資格パスポート」(European Qualifications Passport)と呼ばれるこの構想は、すでにNOKUTとUK NARIC*によって欧州委員会および欧州議会に提案されている。この資格パスポートによって、欧州共通の認定制度によって認められた資格を持つ難民は、資格証明書の入手が困難な場合であっても、域内の別の国へ移動した際も再度の資格認定を受ける必要がなくなる。そのため、難民やその家族だけでなく、受入国にとっても適切な労働力を迅速に確保できるメリットがある。

資格パスポートには当該難民が持つ最高レベルの資格、就労経験、語学力といった保持者の基本情報が記載される。さらに、出身国の教育制度や当該者が次に行うべき行動(例:移動先の国による資格の読み替えが必要であるなど)に関する情報も記される。これらの情報により、欧州各国が居住、就労、進学の目的の難民受け入れを促進することが狙いとなっている。

このような難民の支援は各国の義務である場合もある。ユネスコが進める高等教育に関する学習・資格の認定条約では、加盟国は、学位記や成績証明書を持たない難民に対する資格の認定制度を整えなければならない。例えば、リスボン認証条約では、難民などの者が証明書類を保持していない場合でも、高等教育への進学や就職ための制度を自国の中に設けられるように整備することを求めている(セクションVII)。これは、アジア・太平洋地域の東京条約でも同様である(セクションVII)。

リスボン認証条約を受けて、ノルウェーでは2005年より資格の証明ができない者に対する資格評価制度を開始した。その後2013年に制度改正を行っており、新しい制度開始後の17ヶ月間で400件以上の申請を受け付けた(このうち70件が高等教育資格の評価)。一方、ドイツでは資格証書を持たない者に対する、スキル評価による資格認証を推進するプロジェクトが連邦教育研究省主導で始まった。2015年から2年間の計画で、業界団体の支援のもと、スキル評価による資格認証の質を高めるための取組み-全国的な研修、カウンセリング、職業訓練、財政支援など―が行われる。

NOKUTの発表によると、資格パスポート構想は難民のための国際的な身分証であるナンセンパスポートの精神に基いている。ナンセンパスポートは国際連盟が発行した難民のための身分証で、難民高等弁務官であったノルウェー人フリチョフ・ナンセンによって考案されたものである。

NOKUT: the Norwegian Agency for Quality Assurance in Education
UK NARIC:外国資格評価を行うイギリスのナショナルインフォメーションセンター
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