英国のビジネス・イノベーション・技能省が教育卓越性枠組の制度案を提示

原典:ビジネス・イノベーション・技能省(BIS)(英語)

英国のビジネス・イノベーション・技能省(BIS)は、2015年11月6日に、政府による提案書であるグリーン・ペーパー「Fulfilling our Potential: Teaching Excellence, Social Mobility and Student Choice」(全103ページ)を公表した。当グリーン・ペーパーは、学生を中心に据えた英国の高等教育の今後の展望について述べたもので、教育卓越性枠組(TEF)の導入、身体的・経済的・出自等の問題により、高等教育への進学に関して不利な状況にある学生の進学率を向上させることによる社会流動性(social mobility)の促進、新組織の設置による高等教育制度の構造改革及び研究評価枠組(REF)実施における事務手続き軽減等に関する具体的な制度案が提示されている。

なお、BISでは、当該グリーン・ペーパーに係るパブリック・コメント(consultation)を2016年1月15日まで実施する予定である。

TEF制度案のポイントは、以下のとおりである。

(1)主な導入趣旨について

  • 卓越した教育の認知・奨励。
  • 学生が高等教育に進学する際及び企業が学生を採用する際の選択の補助。
  • ステーク・ホルダーによる投資効果の透明化。

(2)導入初年度及び次年度の進め方について

(a)導入初年度

    • 初年度のTEF評価では、直近の英国高等教育質保証機構(QAA)による質保証レビューで高評価を得た高等教育機関に、TEFレベル1を付与する(3年間有効)。
    • TEFレベル1を付与された高等教育機関は、2017年に入学する学生よりBISが別途定めた上限まで学費を引き上げる権利が付与される。なお、BISが別途定める学費の上限額は物価上昇率を考慮して決定される。
    • TEFレベル1は、学位授与機関と連携して高等教育プログラムを提供しているが、公的資金を受給せず、QAA による定期的なレビューを受審していない代替プロバイダーや、継続教育カレッジにも適用され、学費ローン(fee loan)の上限額の引き上げが可能となる。
    • 質保証レビューで「改善の必要あり」の評価結果を得た高等教育機関は、TEFレベル1の付与が保留される。また、「水準を満たしていない」の評価結果を得た場合、TEFレベル1は付与されない。さらに、TEFレベル1を付与された後に、レビューで低い評価を得た場合は、TEF レベル1を失う。その場合、学費を値上げする権利も失う。

(b)導入次年度

    • 次年度以降は、TEFのレベル2以上(現状4段階を想定)の評価の受審が可能となる。
    • 高等教育機関がTEFレベル2以上の付与を希望する場合は、その旨、申請する必要がある。具体的な評価プロセスは2017年4月に公表される。レベル2~4も有効期間は3年間となる。付与された機関は学費又は学費ローン上限をさらに引き上げることが可能となる。

(3)質保証レビューとTEFの関係について

高等教育機関の負担軽減のために、質保証レビューのプロセスとTEFの高レベルの評価の基準は、可能な限り同様の基準を用いる。しかし、将来的には学習意欲(engagement with study)や学習の付加価値等(learning gain)等に係る基準を新たに定め、既存のものに組み込んでいく。

(4)評価基準(metrix・assessment criteria)について

  • 教育の卓越性を測る明確な基準は現在ないが、次年度以降、その卓越性を測るための共通の基準を開発する。
  • 教育の卓越性を評価するためには、高等教育機関から学生の学習の質や、社会流動性への貢献度等の質に係るデータをさらに提出して貰う必要がある。基準やこの追加資料の詳細については、2016年にパブリック・コメントを実施した上で決定する。

(5)評価頻度について

  • TEFの評価頻度については、質保証レビューと同様の周期レビューを計画している。研究評価枠組(REF)のような一斉実施は計画していない。
  • 初年度・次年度は評価結果を3年間有効とし、それ以後は5年間有効とする。高等教育機関がより高いレベルの評価を得ることを希望した場合や、教育の質に何か懸念事項が見つかった場合、プロバイダーの所有者に変更があった場合等においては、期間内に再評価を実施することが想定される。

(6)評価過程について

  • TEFに係る評価に政府は関与しない。TEFに係る評価の判断は、高等教育機関より提出された根拠資料に基づき、政府とは独立した専門家グループが実施する。
  • 専門家グループの構成員は、大学等の教員、学生の代表そして産業界の代表等とし、バランスが考慮される。なお、専門家グループは各教科ごとに召集する。
  • 各教科間の評価に隔たりが生じないよう調整のプロセスをおく。また、高等教育機関からの不服申し立てのプロセスも含めるかどうか検討する。
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