2024年7月、中国政府※1は、高等教育機関における法学の実践教育の強化及び法律支援公共サービスの地方間格差の縮小を目的として、各地方政府と高等教育機関へ向けて「高等教育機関による法律支援ボランティアサービス業務の強化に関する意見」(原語:关于加强高校法律援助志愿服务工作的意见)を通知した。高等教育機関は、政府が各地に設置している法律支援機関※2からの委託を受けて、学内に法律支援拠点を設置し、法学専攻の教員と学生がボランティアで一般の人々を対象に法律相談や法律普及活動を行う。
また、高等教育機関による法律支援ボランティアサービス業務の全体目標として、①2025年中に体制を整えて法学教育を実施する高等教育機関に法律支援拠点を設置し、②2035年中に各拠点が教員と学生の実践教育を行う場として活用されるようにし、中国の特色ある社会主義の高等教育法律支援ボランティアサービス体系を整備するとしている。
- ※1 中央社会工作部、教育部、司法部の連名による。このうち、中央社会工作部は、2023年3月に新たに設置された中国共産党内の組織であり、全国の陳情局(原語:信访局)の管理、一般の人々からの陳情取りまとめと指導、一般の人々の意見聴取、全国の業界団体の管理、全国のボランティアサービス業務の企画と取りまとめを行っている。(党和国家机构改革方案)(中共中央社会工作部)
- ※2法律支援機関(原語:法律援助机构)は、法律支援センターとも呼ばれる。司法部によって全国各地に設立されており、法律支援業務を行う団体への指導・調整・監督及び自ら法律支援を実施する役割を担っている。(法律援助机构)。
<政策の背景>
中国政府は2021年、経済的に困窮している人々への法律支援に関する法律である「中華人民共和国法律援助法」を制定し、2023年には「新時代の法学教育と法学理論研究に関する意見」にて、法と徳によって国を治め、中国の特色ある社会主義法治と法体系を構築すると表明しており、高等教育機関による法律支援ボランティアサービス業務はこれらの法と政策に基づくものであるとしている。
<法律支援ボランティアサービスに関する主要業務>
(1) 法律支援拠点の構築:
各地の司法行政部門と教育行政部門が、当地の高等教育機関の規模と法律支援需要を把握して法律支援拠点の計画を策定し、その計画に沿って法律支援機関が高等教育機関に法律支援拠点の設置を依頼する。高等教育機関は既存の法律相談所や学生団体等を活用して法律支援拠点の場所と設備を確保し、ボランティアに必要な経費を負担する。弁護士資格を持つ教員と学生は法律支援拠点の職員として勤務することができる。
(2) ボランティアの募集:
高等教育機関の法律支援拠点の設置を計画する各地の教育行政部門と司法行政部門がボランティアの募集・登録業務の管理も行う。法律支援機関及び高等教育機関が、ボランティアの募集計画の策定と募集を行う。法学教育の教員、法学専攻の学生、法律知識のある社会学や心理学専攻の学生、少数民族の言語や手話ができる者がボランティアに応募できる。希望者は募集機関による審査の後、全国ボランティアサービス情報プラットフォームに登録することで、法律支援ボランティアになることができる。
(3) サービス提供内容:
法律支援ボランティアは、経済的に困窮している人々への法律相談、法律文書の作成等を行うことができる。高等教育機関は、法律支援ボランティア同士の交流やインターンシップ、法律支援研修、案件の質評価、理論研究、システム構築研究等を実施することが期待される。
(4) 法律案件への関与:
弁護士資格を持つ教員と学生は、法律支援ボランティアの身分で法律支援機関から法律支援案件を請け負うことができる。案件を請け負う教員と学生は、チームを組織して対応する。その際の出張費等の費用は法律支援機関が負担する。
(5) ボランティアサービスの多様な活動:
毎年、国際ボランティア・デー(12月5日)の時期に、法支援の不足している地域において、法支援キャンペーン活動を行ったり、法律支援ボランティア連盟を結成して学術研究プロジェクトを企画したりするなど、高等教育機関と法律支援を必要としている現地との結びつきを強めることが望ましい。
(6) ボランティア活動の運用強化:
高等教育機関は法学研究科(大学院課程)の人材育成計画や実習項目に法律支援ボランティアを含めたり、法学専攻(本科課程)の実践教育の単位の比重を高めたりすることが望ましい。
(7) 業務監督・管理制度の整備:
法律支援拠点は日常的な管理を行う。ボランティア管理、統計報告、書類管理、質監督、研修等の制度を整える。
(8) ボランティア実施記録・評価体制の整備:
法律支援拠点と高等教育機関は評価体制を整える。法律支援拠点はボランティア実施記録証明書の発行の責任を負う。高等教育機関はボランティア実施評価体系を構築する。高等教育機関から表彰されるなどの高い評価を得た教員と学生は、共産党への入党、進学・就職等の人材選抜の際に有利となる。







