高等教育機関の歳入に占める公私割合に関する調査報告書:Cost-sharing impact study

原典①:Cost-sharing impact study(英語)
原典②:Student support crucial for offsetting impact of university tuition fees, says report(英語)
報告書第1部:Comparative report
報告書第2部:National reports

大学の歳入における公的資金と自己収入のバランスには変化が見られる。そこで、ドイツのDZHW (German Centre for Research on Higher Education and Science Studies)とカナダのHESA (Higher Education Strategy Associates)は共同で、欧州委員会の助成により、こうした変化が高等教育機関と学生にもたらしている影響について調査を行い、このほど報告書を発表した。報告書は、調査全体の報告である第1部(120ページ)と、各国のレポートが集められた第2部(521ページ)で構成される。調査に参加したのは、オーストリア、カナダ、イングランド、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、ポルトガル、韓国の9ヶ国であった。

調査では、まず次の4つの仮説が立てられた。

仮説A:自己収入の増加により、大学の歳入額の合計も増加する
仮説B:自己収入を促すインセンティヴが増加することで、高等教育機関は学生の要求への
適応が増える
仮説C:自己収入の増加は、学生の要求に悪影響を与える
仮説D:自己収入の増加は、学生が選択する学習の方法と分野に影響を与える

そして、上記9ヶ国の1995-2010年における国の大学助成政策と大学の財政状況について調査が行われ、‘授業料の方針が急激に変化した群(オーストリア、イングランド、ドイツ、ポルトガル)’と‘授業料の方針があまり変化していない群(カナダ、フィンランド、ハンガリー、ポーランド、韓国)’に分けられた(下表参照)。

調査期間における各国の授業料方針概要(報告書本文より抜粋し、国際課が仮訳)

※西暦の記載のないものは一般的な傾向を表す。記載がある場合、その年に行われた改革による影響を表す。(イングランド2012)に関しては、2012年の同国の授業料改定は本調査の対象期間外だが、この表には記載していることを表す。

主な調査結果は以下の通り

高等教育に関するデータは不備が多い
特に、ハンガリーとポーランドで顕著である。また、実際に必要となる授業料額のデータを探すことが困難な国もしばしば見られる。授業料の導入は概して好影響を与え、大学全体の歳入も増加する【仮説A】
自己収入の増加によって公的資金が減少する傾向はみられない。大学財政における公私歳入のバランスを変える政策が導入された4ヶ国(オーストリア、イングランド、ドイツ、ポルトガル)のうち、もっとも成功しているのはイングランドである。

自己収入によって得た資金は、学生に還元されるとは限らない【仮説B】
教員1人あたりの学生数は増加傾向にある。特にカナダでは、調査期間の間にこの数値は20%も上昇した。考えられる理由としては、①こうした資金は大学の事業拡大に投入される、②教職員にかかるコストが増加している、③教育以外(運営や研究など)への支出も増えている(特にカナダとイングランドで顕著)ことが考えられる。

高等教育機関は授業料収入増加を目的とした行動を取っているわけではない【仮説B】
授業料の導入(値上げ)によって、ますます市場での需要に適応するとは限らない。なぜなら、①すでに前から学生獲得の努力をしている、②広報活動への投資(カナダ、イングランド、韓国で見られる傾向)は、本来大学がすることではない-オーストリアやドイツの傾向、③政府の政策がなかなか変わらない(オーストリア、フィンランド、ドイツ)、といった理由があるからである。

公立大学での授業料導入では大学の市場の需要への適応は起こらない:高等教育機関の新設によって起こる【仮説B】
財源バランスの変化によって高等教育機関の自治が拡大する傾向は見られない。むしろ、私立大学の新設や、特定の種類の公立教育機関の新設がセクター全体を成長させた例が多く見受けられる。

授業料の値上げは、よほどのことがない限り、入学者数に悪影響を及ぼさない【仮説C】
高等教育への進学率は、調査期間を通じて上昇している。進学した学生のプロファイルが変化していることも考えられるが、収集可能なデータを見る限りは、①男女の比率、②低所得者家庭出身者の割合、③人種構成比率には際立った変化が見られなかった。ただし、イングランドにおける年齢構成だけは、授業料の上昇により、高年齢層の進学率が低下していた。

学資援助の影響は大きい【仮説C】
ほとんどの場合、授業料の値上げに伴い、学費援助の額も上昇している。

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