高等教育入学資格と入学者選抜の各国比較調査の結果

原典:The London School of Economics and Political Science(英語)
報告書:Higher Eucation Entrance Qualifications and Exams in Europe: A Comparison(英語)

欧州議会の文化・教育委員会がLSE Enterprise(ロンドン大学LSE校100%出資)に委託した、高等教育入学資格と選抜の各国比較調査の報告書が公表された。この調査では、欧州連合加盟6ヶ国にトルコ、オーストラリア、日本、米国を加えた計10ヶ国の制度を調査し、平等性(equity)、質(quality)、流動性(mobility)の側面から比較している。

平等性では、高等教育への進学希望者への平等な機会提供を調べた。身体障がい者や社会的弱者層に対する機会均等制度だけでなく、正規の教育以外の入学資格への考慮などもこれに該当した。質の面では、入学者選抜の事務作業や入学資格要件などが教育の質にもたらす影響が調査された。この点では、特に入学管理団体と大学との連携、入学者選抜での学生の将来性予測の正確さ、および出願や合否発表時期といった制度がもたらす実際の入学者獲得状況への影響に注目した。流動性では、入学資格や選抜が学生移動の足かせとなっていないかが焦点となった。最後に、欧州連合が行うべき政策立案への提言に加え、加盟国政府への助言も記された。以下に、それらの提言と助言のまとめを記す。

欧州連合が取りうる3つの政策方針

オプション①:最低ラインの管理―進学希望者への最低限の情報提供と平等な学費の設定
オプション②:入学管理団体の欧州横断レジストリ作成―出願情報の共有による平等性担保、流動性増加、資格の認証促進
オプション③:複数国へ出願をする者への横断的支援―国境を越えたクリアリングハウス制度導入

EU加盟国への助言:平等性

  • 入学者の修了率向上につながるよう、最大限の情報を提供できる入学制度の設計
  • 入学要件の充足ではなく、学生が学位を取得する能力がありそうかを判断できる入学者選抜の実施
  • 既修得学習の認定などを考慮し、現行の入学者選抜が抱える潜在的コストの調査

EU加盟国への助言:質

  • 入試担当者としてスキルの高い人材の充分な数の確保
  • 出願受付機関への出願受付や結果確定時期の熟慮の要請
  • 出願者への充分な情報提供のための大学と中等教育機関の連携強化

EU加盟国への助言:流動性

  • EU間の出願者や入学者情報の共有
  • 特に出願時や1年次における、学生移動の障壁の除去


各国の高等教育へ進学する実際の年齢平均値(average age)と、入学が認められる典型的年齢(typical age):報告書より抜粋


各国の入学者選抜や入学時にかかる費用:報告書より抜粋

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