外国の資格・学位をもって、国内で進学、就職、移民などを行うにあたり、申請を受け付ける機関はどのように対処したらいいか。欧州で高等教育へ進学する際には、各国にあるENIC-NARICセンター※が、資格・学位の認証に関する情報提供や実際の審査を行っている。もちろん、各高等教育機関でも、出願者が持つ外国の資格・学位を確認する必要がある。そこで、ENIC-NARICセンターや高等教育機関で資格・学位の審査を行う資格評価者へ向けた、欧州統一の審査マニュアルとして作られたのがEARマニュアルとEAR HEIマニュアルである。
EARマニュアル: European Area of Recognition Manual (欧州資格・学位認証の手引き)
2010年から始まったEAR(European Area of Recognition)プロジェクトは、まず、各国のENIC-NARICセンターで行われている資格・学位の認証作業が統一した方針で行われるように、共通の認証基準や判断材料をまとめたマニュアルの作成に取りかかった。プロジェクトは欧州委員会の助成を受けた2年間の事業として、下記の8ヶ国のNARICセンターと、ENIC代表とリスボン認証条約委員会委員長から成るEARプロジェクトコンソーシアムによって運営され、2012年にEARマニュアルが策定された。
EARプロジェクト参加機関:
Nufficーコーディネート機関ー(オランダ)、UK NARIC(英国)、NARIC France(フランス)、NARIC Poland (ポーランド)、NARIC Czech Republic(チェコ)、NARIC Denmark(デンマーク)、NARIC Flanders(オランダ)、NARIC Lithuania(リトアニア)
EARマニュアルは、資格・学位認証に関する16の章で構成された、資格・学位の認証機関向けの参考書となっている。また、ブカレスト教育大臣会合において、同書の利用が推奨された。
EAR HEIマニュアル: European Recognition Manual for Higher Education Institutions (高等教育機関のための欧州資格・学位認証の手引き)
EAR HEIマニュアルは、ENIC-NARICセンターにいる資格評価者向けに書かれたEARマニュアルの内容を、各国の大学をはじめとした高等教育機関向けに書き直したものである。2012年に、欧州委員会からEAR HEIマニュアル策定のための助成を受け、2014年に完成した。高等教育機関が、外国の資格・学位を審査する際の基準やガイドラインが盛り込まれ、理解しやすく応用の効く内容となっている。このマニュアルを用いることで、高等教育機関が公正な資格・学位の認定を行えることが目指されている。
EAR HEIプロジェクト参加機関:
(諮問委員会への協力)リスボン認証条約委員会、欧州大学協会、米国ENIC、ドイツ学長会議、欧州学生ユニオン、チューニング欧州EAR HEIマニュアルの構成:
パートI:はじめに-認証活動の基本-
パートII:審査の手順
パートIII:高等教育機関における資格・学位認定の実務
パートIV:情報源
パートV:留意すべき資格・学位
パートVI:学生交流の際の単位移動(単位互換)
国外で取得された学位・資格の認証にかかる情報提供の拠点で、一般的に、外国のディプロマ、学位、その他資格の認定に関して、「Statement(報告書)」等を発行したり、留学に関する奨学金や具体的な相談に応じるセンターとして機能している。※NARIC:National Academic Recognition Information Centres
欧州域内における学位と学修の認定を促進することを目的とした情報ネットワーク
原典①:EARマニュアル(英語)
原典②:EAR HEIマニュアル(英語)
参考:EAR HEIマニュアル日本語概要(NIAD-UE国際課まとめ)