営利大学のベネフィットコーポレーション化は進むか

原典①:Inside Higher Ed(英語)
原典②:Bertelsmann(英語)
原典③:Education Dive(英語)

ドイツの大手メディア、ベルテルスマンは、2015年2月20日、子会社のArist Education Systemを通じて、カリフォルニア州に本部を持つ非営利大学であるAlliant International Universityを買収したことを明らかにした。ベルテルスマンは、健康科学と人間科学分野の世界的な大学ネットワーク構築のため、2013年にArist社を立ち上げ、2014年10月には同分野のオンライン教育を手がけるRelias Learningを傘下に収めたほか、ムーク(NIAD-UE国際課まとめ)の1つUdacityの株主にも就いている。今回買収されたAlliant International Universityは、ベネフィットコーポレーションという営利の企業形態として運営されていく。

ベネフィットコーポレーションは、アメリカの一部州で認められている新たな企業形態で、株主以外の利害関係者(例えば、被雇用者、社会、環境など)を考慮した企業運営が認められる一方、自社活動の社会・環境への影響に対する第三者による評価結果を公表することが求められている。これにより、従来の短期的な株主利益を追求した企業活動から、社会貢献や環境保全といった長期的視野に基いた経営ができるとされている。Benefit Corp Information Centerによると、すでに27の州でベネフィットコーポレーションは法制化されており、さらに14州でも検討が進んでいる。

また、ベネフィットコーポレーションの中でも特に優良な企業に対する認定制度も、B Labという非営利団体により導入されている。B Labのデータベースによると、記事執筆現在、1,585社が認定を受けている。認定を受ける際の基準は、活動する国、業界、企業の規模によって異なるが、2014年8月のInside Higher Edの報道では、同月に教育分野の基準を策定するためのワーキンググループが結成されている。

本件に関し、Insider Higher Edは複数の関係者にインタビューを行っている(原典リンク①参照)。それによると、Arist社の戦略・人材部門チーフDouglas Keillerは、営利大学のベネフィットコーポレーション化によって、大学は学生の成果に集中できると述べている。Alliant International University学長Geoffrey Coxは、大学の理念を維持し、公的な目的を前面に出したまま、企業による財政支援を受けられることを、利点として挙げる。 一方で、オバマ政権による営利大学規制の設計を担ったRobert Shiremanは、ベネフィットコーポレーションと従来の企業の違いはほとんどないと述べ、公益と株主利益の両立などは「欺瞞に満ちた」標榜だと主張する。

ベネフィットコーポレーションの形態が営利大学に広がるのか、今後の動向が注目される。

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